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今日は何の日?

■アトラスベースの高規格救急車パラメディック

1992年(平成4)年6月25日、日産自動車から高規格救急車「日産・パラメディック」が発売された。高規格救急車は患者の搬送だけでなく、一部の医療行為が実施できる救急救命士が同乗している救急車で、ベースは2トントラックの「アトラス20」である。

日産の高規格救急車「パラメディック」
1992年に発売された「日産・パラメディック」

救急救命士制度に準じた高規格救急車

戦前に米国の救急車を利用することで始まった日本の救急車だが、当時の救急車は患者を安全に病院に搬送することが主な仕事であり、救急隊員は患者に止血や酸素吸入などの応急処置しかできなかった。

しかし、患者の命を救うためにはいち早く救命処置を行なうことが必要ということから、1992年に救急救命士制度が導入された。これにより、救急車の中でも国家資格を持つ救急救命士が医師の指示を受けながら救命行為を行なうために、高規格救急車が設定された。

高規格救急車は、救急救命士が立った状態で救命活動が行なえるように、室内が広くて高い、走行中にストレッチャー(寝台)の振動を抑え、さらに必要な医療機器および資器材を搭載する必要がある。

この制度の整備によって、現在の救急救命士の仕事は患者の搬送に加え、必要な応急処置や一部の医療行為などを行なえることになった。なお高規格救急車には、救急隊員の3名のうち最低でも1名の救急救命士が乗務して運用されるように決まっている。

各種機能が追加された高規格救急車「パラメディック」

日産は、1992年6月のこの日に消防庁の認定を受けた高規格救急車パラメディックを発売。パラメディックは、2トントラック「アトラス20」をベースに救急車専用ボディとすることで、室内長3720mm×室内幅1820mm×室内高1830mmを確保するとともに、タイヤハウスの出っ張りを少なくし、救急活動がしやすい広くてスクウェアな室内空間を確保した。

また、高度な応急処置を行なう医療機器(酸素吸入装置、人工呼吸器、半自動式除細動器、輸液ポンプ、血圧・心電図監視モニターなど)および資器材(酸素ボンベ、スクープストレッチャー、冷温蔵庫など)の収納スペースの確保、各機器の使用に耐えうる電力を供給できるツインオルタネータ(24V-40A×2)が搭載された。

日産の高規格救急車「パラメディック」
「日産・パラメディック」の室内

パワートレインは、最高出力125ps/最大トルク30.5kgmを発揮する4.2L直4 SOHC直噴ディーゼル(FD42型)エンジンと、5速MTおよび電子制御4速ATの組み合わせ、駆動方式はFR。サスペンションは、フロントにリーフスプリング、リアに110mmの車高調整付エアサスペンションが採用され、ストレッチャーの容易な搬出入が可能。以上のような変更によって、高規格救急車に相応しい安全で俊敏な走りと良好な乗り心地が実現された。

車両価格は、1647万円(5速MT)/1670万円(4速AT)。当時の大卒初任給は、18万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約2100万円/2130万円に相当する。

日産・パラメディックの進化と最新モデル

その後、日産・パラメディックは、仕様を最新化しながら現行モデルに至っている。

2代目「日産・パラメディック」
1998年に発売された2代目「日産・パラメディック」

1998年5月には2代目にモデルチェンジ。2代目は、フロントセクションは初代「エルグランド」、Bピラー以後は「キャラバン」スーパーロングの車体を流用して製作。デュアルエアバッグ(運転席・助手席SRSエアバッグシステム)に加えてABSを全車標準装備して高い安全性を実現し、さらに十分な室内空間を確保し、機器や資器材のレイアウトの最適化が図られた。

日産の2代目高規格救急車「パラメディック」
日産の2代目高規格救急車「パラメディック」

エンジンは「テラノ」、「エルグランド」に搭載された全域で高い出力・トルクと優れたレスポンスを誇る最高出力170ps/最大トルク」27.1kgmの3.3L V6 SOHC(VG33E)エンジンを搭載。4WD車には、路面状況に応じて前後トルク配分を自動制御する4WD(オールモード4×4)が採用され、優れた走行安定性が実現された。

3代目(現行)「日産・パラメディック」
2018年に発売された3代目(現行)「日産・パラメディック」

2018年11月には、現行の3代目に移行。3代目は、新たに「NV350キャラバン」スーパーロング、ワイドボディがベース車なった。超ハイルーフにより実現された広い室内空間に加え、優れた車両取り回し性能による運転のしやすさが追求された。

3代目(現行)「日産・パラメディック」
2018年に発売された3代目(現行)「日産・パラメディック」

エクステリアは、ヘッドランプとリアコンビランプをLED化するとともに、前方だけなく、両サイド・後方からもLED主警光灯がはっきりと見えるデザインとし、さらにオプションでアラウンドビューモニターが設定された。パワートレインは、147psの2.5L直4 DOHC(QR25DE)エンジンと5速ATを組み合わせた4WDである。

最新の仕様では、歩行者の検知が可能なインテリジェント エマージェンシーブレーキと道路周辺の明るさに合わせてハイビームとロービームを自動で切り替えるハイビームアシストが標準装備され、安全支援技術も充実している。

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トヨタの高規格救急車「ハイメディック」
トヨタの高規格救急車「ハイメディック」
トヨタの高規格救急車「ハイメディック」
トヨタの高規格救急車「ハイメディック」
札幌ボデーの高規格救急車「トライハート」
札幌ボデーの高規格救急車「トライハート」

過去には、いすゞや三菱ふそうも高規格救急車を提供していたが、現在は日産・パラメディック(NVキャラバンベース:1993年~)、トヨタ・ハイメディック(ハイエースベース:1992年~)、札幌ボデー・トライハート(いすゞ・エルフベース:1992年~)の3台が運用されている。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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