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今日は何の日?■スポーティな上級志向のタントカスタム
1994(平成6)年7月1日、トヨタのFFミディアムセダン「カムリ」の5代目が発売された。バブル崩壊の影響で、先代までの高級路線からラインナップの大幅な整理が行われ、シンプルながら上質なミディアムセダンに原点回帰した。


スポーツセダンとして登場した初代は「セリカ・カムリ」

1980年1月、2代目カリーナをベースにしたスポーティなミディアムセダン「セリカ・カムリ」が登場。ベースになったのはカリーナだが、フロントグリルは「セリカXX」と同じメッキ製T字バーのグリル、ホイールデザインは「セリカ」と共通で、セリカの多くの部品が流用された。

パワートレインは、最高出力88ps/最大トルク13.3kgmを発揮する1.6L直4 SOHC、95ps/15.0kgmの1.8L直4 SOHCの2種エンジンと5速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。駆動方式は、この世代はFRだった。

ただし、セリカの名を冠していた割に、ややパワー不足と評価されて国内販売は期待されたほど伸びなかった。結局、セリカ・カムリは1982年にベースのカリーナがモデルチェンジしたため2年の短命で販売を終え、セリカの冠を外した2代目カムリにバトンを渡した。

2代目(V10型)カムリは、当時ブームに火が付いていた“ハイソカー”を意識した直線基調のシャープなスタイルを採用。最大のアピールポイントは、何といってもFRからFFパッケージングの変更によって、当時のFR車「クラウン」を凌ぐ広い室内だった。
パワートレインは、セリカにも搭載されていた1.8L直4 SOHCと5速MTの組み合わせ、車重が比較的軽かったので2.0Lクラスの走りを実現。2代目は、スポーティなスタイルとハイソカーブームが相まって、FFのミディアムセダンとして人気を獲得することに成功した。
原点回帰を果たした5代目カムリ


その後、カムリは上級志向を強め、3代目(V20型)では4ドアハードトップやトヨタ初のV6エンジンを搭載した「プロミネント」を追加。4代目(V30型)では、国内向けは5ナンバー、海外向けは全幅を拡大した3ナンバーと異なるボディが設定された。

そして、1994年7月のこの日に登場した5代目カムリ(V40型)は、先代までの高級路線を見直し上質でシンプルなミディアムセダンへと原点回帰した。これを機に2.5L V6エンジンを搭載したプロミネントが廃止され、ハードトップも止めて4ドアセダンのみとなった。



シャープな水平ラインと張りのある面で構成されたスタイリングで、ホイールベースは先代モデルから50mm延長することで5ナンバークラス最大の広い室内空間が確保された。

パワートレインは、最高出力140psの2.0L直4 DOHC、125psの1.8L直4 DOHC、91psの2.2L直4 SOHCディーゼルターボの3種エンジンと5速MTおよび4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFと4WDが用意された。

車両価格は、FF仕様の標準グレード(2.0L/4速AT)が189.9万円。当時の大卒初任給は、19万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約230万円に相当する。

5代目カムリは、原点回帰を果たしつつも先進装備を備え、ミディアムセダンとしての完成度を高めたが、セダン人気が低迷し始めた時期だったので、販売は期待したほど振るわなかった。
北米向けカムリを6代目カムリ・グラシアとして国内に投入

1996年12月には、早々と6代目(XV20型)となる「カムリ・グラシア」が登場した。カムリ・グラシアは、北米カムリを日本向けに仕立てた3ナンバーボディだったため、ユーザーの要望に応えるかたちで5ナンバーの5代目カムリは1998年まで併売された。この結果、5代目カムリが5ナンバー最後のカムリとなった。

カムリ・グラシアは、3ナンバーらしい面構成のボディで高級感を演出。ボディには、衝突安全ボディGOAが採用され、プラットフォームはFFの「ウィンダム」と共用、エンジンは最高出力200ps/最大トルク25kgmの2.5L V6 DOHCと、140ps/19.5kgmの2.2L直4 DOHCが搭載された。

1998年のマイナーチェンジでグラシアの名が外れてカムリの単独ネームとなり、以降カムリの名を引き継ぎ、2023年まで国内で販売された。
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カムリは、国内では比較的地味な存在だが、米国ではミッドサイズセダン21年連続ベストセラーを記録中である。残念ながら、日本では2023年をもって販売終了となったが、米国では今もトヨタを代表する看板モデルとして稼ぎ頭なのだ。
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