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今日は何の日?■簡易ハイブリッドのセレナS-HYBRID追加
2012(平成24)年8月1日、日産自動車は人気のミニバン「セレナ」に、新たに簡易ハイブリッド搭載の「セレナS-HYBRID」を追加した。S-HYBRIDは、大容量のオルタネーターと鉛バッテリーの2個使いによって、減速エネルギー回生量を増大させ、その電力を電装部品に使うことで燃費を向上させるシステムである。

1991年に誕生したセレナ、3代目でミニバン販売トップに成長

日産のファミリーミニバンの原点である初代セレナ「バネット・セレナ」は、1991年に誕生した。従来の商用車ベースの「バネット」を刷新し、長いホイールベースによって広い室内空間と自由度の高いシートレイアウトが特徴だった。
1999年に初のモデルチェンジで2代目となったセレナは、FRからFFに生まれ変わって室内空間が拡大。さらに、ミニバン初の両側スライドドアを装備して利便性も高まって人気を集めた。

2005年に2回目のモデルチェンジで登場した3代目セレナは、大きなサイドウインドウと広い開口のスライドドアを装備して、よりファミリーが楽しめるミニバンをアピール。人気はさらに上昇し、2007年にはホンダ「ステップワゴン」やトヨタ「ヴォクシー/ノア」を抑えて、5ナンバーミニバントップの座に君臨した。
使い勝手と居住性に加えて環境性能も意識した4代目セレナ

2010年11月に4代目に移行。“ECO Simple(エコシンプル)”をコンセプトに、環境性能と利便性を追求し、低床プラットフォームの採用により、5ナンバーサイズを維持しながら先代以上の広い室内空間が実現された。
スタイリングは、シュプールラインと呼ばれた前席サイドウインドウが下げられたデザインが踏襲され、ワンタッチオート両側スライドドアや多彩なシートアレンジ、アラウンドビューモニターも設定され、使い勝手の良さも大きな魅力だった。

エンジンは、先代に搭載されていた2.0L直4 DOHCエンジンを直噴化して、最高出力147ps/最大トルク21.4kgmを発揮。トランスミッションは、先代と同じエレクトニックCVTが組み合わされた。また、安全面では衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報(LDW)などをパッケージ化した“エマージェンシーブレーキパッケージ”が採用されるなど、先進的な予防安全技術も採用された。
4代目の販売も好調、発売直後の2011年にはミニバン販売台数でトップをキープした。
S-HYBRID搭載で燃費を改善
2012年8月のこの日にセレナに簡易的なハイブリッドであるS-HYBRID(スマートシンプルハイブリッド)搭載モデルが追加された。

S-HYBRIDは、オルタネーターの電気容量を従来の150Aから200Aに増強し、減速時のエネルギー回生量を増やし、それを蓄えるために2個目の鉛バッテリー(サブバッテリー)をエンジンルームに追加することで実現された。

減速エネルギーを多く回収し、メインバッテリーでエンジンの始動などをまかない、サブバッテリーは各種電装品に電力を供給する。より大きな減速エネルギーを回収できれば、その分燃費は良化する。また、回生エネルギーでオルタネーターをモーターとして使い、僅かな(1ps程度)のパワーアシストもできるが、発進時ではなく限られた条件の加速時に行なう。

さらにセレナ S-HYBRIDでは、ヘッドランプのブルーインナーレンズや高輝度LEDリヤコンビネーションランプ、クリアタイプのLEDハイマウントストップランプを採用し、マルチグラフィックアッパーメーターにS-HYBRID専用表示を加えるなど、内外装でもセレナの魅力を高めた。


燃費は、従来の14.2km/L(JC08モード)から15.2km/Lへと約7%向上。車両価格は、2WDのベースグレードが238.455万円に設定された。同等のベース車がないので、価格アップ分は分からないが、コストアップは基本的には大容量オルタネーターと1個の鉛電池分なので、それほど大きくないことが予想される。
セレナS-HYBRIDは、発売1ヶ月で1.2万台を受注し、セレナの90%を占める好調な販売で滑り出した。
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S-HYBRIDに近いシステムとしては、2012年にスズキの「ワゴンR」に採用された“エネチャージ”がある。これも大容量のオルタネーターを使って、リチウムイオン電池を付加して減速エネルギー回収の増大を図ったシステムである。モーターアシストの機能はほとんどなく、S-HYBRIDと同様に、現在のマイルドハイブリッドの初期型と位置付けられる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

