「ベトナムオートエキスポ」とは?

ベトナムオートエキスポは、今回で18回目となる歴史あるショーのひとつ。コロナ禍では、開催が中止され、2024年に5年ぶりの復帰を果たした。公式サイトには「500のブースがあり、約2万5千人が来場する」とある。

サイト上では、政府からの支援があることや、出展社にも名立たる日本自動車メーカーを始め、世界の自動車メーカーやサプライヤーのロゴが並ぶ。さらに過去の会場写真にも多くの訪問者の姿が映っていたことも期待を膨らませた。

ただ気になる点もあった。サイトの情報が過去のものから更新されておらず、数字などに間違いが見られたほか、直前に同行者が主催者側にメールで問い合わせても返答がなく、具体的な情報が最後まで掴めなかったからだ。しかし、一度は出向いてみたいと思っていたベトナムであったため、ここは突撃取材を断行した。
大手メーカーの出展は少なく、日本メーカーは三菱のみ

ホテルから会場までは徒歩15分ほど。クラシカルな街並みも独特な雰囲気があり、眺めていても飽きない。会場がハノイ駅近くということもあり、多くの自動車やバイク、公共バスが行き交い、活気にあふれている。さらにビンファストなどベトナムならではの車種が多く見受けられたことも気持ちを盛り上げた。

会場となるハノイ国際展示場は、正門の正面には結婚式や会議などが行える大型ホールも併設されており、なかなか立派な施設。さらに入口付近にもモーターショー開催を知らせる巨大な看板があり、我々も歓迎ムードに包まれていた。

会場にも「VIETNAM AUTO EXPO 2025」という巨大な看板が掲げられており、会場前には、試乗車コーナーの準備が進められていた。オープニングセレモニーよりも早く到着したとはいえ、他のモーターショーのように受付を待つメディアの姿も見受けられない。ベトナムのメディアはのんびりしているのかなと思いつつ、会場入りした。

その正面には三菱自動車がブースを構える。ただベトナムでは人気ブランドなのに、展示車がパジェロスポーツとエクスフォースの2台だけ。このショーでは、各ブースが小さめなのかなと思いつつ、会場を少し歩いてみて愕然とすることに。なんと小さなブースと思った三菱自動車が、ここでは大型のものであり、ほとんどのブースが実車など置くことができない小さなものであったのだ。


慌てて会場図を探して見に行くと、自動車メーカーのブースは、三菱自動車以外だと中国のGACモーターとベトナムの商用車メーカー「ビームモーター」だけというショボさ……。





期待したビンファストの影も形もなし。ブース数を数えても110ほどしかなかった。さらに他のブースは部品や電動2輪車などを扱うものが多く、複数の会社の部品を取り扱う専門業者が中心のようだった。






日産がシークレットで最新モデルのN7を持ち込んだ?
がっくりと肩を落としながら、同じ会場内にあったオープニングセレモニー会場に着席して待つ。多く用意されたメディア席もなかなか埋まらず、現地メディアさえ関心が薄いことがはっきりと分かった。

オープニング直前に主催者側のスタッフが、レシーバーを手渡してくれた。しかし、通訳は中国語のみ。そもそも海外メディアなど想定していないショーだったのである。オープニングには華やかな太鼓ショーやベトナム人歌手の熱唱もあるも、熱の入る分、会場の人の少なさに逆に気持ちが盛り下がる……。


会場内もゲストによるVIPツアーまでは少し人が多かったものの、その後は閑散した雰囲気に。ショーを盛り上げるコンパニオンどころかBGMもなし。オープニングの式典をサポートしていたアオザイを着ていたおねーさんもいつの間にか消えていた。

出展社の人たちものんびりした様子で、ショーの緊張感はなし。出展さえお付き合いということなのだろう。そのため、取材は必要な写真をしっかりと撮影したのにも関わらず、たった2時間で終了した。私のモーターショー取材の中で、間違いなく最短記録である。

ただ注目すべき発見もあった。それが謎の偽装車の存在だ。入口正面にあった試乗コーナーに、エンブレムの隠されたセダンが駐車しており、何やら男性がダッシュボード下をのぞき込み、作業中だった。

そのため、外観だけ写真に収めるだけに留めたのだが、調べてみると今春に中国で発売されたばかりの日産N7だったことが判明。まさか、ベトナムの地で話題のN7を目撃することになるとは夢にも思わなかった。ただ翌日には姿を消しており、写真がなければ見間違いで終わったかもしれない。現地には日産車のディストリビューターが存在するため、市場の反応を見るべく、持ち込まれたのかもしれない。

メインはホーチミンの「ベトナムモーターショー」?ハノイ開催の先行きは……
現在、ベトナムのモーターショーは最大の都市「ホーチミン」で行われる「ベトナムモーターショー」がある。同ショーの方が、会場の広さや出展社数もはるかに多い。ハノイはベトナムの首都ではあり、政治の中心ではあるもののビジネスの中心はホーチミンになっているのが現状だ。

しかも、昨年に5年ぶりの復活を果たしたものの、そのブランク自体が出展社集めにも影響していったのだろうと推測する。まだ2026年以降の予定は明かされていないが、公式サイトを確認すると、各部で従来の開催からアップデートされていないところが多く、情報の中には2020年でストップしているものも……。つまり、主催者側の勢いも無いようなのだ。ひょっとすると残念なハノイのショーは、これが見納めかもしれない。もちろん、首都開催のショーだけに、そうはならないことを願うばかりだ。


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