高出力150kWの蓄電池付き充電器を採用

メルセデス・ベンツが日本国内でのEV充電インフラ整備に本格的に乗り出した。2025年7月8日、同社はEV用急速充電ネットワーク「Mercedes-Benz High-Power Charging(HPC)」の第1号拠点として、「Mercedes-Benz Charging Hub 千葉公園」を正式にオープンしたと発表した。
この取り組みは、同社が掲げるカーボンニュートラル実現と電動化戦略の一環であり、高出力な急速充電器を都市部に設置することで、EVユーザーの充電に対する不安を払拭し、利便性の向上を図る狙いがある。拠点は今後、三大都市圏を中心に順次展開される予定だ。
今回、千葉市中央区の千葉公園第2駐車場(通称:みどりの駐車場)に設置された本拠点には、2024年にメルセデス・ベンツと事業提携を結んだパワーエックス(本社:岡山県玉野市、CEO:伊藤正裕)製の蓄電池ユニット付き急速充電器を採用。ディスペンサーユニットはメルセデス・ベンツ専用設計とされており、ブランド体験にもこだわった構成となっている。
充電器は1基で2口の充電ポートを備え、最大出力は150kW。ただし、すべての口が同時に稼働する場合は1口あたり120kWに制限される仕様となっている。1回の充電セッションは最大30分までとし、急速かつ効率的なエネルギー補給が可能だ。
また、操作は大型のタッチスクリーンを介して直感的に行えるよう設計されており、24時間365日のカスタマーサポートも提供される。利便性と安心感の両立が、HPCネットワークの設計思想に貫かれている。

「時間課金」ではなく「従量課金」を導入
日本ではEV充電の料金体系において「時間課金」が一般的だが、HPCでは「従量課金(kWhあたり)」方式を導入。充電出力や通信エラーの影響を受けやすい時間課金とは異なり、実際の使用電力量に応じた透明性の高い課金方式を採用している点が特徴だ。

HPCの利用は、メルセデス・ベンツの有償充電サービス「MB.CHARGE Public」(旧Mercedes me Charge)またはパワーエックスのスマートフォンアプリを通じて可能。MB.CHARGE Publicでは月額5,720円(税込)で94.6円/kWh、PowerXアプリ経由では月額無料で100円/kWhとなっており、メルセデス車オーナーだけでなく、すべてのEVユーザーに門戸が開かれている。
MB.CHARGE Publicでは、全国のe-Mobility Powerネットワークにある約2万5,000口超の急速・普通充電器との連携も進んでおり、利便性は今後さらに高まる見通しだ。

充電中も快適に、千葉市との包括連携協定
この「Charging Hub 千葉公園」は、メルセデス・ベンツ日本合同会社(MBJ)、メルセデス・ベンツ・ファイナンス株式会社(MBF)、千葉市の三者による2024年7月の包括連携協定に基づいて選定されたもの。敷地内にはカフェやスポーツジムが併設されており、充電中の時間を快適に過ごすことができる環境づくりにも注力している。
HPCの充電に使用される電力は、2025年末までに実質再生可能エネルギー100%での提供を目指しており、再エネ証書を活用した電源のグリーン化も進行中だ。
記者会見では、メルセデス・ベンツ・ハイパワー・チャージング日本合同会社(MBHPCJ)の社長 兼 CEO、アンドレアス・レーア氏は以下のようにコメントしている。
「日本におけるEV普及の障壁のひとつが、充電インフラの不足とその使いにくさである。私たちが展開するHPCは、メルセデスユーザーのみならず、すべてのEVユーザーにとって安心かつ快適な充電体験を提供するものであり、これからの持続可能なモビリティ社会の基盤になると確信している」

今後は柏・駒沢にも展開予定
MBHPCJでは、今後もHPCネットワークの全国展開を加速させる方針だ。すでに千葉県柏市の「Mercedes-Benz Charging Hub かしわ沼南」(2025年8月予定)と、東京都世田谷区の「同 駒沢」(2025年9月予定)の開設が決定しており、順次拠点を増やしていく。
メルセデス・ベンツは、単なるEVメーカーという枠を超え、エネルギーインフラ企業としての側面を強めている。HPCはその象徴的な取り組みであり、EV社会の実現に向けた本格的な布石といえるだろう。