快速ワゴンとして隙がない3シリーズツーリング




クラウンエステートのボディサイズは3シリーズよりもわずかに大きい程度だが、後席空間は5シリーズツーリングと同等の広さを誇る。両車の荷室容量はクラウンエステートが5名乗車時540リットル、2名乗車時1470リットルとなっており、3シリーズツーリングは500リットルと1510リットルだ。
3シリーズツーリングには見た目以上に広い荷室が備わっているうえ、荷室にはトノカバーと一体化した巻取り式の荷崩れ防止用パーテーションネットが標準装備となる。ラゲッジスペースには「アンチ・スリップ・システム」オプションも追加可能だ。
「アンチ・スリップ・システム」はリアハッチを閉じると床面の滑り止めゴムが自動で持ち上がり、荷物の出し入れを容易にするとともに、走行中の荷物の横滑りを防ぐ機能となる。ハイペース走行を前提としたこれらの装備により、ツーリングワゴンとしての完成度は一級に仕上がっているといってよいだろう。
しかし荷室機能ではクラウンエステートも負けていない。後席背面に格納されたボードを展開することで、クラウンエステートは長さ2000mm×幅1030mm×高さ690mmの広大なフラットスペース作り出せる。
トヨタ クラウンエステート Z
ボディサイズ=全長4930mm×全幅1880mm×全高1625mm
ホイールベース=2850mm
車両重量=1890kg
タイヤサイズ=235/45R21(前後)
BMW 318i M Sport
ボディサイズ=全長4720mm×全幅1825mm×全高1450mm
ホイールベース=2850mm
車両重量=1610kg
タイヤサイズ=225/45R18(前後)
E-FourとDRSで高い安定性を備えるクラウンエステート


クラウンエステートには、エンジンとモーター出力の向上が図られた2.4リッターハイブリッドシステムが搭載され、システム最高出力は243psとなる。
対する2.0リッターターボエンジンの3シリーズツーリングは最高出力が156psと低いが、ターボエンジンの高トルクと300kg近い車重差も相まって加速性能では3シリーズツーリングが優位に立つ。
3シリーズツーリングは後輪駆動であるため積載時のトラクションにも影響はない。また舵角も広く取れるため最小回転半径は5.4mとなる。対するクラウンエステートはモーター式の4WD「E-Four」だ。後輪操舵機構も加わることで常時高い安定感を発揮するうえ、最小回転半径も5.5mに抑えられている。
燃費性能はフルハイブリッドシステムを搭載するクラウンエステートが圧倒的に優れており、両車のWLTCモード平均燃費は20.3km/Lと13.0km/Lだ。
トヨタ クラウンエステート Z
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=2487cc
最高出力=190ps/6000rpm
最大トルク=236Nm/4300〜4500rpm
トランスミッション=電気式CVT
駆動方式=4WD
BMW 318i M Sport
エンジン形式=直列4気筒ガソリンターボエンジン
排気量=1998cc
最高出力=156ps/4500rpm
最大トルク=250Nm/1300〜4300rpm
トランスミッション=8速AT
駆動方式=2WD(FR)
万能ワゴンSUV vs. 生粋のツーリングワゴン


クラウンエステートのハイブリッドグレード「Z」の価格は635万円。対する3シリーズツーリングの最廉価グレード「318i M Sport」は、輸入ステーションワゴンのなかでも比較的安価な694万円となっており、両車の価格差はそれほど大きくない。
クラウンエステートは、5シリーズツーリングに匹敵する広い後席空間と十分な荷室容量を備えながら高めの最低地上高と4WDを備えており日常的な悪路にも対応可能だ。燃費性能にも優れ、まさに1台で多くの役割をこなせる万能車といえるだろう。
しかし取り回しや使い勝手の点では、よりコンパクトな3シリーズツーリングに分がある。3シリーズツーリングは十分な荷室容量だけでなく機能性にも優れており、ガラス部だけを開閉できるリアハッチは狭い駐車場などでも便利だ。また、3シリーズツーリングにはハンズ・オフ機能付き渋滞運転支援機能も備わる。
あらゆる点において高水準で仕上げられたクラウンエステートと、積載性能と運動性能を磨き上げた3シリーズツーリングは、スペックと実用性の観点だけで比較するなら実に優劣つけがたい2台だ。
車両本体価格
トヨタ クラウンエステート Z:635万円
BMW 318i M Sport :694万円