NAのRX-8に新たな可能性!

フジタエンジニアリングが本気で取り組む過給機計画

2000年の排ガス規制強化により、ロータリーターボは歴史の幕を閉じた。代わって登場したRX-8は、軽量ローターやペリ吸気+サイド排気を採用した新世代NAロータリー“13B-MSP”を搭載。レスポンスに優れる先進的なパワーユニットだったが、歴代RX-7の猛烈な加速に慣れたファンからは「物足りない」とも言われた。

だが、RX-8はフットワーク性能においてFD3Sをも凌駕するとも評される高いポテンシャルを持つ。

その魅力を最大限に引き出すべく、ロータリーチューンの名門“フジタエンジニアリング”が本気で挑む過給計画が動き出した。

小型・高効率S/Cで“低速トルク不足”を完全払拭

「以前にも過給化を試みましたが、RX-8はエンジンルームが狭く、大きなタービンは熱対策が困難で熟成できませんでした。でも今は小型で効率のいいスーパーチャージャーがある。これなら行ける、そう感じたんです」。そう語るのはメカニックの河野さんだ。

今回選ばれたのは、HKS遠心式スーパーチャージャーシステム「GT2-7040」。400psターゲットの大容量モデルでありながら、ブーストの立ち上がりが非常にナチュラルな新世代コンプレッサーだ。

エンジンはノーマルのまま、ブースト0.7キロでテスト中にもかかわらず、ダイナパック計測で342psを記録。これまで指摘されてきた低速トルク不足は完全に解消され、6,000rpmまでの加速感はまるで別物だ。

しかも高回転だけでなく、低中回転域からしっかりパワーを上乗せ。これが現時点での仕様であり、今後はポート加工やブーストアップで最終的に400psを狙っていくという。

冷却は徹底的に、Vマウント化+多段対策

ラジエターとインタークーラーはVマウント化。また、ラジエターを通過した熱気がインテークパイプに向かい吸気温度が上昇するので、今後はさらなる遮熱対策を施し、真夏時期のテストも重ねていく。

スーパーチャージャーのオイルクーラーは、フロントバンパー内にレイアウト。マツダのエンブレムは大胆にくり抜かれ、そこから走行風をダイレクトにオイルクーラーへと導く仕様だ。

さらに、純正バンパーに備わる編み目状のグリル部分も、塞がれていたエリアまで細かく開口。加えて、アンダーボードとバンパーの隙間からも空気が取り込めるよう加工されており、走行中の冷却効率を徹底的に追求している。

もちろん、取り込んだ空気は逃がすことも重要。そこで、オリジナルのカーボンボンネットにはダクトを設け、効率的に熱を排出。冷却性能に課題が残る現状を踏まえ、できる限りの熱対策が施されている。

ECUも専用ハーネス製作でフル対応

制御にはLINKのプラグインモデルを汎用ケースに収めて使用。専用ハーネスを一から製作する必要があり、この作業だけでも相当な時間を要したという。

このプロジェクトは若手メカニックの育成も兼ねた開発プログラムであり、次世代の技術を育む場にもなっている。

テスト走行で証明された“ストリート最速クラス”

左:開発ドライバー勝木さん/右:開発担当メカニック河野さん

開発を担うのは、スーパー耐久や86/BRZレース経験を持つ勝木さんと、メカニックの河野さん。30歳前後の若手コンビが二人三脚で進め、藤田代表も加わって方針を決定。テストと改良を繰り返し、ユーザーに安心して届けられる完成度を目指す。

取材時に行われたセントラルサーキットでのテスト走行では、気温の高い5月下旬にもかかわらず、1分26秒861という好タイムをマーク。この時期の条件を踏まえれば、気温の低い冬場には24秒台突入も視野に入り、筑波サーキットでも1分1秒台が狙えるポテンシャルを持つ。まさにストリートチューンとしては十分すぎる速さが実証されたカタチだ。

「今後はポート加工も施し、最終的にはブーストを上げて400psを狙います。ターボと違って低回転からトルクが出て、なおかつ高回転まで気持ちよく伸びる。このフィールならRX-7に引けを取らないはず。自信を持ってユーザーに届けられる内容にするので、楽しみにしていてください」と河野さん。

これまでどちらかといえば“通好み”の存在だったRX-8。しかし、フジタエンジニアリングが本気で挑むこのプログラムによって、これからは主役として脚光を浴びる日が来るかもしれない。

●取材協力:フジタエンジニアリング 大阪府堺市東区八下町1丁82-1 TEL:072-258-1313

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