トライトン3台体制で完全勝利を狙う

エンジンには4N16型2.4L直列4気筒クリーンディーゼルターボを採用し、最高出力160kW以上、最大トルク500Nm以上という高出力仕様にチューニング。

三菱自動車が技術支援する「チーム三菱ラリーアート」は、2025年8月に開催されるアジアクロスカントリーラリー(AXCR)にトライトン3台体制での挑戦を発表した。今回は“勝ちに行く”という強い意思を示す形で、参戦車両である「トライトン」を徹底的に進化させ、体制面も刷新。ワークスとしての総合優勝を狙う布陣で大会に臨む。

節目となるAXCR第30回大会は、例年に比べて競技内容が大幅に強化されている。総走行距離は約2,500kmに及び、期間も従来の6日間から8日間へと延長された。開催地はタイ単独となり、当初予定されていたカンボジアとの国際越境ルートは回避された。大会主催者が2025年6月23日に発表したもので、安全性や運営効率を重視した判断とされる。詳細なコースレイアウトは後日発表される見通しだが、地形や気候条件に大きな変更はないとされ、泥濘地帯、河川渡渉、ジャングル走行など、多様な地形を走破する高難度ラリーであることに変わりはない。

取材会に展示されていた車両はレプリカモデルだが、実際のレース車両は荷台を数十ミリ短くしてディパーチャーアングルを確保しているという。

参戦車両はすべて市販仕様のトライトンをベースにしたラリー専用開発車両である。エンジンには4N16型2.4L直列4気筒ディーゼルターボを搭載し、最高出力は160kW以上、最大トルクは500Nm以上に高められている。駆動方式はスーパーセレクト4WD-IIをベースとしたフルタイム4WDで、前後デフにはCUSCO製の競技用機構を採用。足まわりには同じくCUSCO製の専用ダンパーと、横浜ゴムのGEOLANDAR M/T G003タイヤを装着。車体の一部にはカーボンパネルも用いられており、車両全体の軽量化と剛性バランスを最適化、泥濘地や水没区間での走行性を確保するため、エアインテークの位置変更や電子制御の見直しも行われているという。また、6速シーケンシャル変速機に加えて、1台には6速オートマチック仕様も用意されており、ATトランスミッションの耐久性や制御性を競技環境下で検証する目的も含まれている。

悪路走破性を徹底的に追求している。車体には軽量化と剛性確保を目的としたカーボンパネルも導入されており、競技仕様としての完成度は極めて高い。

AT仕様のトライトンも参戦

ドライバーラインアップも万全だ。2024年大会で好成績を残した増岡浩チーム監督のもと、ドライバー/コドライバーは、2022年大会で総合優勝を果たしたチャヤポン・ヨーター(国籍:タイ)/ピーラポン・ソムバットウォン(国籍:タイ)を筆頭に、2024年大会で5位入賞した田口勝彦/保井隆宏、2024年大会に初出場して完走を果たした小出一登/千葉栄二を引き続き起用。
1号車と2号車のチャヤポン・ヨーターと田口勝彦は昨年の仕様をベースに各所に改良が施された車両で参戦し、総合優勝を目指す。3号車は三菱自動車の社員であり、開発部門のテストドライバーである小出一登が、競技用に最適化されたオートマチックトランスミッション車で参戦し、市販車の高性能化の技術検証を行うとともにチームメイトのサポートを行う。まさに“製品を知り尽くしたプロ”による現場対応が、競技車両の信頼性を根底から支える。

AT仕様の3号車はラリーに参戦しながらサポートカーの役割りも果たす。そして、悪路におけるATトランスミッションの挙動を検証する目的も兼ねており、競技と技術開発の両立を図る実験的な位置づけも持つ。

「今回のアジアクロスカントリーラリーは、新型となった『トライトン』で臨む3度目のラリーになります。ハイスピードコースでの加速性能やテクニカルコースでのハンドリング、泥濘路や川渡りなど極悪路での走破性など、これまでにもあらゆる場面で高いポテンシャルを発揮してきました。今回はエンジンの高トルク化と耐久性向上のほか、足回りを中心に熟成を図り、総合優勝を狙えるクルマに仕上げています。メンバーは経験を積み、チームワークも高まり、チームとしての総合力が向上しています。3年ぶりの総合優勝に向けて最高の状態に仕上げていきますので、ご期待下さい。」とチーム三菱ラリーアート 増岡 浩 総監督は意気込みを語った。

本大会を通じて得られるのは「勝利」という結果だけではない。競技の過程で蓄積される膨大な知見と、過酷な環境下における製品の信頼性証明こそが、三菱自動車にとって最大の成果となるはずだ。トライトンが掲げる「本物の走破力」は、まさにこのAXCRの舞台でこそ最も純粋なかたちで表現される。

チーム三菱ラリーアート 増岡浩(総監督)、田口勝彦(ドライバー)、小出一登(ドライバー)