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今日は何の日?■ブームを起こした国産車初の4ドアHT誕生
1972(昭和45)年7月20日、日産自動車は3代目「セドリック」に国産初となる4ドアHT(ハートトップ)を追加した。前年にデビューした3代目セドリックには、ライバルのトヨタ「クラウンHT」に対抗して2ドアHTが設定されていたが、その翌年にスタイリッシュながら利便性にも配慮した4ドアHTが追加されたのだ。

トヨタ・クラウンに対抗して誕生したセドリック
初代セドリック(30型)は、1955年に誕生した日本初の純国産高級車トヨタ「トヨペットクラウン」に対抗して、1960年にデビューした。日産が初めて独自開発した6人乗りの高級セダンで、縦目4灯のフロントマスクとAピラーを前傾させたパノラミックウインドウなどアメ車風のスタイリングが特徴だった。

モノコックボディによって車重を1195kgに抑えながら剛性を高め、さらに足回りはフロントがダブルウイッシュボーン/コイル、リアは3枚リーフ/リジッドサスペンションを装備して高級車らしい乗り心地を実現。パワートレインは、最高出力71psを発揮する1.5L直4 OHVエンジンと4速MTの組み合わせ。
その後、セドリックはモデルチェンジしながら、日本を代表する高級車としてクラウンと人気を2分するようになった。

そして、1965年には2代目(130型)へ移行。アメ車風から、ヨーロッパ調のスタイリングに変貌したことが特徴。エンジンは、最高出力92psの2.0L直4 OHV、100psの2.0L直6 OHV、同エンジンで115psのツインキャブレター仕様の3種が用意され、全車5ナンバーボディとなり3ナンバーの設定はなくなった。
3代目セドリック/4代目グロリアの兄弟車誕生

1971年2月に登場した3代目(230型)セドリックのトピックスのひとつは、セドリックとグロリアが兄弟車になったこと。セドリックは、上記の通り1960年に誕生、一方のグロリアは1959年1月にプリンス自動車から誕生したが、1966年に日産がプリンス自動車を吸収合併したことから、3代目セドリックの誕生とともに両車は販売系列の異なる兄弟車となった。セドリックがオーソドックスな高級車でグロリアはスポーティで個性的なデザインという違いはあるが、基本仕様は同じ。セドリックの3代目に対してグロリアは4代目、以降のモデルチェンジでも1世代ズレることになるが、両モデルを合わせて「セドグロ」と呼ばれた。

3代目では、4ドアセダンに加えてトヨタ「クラウンHT」に対抗して2ドアHTが設定された。ライバルの4代目クラウンがクジラクラウンと呼ばれて前衛的で好き嫌いがハッキリ分かれたのに対し、セドリックはアメ車風のオーソドックスなスタイリングで人気を獲得した。
パワートレインは、先代から引き継いだ2.0L直4 OHVと直6 SOHCの2種エンジンと3速/4速MTおよび3速ATの組み合わせ。車両価格は、標準グレードの2ドアHT(デラックス)が105万円に設定された。
国産車初の4ドア ハードトップ誕生

3代目誕生から約1年半遅れの翌1972年7月のこの日、3代目セドリックの真打とも言える、国産車初の4ドアHTが追加された。ハードトップを国産車で初めて採用したのは、トヨタの3代目「コロナ」(1965年に追加された「コロナHT」)だが、これはピラーレスの2ドアHTだった。

セドリックのピラーレス4ドアHTは、スタイリッシュで室内の開放感に優れ、しかもドアが4枚あるので、2ドアHTに比べて利便性が高いのが特徴だ。また角型2灯のヘッドライトや小型のテールランプなども、HTの爽快な印象を盛り上げた。

車両価格は、標準グレード132.5万円(2.0L)/163.0万円(2.6L)に設定。当時の大卒初任給が5.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算で現在の価値で約544万円/669万円に相当する。


4ドアHTはたちまち人気モデルとなり、3代目セドリックの個人ユーザーの多くがこのモデルを購入。クラウンとセドグロの激しいシェア争いの中で、唯一セドグロがクラウンに勝利するという快挙に4ドアHTが大いに貢献したことは言うまでもない。

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セドグロの採用以降、美しいシルエットを実現するピラーレスの4ドアHTはバブル期で絶頂期を迎えたが、1990年代後半には完全に廃れてしまった。RVやミニバン人気によるユーザーの居住性重視の志向に加え、90年代から側面衝突や高速域での静粛性にピラーレスHTが不利であることなどが、市場で許容できなくなったのだ。
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