192kHz/32bitにアップコンバートして再生する贅沢さ

試聴モデルはケンウッドの彩速ナビ「MDV-M911HDF」。CD/DVDスロットを残す希少な存在であることも、オーディオへの傾注具合を想像させる。注目はハイレゾの中でもハイエンドの192kHz/24bitの再生に対応している点。CD音源でさえ44.1kHz/16bitなので、その情報量の差は6.5倍。また、このシステムではCDやアナログのラジオを含むすべての音源を192kHz/32bitにアップコンバートして再生しているのだ。組み合わされるスピーカーは最新のビクタースタジオ監修モデル「KFC-XS175」。サブウーファーは「KSC-SW12EQ」を装備。

KENWOOD『KFC-XS175S』の実勢価格は3万9700円(税込)。ツイーターとスーパーツイーターは別体のコアキシャルタイプ。
KENWOOD『KSC-SW12EQ』の実勢価格は2万5960円(税込)。A4サイズよりちょっと小さい大きさなので、設置場所も自由だ。

印象的なのは、尖ったりこれ見よがしのシャープな部分のない自然なサウンド。そして、どこからどんな音が出ているのか、という定位の明確さだ。定位はセッティングによる部分も大きいが、加えてサウンドのクリアさが如実に現れる部分でもある。

音の豊かさを対峙できる希少なシステムを実感

聞き込んでいくと、音の要素の多さが際立っていることがわかる。大きな音の影にある小さな楽器の息遣いも明確だ。その実は、アーティストの伝えたい音楽に真摯に向き合っているということであり、マスターサウンドをそのまま車内に伝えるという強い意志の表れなのだ。

そのあたりは、レコードを円盤状にしてこの世に送り込んだビクターと1960年代よりTRIO(トリオ)として音響の発展を牽引してきたケンウッドの思想がしっかりと継承されている。1980年代の音楽を改めて聴いてみると、「こんな音が入っていたのだ」と驚いたり聞き慣れた音楽であっても、ボーカルの吐息や舌遣いの生々しさ、楽器のよりリアルな質感に改めて気がつくことも少なくなかった。

このサウンドへの心酔ぶりは、まさにハイエンドカーオーディオに対峙している気分。決して外側からは見えない「音の良さ」をしっかりと堪能することができた。

オーディオに特化した画面にすることも可能。ハイエンドなホームオーディオのようなUVメーターやピークメーターとジャケットのコンビ、周波数別表示などが選べる。
細かいサウンドセッティングが可能なのも大きな特徴。リスニング設定では、タイムアライメントによる音場調整が可能だが、さらに任意に距離の調整もできる。