同じサイズ感でも室内空間が広いのはステップワゴン!3列目シートはデリカが上

やや広い全幅と全高によりボディサイズはデリカの方が断然大きく感じられるだろう。しかし室内空間はステップワゴンの方が広い。とくに室内高は100mmもの違いがあるため、頭上空間はステップワゴンの方が明らかに広く感じられるはずだ。

対するデリカの車内も決して狭くはない。とくに左右跳ね上げ格納式となる3列目シートはリアハッチ際までスライド可能であり、ステップワゴンよりも広い膝周り空間を確保できる。

3列目シートが床下格納となるステップワゴンは荷室空間をほとんど圧迫せずに格納できるメリットはあるが、構造が複雑であるためシートとしての作りは簡素でありスライド機構も備わらない。これによりフル乗車したときにが広く感じられるのはデリカの方だ。

一方、ステップワゴン7人乗り仕様の2列目シートは、前後のほか左右にもスライドできるためキャプテンシートでありながらベンチシートとしても使用でき、その状態でシートを最高端までスライドさせればストレッチリムジンのような広々とした2列目空間となる。

両車はシートアレンジだけでなく車内の印象も大きく異なる。デザインの違いはもちろんのこと、凹凸が少なくスッキリとしたインテリアのステップワゴンと比べて、デリカはルーフの補強材が車内に張り出しているため良くも悪くも無骨感が余計に際立って感じられる。

ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ プレミアムライン ブラックエディション
ボディサイズ=全長4830mm×全幅1750mm×全高1845mm
ホイールベース=2890mm
車両重量=1840kg
タイヤサイズ=205/55R17(前後)

三菱 デリカ D:5 ブラックエディション
ボディサイズ=全長4800mm×全幅1795mm×全高1875mm
ホイールベース=2850mm
車両重量=1970kg
タイヤサイズ=225/55R18(前後)

デリカD:5の維持費はやや高め!2.2Lディーゼルエンジンでも車内は静か

ステップワゴンのハイブリッドモデルのパワートレインは低中速域はモーターのみで走行し、一定速度以上でエンジンの動力も使って駆動できる「e:HEV」だ。最高出力184ps/最大トルク315Nmの強力なモーターを用いた乗り味はEVのようであり、もちろん静粛性も非常に高い。

デリカのパワートレインは全グレード共通で、2000rpmで380Nmもの最大トルクを発揮できる2.2リッターディーゼルエンジンにセレクト式の4WDが組み合わせられる。車外ではディーゼルエンジン特有のガラガラとしたノイズが盛大に聞こえるが、車内へ伝わる騒音はしっかりと抑え込まれており、静粛性に不満は出ないはずだ。

デリカは一回り大きな外径のタイヤによって路面の凹凸による影響も少なく、空気容量が増えるため柔らかな乗り心地となる。デリカに比べればステップワゴンは同じミニバンと思えないほどスポーティであり、デリカより低い重心と着座視点も相まって安定感は高い。

SUVテイストのミニバンとはいっても、デリカの乗り味はオフロードSUVほど鈍重ではなく、十分ミニバンとしての範疇に収まるレベルだ。そのうえで高い悪路走破性能がデリカの特徴となる。ただしデリカのホイールベースはミニバンのそれであり、最低地上高はステップワゴンよりも35mm高い185mmに留まるため、悪路走破性能に過度な期待は禁物だ。

両車のWLTCモード平均燃費はステップワゴンが19.8km/L(e:HEVスパーダ プレミアムライン)、デリカは全グレード12.6km/Lとなる。大きな燃費差に加えて1クラス上の排気量区分になるデリカの維持費はやや高めだが、燃料単価が安い軽油であるためランニングコスト差はそれほど大きくない。

ホンダ ステップワゴン e:HEV スパーダ プレミアムライン ブラックエディション
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン+モーター
排気量=1993cc
最高出力=145ps/6200rpm
最大トルク=175Nm/3500rpm
トランスミッション=単速
駆動方式=2WD(FF)

三菱 デリカ D:5 ブラックエディション
エンジン形式=直列4気筒ディーゼルターボエンジン
排気量=2267cc
最高出力=145ps/3500rpm
最大トルク=380Nm/2000rpm
トランスミッション=8速AT
駆動方式=4WD

上質感のステップワゴンと特別感が特徴のデリカD:5

2025年5月の改良で追加されたステップワゴンの「e:HEV スパーダ プレミアムライン ブラックエディション」の価格は440万6600円、2024年11月に登場したデリカの特別仕様車「ブラックエディション」は479万9300円だ。どちらも装備を充実させ、内外装にブラックの特別加飾を加えた最高額のグレードとなる。

ステップワゴンの価格はライバルのミニバンに比べて高めだが、デリカはさらに高い。両車のスタートプライスを比べてもステップワゴンの334万8400円(AIR ガソリングレード)に対し、デリカは415万6900円(Mグレード)だ。デリカの価格が高い理由は、駆動系を含めたオフロード向けの装備によるところが大きい。

ステップワゴンの価格の高さは、細部の入念な仕上げが反映されているためだろう。機能性や利便性ではトヨタ ノアや日産 セレナなどのライバルに及ばない部分もあるが、シャシーセッティングや全体の質感、車内の雰囲気といった細かな点に目を向ければステップワゴンの作り込みは群を抜いている。

両車は国産ミニバンのなかでもとくに際立った個性を持つ2台だ。ステップワゴンはデリカにはない卓越したオンロード性能と上質感が特徴であり、デリカには、ステップワゴンより広い3列目シートと唯一無二の特別感が備わっている。用途や雰囲気の好みに従って選べば後悔はしないはずだ。

車両本体価格