EV化による荷室の使い勝手への悪影響は最小限

N-VANe:の外観はガソリンモデルとほぼ同じだが、バンパーとグリル、テールランプが専用品となっている。グリルや内装の樹脂部品には廃棄バンパーなどのリサイクルマテリアルが使用されている点もN-VANe:の大きな特徴といえるだろう。

ボディカラーのラインナップに変更はないが、 N-VAN:eはルーフとリアハッチがブラックアウトされる2トーンカラーが追加され、ソニックグレー/ボタニカルグリーン/オータムイエローの3色に2トーンが選べる。

ボディサイズはN-VAN:eもN-VANも同じであり、車内寸法の違いもほとんどない。違いといえるのはダッシュボードの形状が違うことで室内全長が十数mm短く、タイヤの外径が大きくなっていることで荷室床面地上高が15mmほど引き上がっている程度だ。

助手席側のセンターピラーを廃した広大なドア開口や、助手席をフルフラットにできる使い勝手にも違いはなく、電動化のによる室内空間への弊害はほぼない。

ただし最大積載重量はやや少なくなっている。商用向けの一部グレードは最大積載重量350kgが維持されているが、乗用に適したe:FUNをはじめとする4座グレードは4名乗車時150kg、2名乗車時300kgに制限される。ガソリンモデルの方はグレードや駆動方式によって異なり、FUNのFFモデルは4名乗車時200kgで2名乗車時300kgだ。

ホンダ N-VANe: e:FUN
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1960mm
ホイールベース=2520mm
車両重量=1140kg
タイヤサイズ=145/80R13(前後)

ホンダ N-VAN FUN
ボディサイズ=全長3395mm×全幅1475mm×全高1940mm
ホイールベース=2520mm
車両重量=960kg
タイヤサイズ=145/80R12(前後)

航続距離は軽EVトップクラスの245km!充電性能も高い

ガソリンエンジンのN-VANは、WLTCモード平均燃費が19.2km/L(FUN)で、燃料タンク容量27リッターであるため総航続距離は単純計算で518kmとなる。

N-VAN:eの一充電走行距離はその1/2程度となる245kmだが、満充電までの時間は6.0kW出力の普通充電約4.5時間、50kWの急速充電で約30分とされているうえ、搭載されたバッテリー冷却/加温システムにより充電時間におよぼす外気温の影響が抑えられている。N-VAN:eは、軽EVのなかでは現状もっとも使いやすい性能といえるだろう。

N-VAN:eのモーター出力は64psに規制されているものの最大トルクは162Nmにも達し、N-VANに搭載される自然吸気エンジンの約2.5倍、ターボエンジンの約1.5倍もの最大トルクをごく低回転から発揮できる。重いバッテリーが床下に搭載されるため積載時の安定感は高く、力強さもガソリンモデル以上だ。

ただし商用車ベースだけに遮音性能は低く、多くのEVのような静粛性を期待すると肩透かしを食らう。加えてN-VANは全グレードで4WDが選べるのに対し、N-VAN:eはすべてのグレードが前輪駆動となる。

ホンダ N-VANe: e:FUN
駆動用バッテリーの種類=リチウムイオン電池
定格出力=39kW
最高出力=64ps/-rpm
最大トルク=162Nm/-rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

ホンダ N-VAN FUN
エンジン形式=直列3気筒ガソリンエンジン
排気量=660cc
最高出力=53ps/6800rpm
最大トルク=64Nm/4800rpm
トランスミッション=CVT
駆動方式=2WD(FF)

用途は限られるが自家用車として使いたい人はいるはず

もっとも乗用に適したN-VAN:e「e:FUN」グレードの価格は291万9400円だ。対するN-VAN「FUN」グレードの自然吸気エンジンモデルは176万4400円、ターボエンジンモデルは188万3200円となる。

CEV補助金は自家用の場合で57万4000円となるため実質的な価格差は60〜70万円だ。事業用としてLEVO補助金を活用する場合は約130万円の補助が受けられるため。ガソリンモデルとほぼ同額となる。

ガソリンモデルと同じくN-VAN:eにもアウトドアレジャー向けアクセサリーなどが多数用意されており、航続距離の問題を除外すればガソリンエンジンのN-VANとまったく同じように使えるだろう。

ただしN-VAN:eはあくまで事業向けのクルマであり、短距離の搬送業務がベストな使い方だ。乗用の「FUN」グレードはオマケのようなものと考えた方がよいかもしれない。

その特性上、自宅に充電設備がほぼ必須となるためガソリンモデルの代わりとして使うのは難しいといわざるを得ないが、N-VAN:eの方が適した環境にある人は少なからずいるはずだ。

近所にガソリンスタンドがない過疎地域での利用や、2シータースポーツカーのセカンドカーとしてならN-VAN:eの特性を最大限に活かせそうだ。

車両本体価格