広島トヨタ team DROO-PのHT DUNLOP 86(ドライバー:石川隼也)は、前戦はリヤに19インチのSP SPORT MAXX GT600を装着していたが、このラウンドでは18インチのDIREZZA β02に戻してきた。縦のグリップ力は19インチのSP SPORT MAXX GT600に分があることがわかったが、横方向のグリップに関してはまだ十分なデータをとりきれていないため、トータルで考えてDIREZZA β02のほうがメリットがあると考えたからだ。

同じく広島トヨタ team DROO-PのHT・DUNLOP・85(ドライバー:松川和也)は、マシンに大きな変更はなし。前戦でクイックなステアリングギヤ比に変更したが、それにも慣れ、ほぼ違和感はない状態だ。そしてURAS RACINGのDUNLOP CUSCO SKYLINE(ドライバー:野村圭市)も大きな変更はなし。クルマの完成度はかなり高まっている状態だ。

前戦では石川が乗るGR86のみリヤにSP SPORT MAXX GT600を使っていたが、このラウンドでは石川の車両もDIREZZA β02に戻してきた。

金曜日の公式練習、チーム・ドルーピーは石川のタービンのガスケットから漏れが起こったのを修理したくらいで大きなトラブルはなし。あとはギヤ比やスタビライザーの調整等を行ってまずまずの手応えを得た。いっぽう野村は車内にタイヤスモークが入りすぎて視界が遮られる現象に悩まされたほか、ウエストゲートの配管や、充電系統のトラブルもあって十分に周回をこなせずに終わってしまう。少ない周回の中で高いDOSS得点を出した走行もあったが、野村はこのトラブルの余波で土曜日朝のチェック走行も走れず、第3戦の単走決勝本番を迎えることになった。

メインスタンドには特典付きのタイヤメーカー応援席が設定され、ダンロップのファンも大勢集まってくれた。
観客に挨拶をするダンロップのドライバー石川隼也(左)、野村圭市(中央)、松川和也(右)。

土曜日、第3戦単走決勝。ダンロップ勢ではまず石川が出走。1本目に通過指定ゾーンを外しつつも、手堅い走りで通過が濃厚な96.36点をマークした。この筑波サーキットのD1GPは、最終コーナーをスタートしてメインストレートから審査が始まり、1コーナー、S字を抜けて、第1ヘアピンを立ち上がったところまでというロングコースだ。通過指定ゾーンも4ヵ所設けられ、ミスによる減点も多くなりがちで、しかもタイヤの摩耗も激しい。そのため2本目の後半にはタイヤのグリップが低下してくる車両も多かったが、石川は2本目にもさらに進入速度を上げ、ダイナミックなドリフトで97.85点と点を伸ばし、この時点で2番手に浮上。最終的にはひとつ順位を落としたが、3位で単走を終えた。

いっぽうで、そのあとに走った松川は2本とも通過指定ゾーンを外すなどして点が伸びず29位で単走敗退。また野村は、2本目にいい振りやリズムを見せ、DOSSによる機械採点だけなら97点台という高得点だったが、ラインが少しズレてゾーン外しやトラックオフ減点を受け、30位で単走敗退となった。

練習日から車両トラブルに見舞われていた野村は、練習であまり走行できなかったこともひびいて単走敗退となった。

続いて午後に行われた追走トーナメント、石川の最初の対戦相手はS15型シルビアに乗るルーキーの和田だ。石川は先行でゾーン外しの減点を受けたものの、後追いでは後半にかけて非常に近いドリフトを見せて勝利した。

ベスト8では同じGR86に乗る2023年のD1GP王者・藤野と対戦。石川は、先行の1本目はドリフトを近い距離で合わせられ、後追いの2本目は姿勢を乱すミスをしたものの、ヘアピンでコースオフした藤野が大きく減点されたことで、石川の勝ちとなった。

準決勝。石川の対戦相手は2022年のD1GP王者・横井だ。1本目後追いの石川は1コーナー進入で横井をとらえたものの、接近しすぎて横井をプッシュしてしまう。これで横井はコースオフ。横井の車両はまだ走行が可能だったが、ここで採点終了だと思い込みドリフトをやめてしまう。石川はなんとかその後ろでドリフトを続けて審査区間を走り抜けた。審査の結果、プッシュした石川にも減点がついたが、横井はドリフト継続可能だったのにドリフトをやめたと判定されてより低い点がつけられた。2本目は横井がいい後追いを見せたが逆転には至らず、石川が初の決勝進出を決めた。

石川はミスもあったが、先行時には毎回質の高い走りを見せて、自身初の決勝進出を決めた。

決勝。ダンロップ勢としては2018年第1戦で畑中真吾が優勝して以来の決勝進出だ。対戦相手はBMWを駆り、開幕から2連勝中と絶好調の目桑だ。

1本目は目桑が先行。石川は終始近い距離のドリフトを見せて、10.7という高い接近ポイントをとる。2本目は石川が先行。今度は目桑が近いドリフトを見せ、同様に10.7という接近ポイントを獲得する。このとき目桑はS字後半でわずかに石川に接触して姿勢を乱していたこともあり、DOSS点も合わせた合計点では0.6ポイント石川が上だったが、ベスト8以降では1.0を超える得点差がつかないと再対戦となるため、勝負は再対戦に持ち込まれた。

しかし、これは石川にとって不運だった。石川のタイヤはすでに溝がないほど摩耗していた。しかし、目桑は準決勝で、対戦相手の上野が1本目にクラッシュしてリタイヤしたことにより、まだ摩耗しきっていないタイヤがあったのだ。

そんな状況での決勝再対戦。1本目は目桑が先行。石川はそれでもほぼ限界に達していたDIREZZA β02で目桑に食らいつき、近い距離で1コーナーに進入したが、そこで目桑に接触し、ハーフスピンしてしまう。これで石川は後れをとり、得点でも大きく目桑がリード。2本目も後追いの目桑に大きなミスはなく、石川の初優勝はならなかった。

決勝で後追いから目桑を追い上げる石川。石川は最初の2本では目桑に対して互角以上の走りを見せた。

石川は、「並ぶ前に目桑選手のタイヤが見えたんですよ。そしたらけっこう溝があったんですよ。僕のはね、ないわけですよ。これはたぶんついていけんっていう状況で、とりあえず普通に走ろうと思って行ったら、あんがいついていけて。そのままコーンって当たってしまって。『うわ、ベスト4のときと一緒や。オレあほ丸出しや。最悪』と思って……もう気まずくてしかたがないっすよね」と悔しがった。

ラウンド2位で過去最高位となった石川。表彰式でシルバーのメダルを受け取った。
奥伊吹に続いてのポイント獲得はならなかった野村。しかし、DOSSでは高い得点を何度もとっていたので走りは確実にレベルアップしている。

チーム・ドルーピーの松岡監督は、「この準優勝に関しては満足してますよ。やっとここまで来たって感じだね。あとはもうドライバーもメカニックもそうだけど、十分戦えるっていうことはもうみんなの腹に入ったから、ここから先はめっちゃ楽しみ。もうあと1点取ればいいんだもん。決勝は最初の点では勝ってたんだから。あと1点がオレたちに与えられた試練だね。

やっぱりβ02はすごいタイヤだなって、あらためてわかったし。タイヤの実力がやっと結果に結びついたわけで、もともとオレたちがお願いして作ってもらったサイズのタイヤだけど、それが結果につながらない可能性もあった中で、この結果を出せたっていうことで、オレはすごいありがたいと思ってます。ドライバーもメカニックもよくがんばってくれた結果だと思う。時間かかったけどね。ホントにタイヤは最高でした。ウエットで戦えるのは以前からわかってたわけだけど、それが今回この路面温度のこの状況の中で戦えたんだから。このワイドレンジの性能はオレたちにとって本当に武器だということを証明してくれた。もう最高です」

準優勝。しかも内容では負けていなかった結果に大きな手応えを感じているチーム・ドルーピーの松岡監督。

第3戦ではついに優勝まであと一歩というところにこぎつけたDUNLOP DIREZZA β02とチーム・ドルーピー。決勝でも寿命寸前まで戦闘力のあるグリップを発揮したことで、いつでも勝てる力があることを証明した。