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今日は何の日?■厳しい昭和50年排ガス規制に適合した4代目セドリック
1975(昭和50)年6月27日、日産自動車は高級セダン「セドリック」の4代目(330型)を発売した。当時は、世界的なオイルショックと排ガス規制強化が重くのしかかった時代だったが、4代目セドリックは独自の排ガス低減技術NAPSによって昭和50年規制をクリアしてクリーンであることをアピールした。

トヨタクラウンに対抗して誕生したセドリック

初代セドリック(30型)は、1955年に誕生した日本初の純国産高級車トヨタ「トヨペットクラウン」に対抗して、1960年にデビューした。日産が初めて独自開発した6人乗りの高級セダンで、縦目4灯のフロントマスクとAピラーを前傾させたパノラミックウインドウなどアメ車風のスタイリングが特徴だった。
モノコックボディによって車重を1195kgに抑えながら剛性を高め、さらに足回りはフロントがダブルウイッシュボーン/コイル、リアは3枚リーフ/リジッドサスペンションを装備して高級車らしい乗り心地を実現。パワートレインは、最高出力71psを発揮する1.5L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。

その後、セドリックはモデルチェンジしながら、日本を代表する高級車としてクラウンと人気を二分するようになった。



厳しい排ガス規制に対応してクリーンをアピールした4代目セドリック

4代目(330型)セドリックがデビューした1975(昭和50)年当時、日本は高度成長時代を迎え自動車が急増。一方で、その反動による大気汚染が社会問題化して、日本版マスキー法(大気汚染防止法)である昭和50年規制が施行された。


4代目は、4ドアセダンと4ドア/2ドアハードトップが用意され、特徴的なラジエターグリルとリアエンド、抑揚のあるフェンダーラインとデコラティブなアメ車風に変貌した。インテリアも豪華に設定され、当時人気だったトップグレードの4ドアハードトップには最先端な快適装備が備えられた。

パワートレインは、最高出力145ps/最大トルク23.0kgmを発揮する2.8L直6 SOHC、115ps/16.5kgmの2.0L直6 SOHCの2種エンジンと4速MTおよび3速ATの組み合わせ。これらのエンジンに、日産が独自に開発した排ガス低減技術NAPSを搭載して昭和50年排ガス規制に適合、クリーンであることをアピールした。


車両価格は、人気の4ドアハードトップの標準グレードが156.6万円(2.0L)/トップグレードを218.5万円(2.8L)に設定。当時の大卒初任給は、7.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約480万円/670万円に相当する。
4代目セドリックは、先代の230型ほど人気は得られなかったが、TVドラマ「特捜最前線」や「大都会」、「西部警察」など刑事ドラマにも登場して存在感を示した。
日産NAPSによる排ガス低減技術

米国で制定されたマスキー法は、米国ビッグスリー(GM、フォード、クライスラー)の大反対などで実際に施行は見送られたが、日本では1972年にマスキー法に準じた排ガス規制を施行。その第1弾が、1970年の昭和50年規制であり、集大成となったのが1978年の昭和53年規制である。
4代目セドリックは、昭和50年規制に適合するために独自に開発したNAPS(Nissan Anti-Pollution System:日産公害防止システム)を適用。NAPSは、エンジン本体の改良とともに主として以下の技術で構成される。
・酸化触媒
排ガス中の有害物質HCとCOを酸化して低減。当時は、まだHC、CO、NOxを同時に低減する三元触媒技術が確立されていなかった。
・EGR(排気ガス再循環システム)
不活性な排気ガスを吸気側に戻し、燃焼温度を下げて有害物質NOxを低減。
・2次空気供給装置
酸素を含む新鮮な吸気を排気マニホールドに供給して、排ガス中のHCとCOを酸化して低減。
・加熱強化式マニホールド
吸気温度を上昇させて、吸気マニホールドに噴射されたガソリンの気化を促進して不完全燃焼で発生するHCとCOを低減。
その後1978年には、三元触媒を使ったNAPSによって、最も厳しいとされる昭和53年規制の適合にも成功した。
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各自動車メーカーも、独自の排ガス低減技術によって昭和50年と昭和53規制に適合した。しかし、4代目セドリックに限らず、この時期に登場したクルマは、排ガスを低減するためにエンジン出力を犠牲にすることが避けられず、走りについては不満が残るモデルが多かった。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。
