自宅や職場での普通充電だけの運用で不満ナシ
自動車コラムニストと名乗っているが、根っこ部分はただのクルマ好き&新しもの好きな筆者。初代リーフを手放してから数年、人生2代目のEV(電気自動車)としてお迎えしたのがフィアット500eオープンだ。
EVの静粛性を、オープンボディ(実際は大きなキャンバストップ的だが)で味わいたいというのが、このクルマを選んだ理由。もちろん、500eのヘリテージを全力でアピールするファニーでキュートなルックスも決め手となった。

一方、EVに興味があればご存知のように、フィアット500eはCHAdeMO急速充電を利用するのに、コードレス掃除機ばりの巨大なアダプターが必要であるし、急速充電器との相性問題もある。急速充電を前提とするユーザーにとっては、最初に選択肢から外れるモデルといえるかもしれない。
しかし、筆者の環境では自宅と職場のいずれも普通充電に対応している。そうであれば、EV専門用語で「基礎充電」と呼ばれる普通充電のみで問題なく運用できると思い、フィアット500eに決めることに躊躇はなかった。
納車から3か月で1600kmほど走行したが、急速充電を使いたいと思ったことはない。東京都との神奈川県の狭間のあたりからアクアラインを通って千葉県に渡り、木更津を超えたサーキットまで余裕で往復できるくらいに航続性能があるのだから、日常的に不満を覚えることはない。
2か所の基礎充電に対応する充電レベル調整がうれしい

そ複数の基礎充電ポイントを確保しているという筆者の使用環境において、普通充電の受入性能を5段階に任意に調整できる、フィアット500eの「充電レベル」調整機能は非常に便利に使えている。
上記の画像は、中間のレベル3としているものだが、バッテリー充電率87%の状態で「満充電の完了予測時間」は最小1時間2分、最大4時間16分と表示されている。以下にレベルごとの完了予測時間を並べてみよう。
レベル1:最小3時間6分、最大6時間
レベル2:最小1時間33分、最大6時間
レベル3:最小1時間2分/最大4時間16分
レベル4:最小46分、最大3時間13分
レベル5:最小37分、最大2時間34分
普通充電の能力が、それぞれのレベルで何kWに相当するのか明確にいえないのは申し訳ないところだが、レベル5では充電率13%の電力量(カタログ値の42kWhから単純計算すると5.5kWh相当)を最速37分で充電できる計算となる。これは欧州の普通充電11kWを想定していると捉えるのが妥当だ。
レベル1は、5.5kWh相当を充電するのに3時間以上かかることになる。単純計算すると、1.8kW程度の普通充電を想定したレベルといえる。同様に計算すると、筆者が自宅で使っている6kW普通充電の性能を引き出すには、レベル4以上に設定しておくべきと理解できる。
現実的に自宅の6kW普通充電器を使うときにはレベル5に設定している。
筆者の運用環境において、充電レベルを固定にしておくのは問題が起きてしまう。先に答えをいってしまうと職場ではレベル1もしくはレベル2に設定して利用している。
なぜなら、従量電灯契約における契約容量(アンペア数)がそれぞれで異なっているからだ。
自宅は従量電灯C・70A、職場は従量電灯B・30Aの契約

自宅についてはエアコンフル稼働&EV充電(6kW)の負荷を考慮して従量電灯C・70Aという一般家庭向けを超えた(?)契約をしているが、職場については従量電灯B・30Aという常識的な電力契約となっている。
職場では、3kWの普通充電を利用しているが、30Aという契約において、目いっぱい充電しているときに、エアコンと電子レンジの両方を使うと、30Aを超えてしまうようで、ブレーカーが落ちてしまうこともある。
そこで、普通充電中に気兼ねなく家電を使うべく、職場にいるときはフィアット500eの充電レベルをレベル1にするといったカタチで活用している。公共交通機関やバイクを使って出かけるときはレベル3に切り替えて充電することもあるが、基本的には「自宅はレベル5、職場はレベル1」と単純化して運用しているのが現状だ。
今後、複所の基礎充電スポットを確保するEVユーザーは増えるだろう。そのとき、筆者のように契約容量が異なるケースは当たり前にあり得るだろう。そうした、ちょっと先のEV運用を考えると、フィアット500eのような充電レベルの調整は、本当にユーザーが求める機能となるかもしれない。
100%満充電にしないのも筆者の流儀

フィアット500eの駆動用バッテリーは、カタログスペックで42kWhという総電力量で、いまどきのEVとしては小さめだが、それでもレベル1でカラカラの状態から満充電まで持っていくには丸一日以上かかるだろう。
ただ、そうした充電をすることは筆者の想定にはない。普通充電は駐車場に停めている間に、つないでおくだけで手間はないから、バッテリー充電率が30%を切ったら充電するようにしている。
さらに、バッテリーの劣化を考慮して、遠出する予定がない限り100%まで充電することもない。おおむね30%から80%までの充電になるよう、充電の終了時刻をセットするようにしている。80%も充電されていれば、メーター表示で200km、実際の航続距離はもう少し余裕があるから実用上の不満もないのだ。
ところで、気温が上がってくるとエアコン(冷房)が消費する電力もバカにならない。次回は、史上最高気温が予想される、この夏を過ごして、冷房がどのくらい航続距離に悪影響を及ぼすのかレポートしたいと思う。お楽しみに!
