キャラクター違いの3モデル 足回りも好みに応じて設定

ホンダS660なき今、国産軽自動車唯一のオープン2シータースポーツカーとして君臨するのがコペン。デビューは2014年とS660よりも早く、気が付けば10年選手だ。そしてS660生産終了後も〝好き者〞のために細々とつくり続けてくれているのがありがたい。

エクステリア

タイプ別に3種類のデザインを採用。撮影車の「セロS」と「セロ」は楕円形ヘッドライトのクラシックな雰囲気が特徴だ。ホイールは写真の16インチが標準だが、オプションとしてBBS製を含む2種類のホイールも用意する。最小回転半径は4.6m。

24年12月には「後退時車両直後確認装置」装着義務化の施行による法規対応として、全車に後方のバックソナーを追加してインジケーターを採用。後面衝突時の乗員保護に関する新規定にも対応している。同時に従来ラインナップしていたクロスオーバーSUV的な雰囲気をもつ仕様「XPLAY(エクスプレイ)」を終了している。しかし基本の「ローブ」に丸目の「セロ」、そしてスポーツグレードの「GR SPORT」と3つのスタイリングを好みに応じて選べるのはうれしい。

乗降性

シート座面の位置が低く、大きなサイドサポートも乗り降りの動作を邪魔するため、乗降性は良いとは言い難い。写真はルーフオープン時なのでまだマシだが、クローズ状態だとより大きく上半身を折り曲げる必要がある。

そんなコペンがほかの多くの軽自動車と一線を画するところ。それは実用性よりも運転する楽しさや移動する喜びを求めていることだ。ふたりしか乗れないし、一般的な軽自動車に比べれば荷物だって積めない。つまり実用性はかなり控えめである。でもそれでいいのだ。走って楽しく、移動が充実した時間になる。普通の軽自動車にはできないオープンドライブだって満喫できる。そこに喜びを感じられる人のための贅沢な軽自動車と言っていいだろう。コペンは軽自動車である前にスポーツカーである。だから運転席は開放感よりもドライバーを包むような感覚を重視し、大きなシート(レカロシートも選べる!)や着座位置が低いなど、〝サイズ感〞以外に軽自動車を感じさせない。走りを楽しむ環境をデザインしているのだ。

インストルメントパネル

走りに徹したシンプルな設計ながら、カーボン調の加飾によるスポーティな演出も実現。「セロS」と「ローブS」はMOMO 製の本革巻きステアリングホイールを標準装備する。

オープン2シーターということでどうしてもS660と比較してしまうが、ひと言で言えば「ストイック度で劣るけど実用性で勝る」。例えばルーフ開閉。自分で巻き取る必要がある手動式で手間が掛かるS660に対してコペンは電動で、ロック解除とスイッチ操作だけ。運転席に座ったままサッとルーフを開け閉めできる。荷室も、ふたりが乗ればカバンをどこに置こうか悩むほど荷物置き場がないS660に比べると望外の広さ。トランク容量はルーフの開閉状態により異なるが、ルーフを閉じた状態ならゴルフバッグや大型スーツケースも積載可能だ。

居住性

「セロS」と「ローブS」は操作中に身体が滑りにくいスエード調素材を採用したレカロシートを標準装備。ヘッドレスト一体型のシートバックは特に肩まわりのサポートが大きく、座面に設けられたサイドサポートとともに優れたホールド性能を発揮。ワインディングで身体左右に振られるようなシーンでもしっかり支えてくれる。また、シートヒーターも全車に標準装備されており、外気温の低い冬場にオープン走行をするときも安心。

走りはS660ほどピュアではないが意外なほどに本格派で十分にファン。エンジンを車体中央に置いて後輪駆動としたS660に対してエンジンを前方に積んだ前輪駆動だが、スポーティ走行でも前輪の接地感が高く、過剰なキビキビ感はないが深く曲がりこむような旋回でもグイグイ曲がっていく感覚が気持ち良い。加えてサスペンションは「標準」「S」「GR SPORT」と3タイプあって好みに応じて選べるのもうれしい。「GR SPORT」は意外にもしなやかで乗り心地が良い味付けだ。

うれしい装備

荷室内にはルーフの格納スペースを示す仕切りを装備。それより後ろ側であれば常時使用可能で、機内持ち込みサイズのスーツケースも入る。
月間販売台数       357台(24年7月~12月平均値)
現行型発表        14年6月「ローブ」 14年6月「セロ」 15年6月「GR SPORT」 19年10月一部仕様変更 24年12月
WLTCモード燃費      19.2㎞/ℓ※CVT車

ラゲッジルーム

そんなコペンだが、実はこの先いつまでつくり続けられるかわからない。コペンには自動ブレーキの搭載がないが、今年12月からは義務化されるのでそれを乗り切れるかが心配なところだ。欲しいと思っているのなら駆け込み需要となる前に、早めに手を打つ方がいいかもしれない。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.166「2025年 最新軽自動車のすべて」の再構成です。

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