新型A6シリーズはスポーツバックとアバントのみ

昨今はSUVの大流行もあり、これまでプレミアムクラスで主力であったセダンもそのラインナップを減らしている。新型A6シリーズでもセダンベースのようでありながら、ボディは5ドアハッチバック(4ドアクーペ)の「スポーツバック」と、ステーションワゴンの「アバント」という構成になった。

A6スポーツバックe-tronパフォーマンス。
A6スポーツバックe-tronパフォーマンス。
マトリクスLEDヘッドライトは45個のLEDを使用。点灯パターンを8種類から選べるデジタルライトシグネチャーもオプションで用意。
サイドの黒いガーニッシュは、フロアに配置されたバッテリーをイメージしたもの。
デジタルOLEDリヤライトもフロント同様にデジタルライトシグネチャーを設定。さらにエンブレムが点灯するイルミネーションリングはアウディ初の試み。

ボディサイズはスポーツバックが全長4930mm×全幅1925mm×全高1470mm(エアサス仕様)、ホイールベース2950mmというプレミアムアッパーミドルクラスらしい堂々としたサイズ。アバントは全長4930mm×全幅1925mm×全高1510mm(エアサス仕様)、ホイールベース2950mmと、全高以外はスポーツバックと変わらない。

A6アバントe-tronパフォーマンス。
A6アバントe-tronパフォーマンス。
デジタルOLEDリヤライトによるデジタルライトシグネチャーとイルミネーションリング。アウディのエンブレムが赤く光っている。

A6 e-tronシリーズは、アウディがポルシェと共同開発した、スポーティでハイパフォーマンスなEV用プラットフォーム「PPE (プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を採用。アウディではQ6 e-tronシリーズに次ぐ2番目の採用だが、PPE採用モデルとして初めてのフラットフロアコンセプトモデルでもある。

未来感溢れるインテリアとインターフェース

大型ディスプレイによりメーターまわりからセンターコンソールまでひと続きになったインストゥルメントパネルに加え、助手席側にもディスプレイを配置してダッシュボードのほとんどがディスプレイになったコクピットは先進感に溢れた「デジタルステージ」。

デジタルステージはドライバーに向けてやや湾曲している。

メーターは11.9インチのアウディバーチャルコックピット、センターは14.5インチMMIタッチディスプレイ、助手席側は10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイという構成。大画面も然ることながら、助手席でもインフォテインメント系が操作可能なのだ。さらに、オプションでフロントウインドウに各種情報(速度、標識、ナビなど)を表示するヘッドアップディスプレイも用意されている。

バーチャルコックピットとヘッドアップディスプレイ。
助手席側は10.9インチMMIパッセンジャーディスプレイ。

そして、鏡ではなくカメラによる映像を映し出すバーチャルエクステリアミラーもオプションとして用意されている。雨や鏡面の曇りなどとは無縁のクリアな画像により、安全確認がしやすくなる。

 バーチャルエクステリアミラーの表示部はドア上部前端に配置される。写真は運転席側(右側)。
助手席側。ドアを閉めていると、このように見える。カメラとディスプレイの位置の関係で窓の視界が広く感じられる。
バーチャルエクステリアミラーのカメラ部分。位置はドアミラーと同じだが、ミラーよりは小さく空力性能に貢献する。
バーチャルエクステリアミラーなしのコックピット。
ノーマルミラーにディスプレイなし。

また、ルーフのほぼ全体に広がるスマートパノラマガラスルーフは、電圧をかけることによってガラスルーフを透明状態にするポリマー分散型液晶 (PLDC) 技術により、 ルーフ上部にあるボタン操作により、9つのセクションごとに 透明と不透明の選択が可能になっているのが面白い。

スマートパノラマガラスルーフ(透明)
スマートパノラマガラスルーフ(不透明)
透明と不透明のストライプ。
スマートパノラマガラスルーフの切り替え。

先進的な機能やインターフェースに対し、シートやラゲッジルームはオーソドックスな印象。一方で、エンジンを持たないEVだけに、ボンネットの下はカバーに覆われており、充電ケーブルを収納するトランクスペースが用意されていた。

A6スポーツバックe-tronパフォーマンスのフロントシート。
A6スポーツバックe-tronパフォーマンスのリヤシート。
A6アバントe-tronパフォーマンスのフロントシート。
A6アバントe-tronパフォーマンスのリヤシート。
A6スポーツバックe-tronパフォーマンスのラゲッジルーム。リヤシートは4対2対4分割可倒式で、容量は502L〜1330L。
A6アバントe-tronパフォーマンスのラゲッジルーム。容量が502L〜1422と、通常時はスポーツバックと同じ数値なのが意外。
フロントボンネットの下はカバーに覆われており、27Lのトランク(フランク)が用意される。
フロントトランクには充電ケーブルが収納されていいた。
給電口は左右リヤフェンダー。左が急速充電。
右が普通充電。

先進のパワートレインとエアロダイナミクスで
ハイパフォーマンスと省燃費を両立

エクステリアデザインはもちろんのこと、EVならではのフラットなアンダーボディ、アダプティブエアサスペンション、バーチャルエクステリアミラー(オプション)など、エアロダイナミクスを追求したボディは、スポーツバックで0.21、アバントでも0.24という驚きのCd値を達成しており、アウディ史上最高の数値となっている。

歴代アウディのエポックメイキングな空力モデル。

パワートレインは全車電動で、A6 e-tronが1モーターのRWD、スポーツモデルのS6 e-tronが前後2モーターのAWD「クワトロ」という設定だ。
A6 e-tronはPSM210-200リヤアクスルが280kW・580Nmを発揮し、0-100km/h加速5.4秒と最高速度210km/hを実現。

A6 e-tronのアバント(左)とスポーツバック(右)。

S6 e-tronでは、同様のリヤアクスルに加えPSM210-100フロントアクスルが140kW・275Nmを発揮。システム最高出力は405kWとなり、0-100km/h加速は3.9秒、最高速度240km/hに達する。

S6 e-tronのスポーツバック(左)とアバント(右)

新型A6のe-tronは最初のe-tronから約20%軽量化されており、優れた空力性能と合わせて抜群の電費を実現。100kWhの800Vバッテリーと合わせて、WLTCモードで706km(S6アバントe-tron)〜769km(A6スポーツバックe-tronパフォーマンス)という航続距離を達成。さらに、オプションのレンジプラスパッケージなら846kmという、国内最高峰(アウディ調べ)の航続距離となる。

A6 e-tronシリーズの航続距離と電力消費率。
レンジプラスパッケージの場合。

この航続距離の実現は回生ブレーキの稼働率と効率の向上の効果も大きい。ブレーキングにおける約95%の状況に対応し、最大220kWが回生されるという。ワンペダルドライブに加え、パドルシフトによる手動減速でも最大効率でエネルギー回生が行なわれ、自然なドライブフィールと回生効率を両立している。

歴代e-tronモデルのCHAdeMO対応出力と航続距離。
最新e-tronモデルのCHAdeMO対応出力と航続距離。

アウディは充電拠点の充実も進めてきており、2024年のアウディ・チャージングハブ紀尾井町や芝公園、東名高速厚木インターそばのアウディ・チャージングステーションなど、ポルシェやVWなども含めたPCA(プレミアム・チャージング・アライアンス)急速充電器を全国に395基設置している。このアライアンスが拡大していけば、さらに充実した充電環境が実現するだろう。

太陽光パネルで発電した電力を用いて、150kWの急速充電を実現する「アウディチャージングステーション厚木」

アウディは電動化に意欲的なメーカーのひとつだが、その取り組みは車両の開発だけにとどまらない。電気自動車(EV)の活用に欠かせない充電拠点の拡充にも力を注いでいる。4月には「アウディチャージングステーション厚木」を開設。アウディ車のみならず、すべてのEVユーザーに門戸が開かれているのが実にうれしい。

充電がくつろぎのひと時に…「e-tronラウンジ」を備えたアウディチャージングハブ芝公園に注目

アウディが展開する「Audi charging hub(アウディチャージングハブ)」は、特に都市部において「自宅で充電できない」「充電する場所がない」「充電にかかる時間が長い」といった課題の解決にひと役買うための急速充電施設だ。国内2拠点目として4月から運営が開始されている「アウディチャージングハブ芝公園」は、充電中にラウンジでゆっくりとくつろぐことのできるプレミアムな施設となっている。

ラインナップと価格

S6スポーツバックe-tron(左)とA6アバントe-tronパフォーマンス(右)。

前述のとおり、新型A6 e-tronシリーズはスポーツバックとアバントをラインナップ。標準モデルのA6 e-tronには「パフォーマンス」と上位グレードの「Sライン」があり、さらに、スポーツモデルとしてS6 e-tronが用意されている。

S6スポーツバックe-tron。発表会場にはS6アバントe-tronは用意されていなかった。

価格は以下の表のとおりだが、EVの補助金の対象となるため、A6スポーツバックe-tronパフォーマンスで68万8000円、それ以外のモデルで52万8000円が補助金の一例となる。

A6 e-tron価格表

同じドイツ系プレミアムアッパーミドルEVとしては、A6 e-tronシリーズはBMW i5およびi5ツーリングとライバル関係となるだろう。ただし、BMWがセダンなのに対し、アウディはハッチバックという違いがあるが、ノーマルとハイパフォーマンスモデルというモデル構成も同様。ただし、価格的にはBMW i5系よりもA6 e-tronの方がやや安いようだ。

発表会でのA6スポーツバックe-tronパフォーマンスの入場。