使い勝手や走りを実務で検証 俊敏な加速に制動感覚も秀逸

かつてはセミキャブオーバータイプの軽商用車を販売していたホンダだが、利益を考慮して2018年にN-BOXなどと同様の乗用車系プラットフォームを利用したN-VANに切り替えた。荷室長などを考えれば不利なのだが、助手席側センターピラーを取り払っての大開口化や助手席までフラットに収納できるなど、さまざまなアイデアで使い勝手を高めた。洒落た雰囲気も相まって個人ユーザーも多い軽商用車という独自の地位を得ている。

エクステリア

軽自動車規格で定められた全高2.0mの上限に届きそうなスクエアなボディはエンジン車と共通だが、タイヤが13インチになっている点がEV 版の識別ポイントとなっている。最小回転半径は4.6m。

そのN-VANのBEV(電気自動車)が24年6月に発表となったN-VAN e:だ。事前にヤマト運輸と実証実験をして使い勝手や走りの性能などをつくり込んでいったという。グレードはビジネス向けで1人乗りの「e:G」と1〜2人乗り(タンデム)の「e:L2」、個人ユースにも向いている「e:L4」と「e:FUN」はどちらも2〜4人乗りだ。モーターはビジネス向けが53PS、個人ユース向けは64PSで最大トルクはどちらも162Nm。バッテリーは29.6kWhで一充電走行距離はいずれも245㎞となる。

乗降性

最大トルクが自然吸気エンジンの2.5倍、ターボの1.5倍で、しかもゼロ回転から最大トルクを発揮できるモーターだけあって、加速は圧倒的に速くて頼もしい。しかもエンジン音がないから静かなのもBEVならではだ。それでいてアクセル操作に対する反応は適度になまされている。宅配業者などにとって急加速は荷崩れを起こす大敵ゆえ、あえて穏やかなセッティングになっていると言う。それでも鈍いなんてことはなく、むしろリニアな感覚で扱いやすく、質感も高いぐらいだ。電動サーボシステムを採用しているだけあってブレーキのフィーリングも電動車としては秀逸。カックンとなったり、ブレーキング中にペダルのストロークが変化することもない。これならストップ&ゴーを頻繁に繰り返す宅配業者も安心だろう。

インストルメントパネル

インパネのデザインは助手席の有無で変わり1名/2 名乗車仕様は助手席側のエアコン吹き出し口が省かれる。7インチカラー液晶のデジタルメーターは上級グレードの装備。

エンジン音がないから静かではあるものの、あくまで商用車なので遮音/静音性能は必要最低限で外部からのノイズは正直に入ってくる。うるさくて敵わないというほどではないが、乗用車とは違うということは認識しておいた方がいい。商用車と言えば乗り心地は硬めというイメージがあるが、それはN-VAN e:にはあてはまらなかった。大径の商用車用タイヤを履いているが、凹凸の多い路面でもソフトタッチでしなやか。乗り心地は乗用車に近いと言える。

居住性

ハンドリングはあくまで穏やかだ。コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいけば1960㎜もの全高があるから、速度が高いと大きめにロールしていく。床下にバッテリーを搭載していてエンジン車よりも低重心になってはいるが、全高の高さはいかんともしがたい。頑張ってコーナリングするクルマではないのだ。もっとも、適度な速度ならば重量配分に優れたBEVならではの動きなので安心感はある。

うれしい装備

助手席側インパネトレーにはケーブルフックを装備する。フックに充電用ケーブルを挟んでおけば、素早くスマホに挿すことができて便利だ。
月間販売台数              2651台 N-VANを含む(24年7月~12月平均値)
現行型発表               24年6月
一充電走行距離※WLTCモード電費     245㎞

ラゲッジルーム

キャンプ場へ向けてのワインディングロードなども無理をしなければ楽しく走れるだろう。モーターの頼もしさも含めて、背の高い商用車としてはこれ以上ないぐらいに走りは秀逸。個人ユーザーにもお薦めのモデルなのだ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.166「2025年 最新軽自動車のすべて」の再構成です。

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