ワイドに昂るラリーウェポン。

若き整備士が魅せるGTI-Rの新たな進化形!

日産が主にヨーロッパ市場向けに展開していたコンパクト・ハッチバックのパルサー。中でも4世代目にあたるN14型に設定されたGTI-Rは、WRCの参戦車両として開発されたホットモデルとして知られている。

横置きされるSR20DET型直列4気筒ターボには4連スロットルが備わり、ノーマルでも230psを発揮。駆動系にはフルタイム4WDのアテーサを採用して、高いトラクション性能を備えている。


BNR32を所有するクルマ好きのお父さんに影響され、カーガイに育ったという柴田さん。専門学校時代の友人から教わり、海外の情報にもアンテナを立てるようになった。ちなみに、ガレージ福井の当時物バンパーとリヤウイングは「一生かけても探します!」とのことなので、もし譲っていただける方がいたらX(@kyo_wakifestJP)までご連絡を。

試しに中古車サイトで検索すると、本稿執筆時点では全国に6台のみ在庫車がヒットするレア車だが、そんなことお構いなしとオリジナルのワイドフェンダーまで作ってしまったのが柴田さん。27歳と若く、同年代の友人からは「このクルマ、何?」と聞かれるのが常と笑顔で話すナイスガイだ。

クルマ購入の適齢期に差し掛かった頃、偶然街ですれ違ったパルサーGTI-Rに衝撃を受けた柴田さん。ガレージ福井(現フェニックスパワー)のデパーチャーマフラーを付けたその個体の後ろ姿が忘れられず中古車の購入を決意するが、なんと後日その街ですれ違ったGTI-Rのオーナーさんと知り合うことができたのだとか。その人から憧れのマフラーも譲り受け、愛車に移植しているというから縁とは不思議なものである。

クルマ好きが高じて整備士になった柴田さんは、ほとんどの作業を自分で行なう傍ら、海外から発信されるパルサー情報も抜け目なくチェック。アメリカの専門誌スーパーストリートに掲載されたワイドボディのパルサーGTI-Rに感銘を受け「自分も他にはないワイドボディを作ろう!」と決めたそうだ。

そこで、愛知県豊川市のボディショップ、A・BASEにワンオフフェンダーの製作を依頼。ブリスター形状でありながら、純正っぽく見えることを要件として、片側45mmワイドのオリジナルフェンダーを具現化してもらった。

「和製ランチアデルタといいますか、やっぱりラリーカーの佇まいが好きなので、WRCっぽくもあるけど、最初からこうなっていたようにも見える、というのを狙って作っていただきました。当時、ガレージ福井が製作した前置きインタークーラー前提のフロントバンパーとリヤウイングもずっと探していまして、本当はそれらとコンプリートするのが夢なんです」。

旧車向けラインのボルクレーシングTE37Vは、本来ブロンズが欲しかったのだが既に生産を終了済み。それで仕方なくガンメタを購入したのだが、ある時ふと思い立って自分でポリッシュしてみることにしたそうだ。4本全てやるのはかなり大変だったそうだが、周囲からの反響も大きく、やって良かったと満足。タイヤはトーヨーのプロクセスR888R。フロントブレーキはD2レーシングのアルミ鍛造4ポットキャリパーと286φのスリットベンチローターの組み合わせだ。

現状ノーマルのフロント回りだが、柴田さんの希望はガレージ福井のフロントバンパーで前置きインタークーラー化を実現すること。当時ガレージ福井が製作したGTI-Rはインタークーラーを前に移設した後、オイルクーラーを上に設置する作りだったので、ボンネットのエアスクープもそのまま活用できる。

OMPのステアリングとワークスベルのステアリングチルトアップシステムを備えて、ラリーの雰囲気を演出。シフトノブはアメリカのRenstallモータースポーツがBMW向けに展開しているアルミ削り出し品だ。ネジアダプターを使って幅広い車種に装着することができる。フルバケットシートはアメリカCORBEAU(コルビュー)のFX1プロ。

サイトウロールケージ製のボルト留めロールケージは柴田さんが自ら装着。GTI-Rも標準は5人乗りだが、リヤシートや内装は取り外し、塗装も自分で行なった。

SR20DETは現状ノーマルを維持。整備士だけに、購入後すぐに状態をチェックするため一度下ろしているが、幸い致命的な不備はなく、シール類の交換などで済んでいるそうだ。純正の4連スロットルも備わり、快調そのもの。

WeKFestジャパンには2022年から連続でエントリーしているが、2023年にはベスト・ハッチバックのアワードを獲得。もちろん、ショーで評価されるのも嬉しいが、「クルマは普通に使えることを重視していて、サーキットも走ります。ちゃんと走れて、ショーに出しても格好良いというのが理想ですね」とのこと。

これから先はエンジンのチューニングにも取り掛かりたいそうだが、目下のプランはハブの5穴化。流用できる部品も当たりを付けてあるそうで、GT-Rサイズのホイールに履き替え、ベイビーゴジラの個性をさらに主張していく構えだ。

PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

「100カ所以上の穴を塞ぎ、魂を注いだ・・・」宝石のように美しい超高回転型FC3S、爆誕!