「科学や技術への関心だけでなく、その活用までイメージしている姿がとても印象的でした」(ヤマハ発動機コーポレートコミュニケーション部・松尾薫さん)

「科学教育センター」は、科学の学習を通して子どもたちの探求心を伸ばし、理科好きの子どもを増やして学力の向上を目指す立川市の伝統的な取り組み。昭和39年から続き、今年度は市内19校から162人の児童が参加している。

同社が「科学教育センター」のプログラムに協力するきっかけとなったのは、同社の電動アシスト自転車「PAS」開発時の秘話を紹介したテレビ番組の放映だった。番組を視聴した科学教育センターの関係者から、「何度でも挑戦する開発者の姿に感銘を受けた。子どもたちにあきらめない心と、モノづくりに向き合う探求心を伝えてもらえないか」と相談を受け、これに共感・賛同した同社が出張授業を行うこととなった。

6月7日に行われた立川市教育委員会の「科学教育センター」開講式では、ヤマハ発動機が1993年に世界で初めて電動アシスト自転車を製品化したその開発ヒストリーを紹介。

講義を受けた小学5・6年生の児童たちからは、「世のため、人のために、あきらめずに電動アシスト自転車を完成させた縁の下の力持ちに感動した」、「自転車にモーターを載せただけの乗りものだと思ってたけど、乗ってみたら違った。使う人に合った感覚でアシストしてくれるところがすごい!」といった思い思いの感想が聞かれた。

「子どもたちのメモの取り方や表情を見ていて、その真剣さが壇上まで伝わってきました。講義の内容は決して簡単ではないですし、私自身、当時の技術者の情熱をうまく伝えられるのか不安もあったのですが、それも取り越し苦労でした」。そう振り返るのは、基調講演を行ったヤマハ発動機コーポレートコミュニケーション部の松尾薫さん。「質問も非常に活発で、たとえば特許などについても積極的に知識を得ようとする姿勢に驚きました。科学や技術への関心だけでなく、その活用までイメージしている姿がとても印象的でした」と続ける。

一方、電動アシスト自転車の仕組みを講義した清水健太さん(同社SPV事業部)も、「難しい仕組みを積極的に理解しようとする子どもたちの姿勢や笑顔に私自身も刺激を受けた」と振り返り、講義を終えると、「これを機会に科学技術への関心を高めてもらえたら嬉しい」と語った。

初めて電動アシスト自転車を体験した児童からは、「楽しかった。難しいことに挑戦するには勇気が必要。つくった人の努力を知ってから乗ったので、よけいに気持ちよく感じた」との声も聞かれた。同社広報担当者によると、参加した児童に将来の目標などを尋ねてみると「ロケットの仕事をしたい」「薬の研究者になりたい」「動くモノを作りたい」など、その回答が具体的なことに驚かされたという。

参加した児童のなかから、将来、ヤマハ発動機のエンジニアが誕生するかもしれない。