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今日は何の日?■大きな燃料タンクが特徴のゴリラ
1978(昭和53)年8月2日、ホンダは個性的な原付バイクの動物シリーズ第3弾「ゴリラ」を発表(発売は翌日)した。可愛く扱いやすい「モンキー」に始まり、第2弾「ダックス」に続いたゴリラは、大きな燃料タンクを装備して目的地まで自走してレジャーを楽しむ、モンキーよりも幅広い用途に使えるタフなミニバイクである。

レジャー用のミニバイクの先駆けとなったモンキー

1960年後半、レジャーバイクに注力していたホンダが最初に市場に投入したのが、現在も世界中に多くのファンを持つ原付バイク「モンキー」である。その原型は、ホンダが経営していた遊園地“多摩テック”の遊具として開発された5インチのホイールを履いた小さな可愛いバイクだ。

これをベースに、1963年に小さくて楽しいレジャーバイクとして「CZ100」が輸出モデルとしてデビュー。海外で人気となったことから、1967年から国内で「モンキー(Z50M)」とネーミングされて販売が始まった。
モンキーは、構造が簡単な超小型・軽量、さらに分解組立が簡単なことが特徴の原付バイクで、エンジンはスーパーカブシリーズ用の最高出力2.6ps/最大トルク0.31kgmを発揮する49㏄空冷単気筒OHV 4ストロークを搭載。変速機構は、3速MT(自動遠心クラッチ)が組み合わされた。
価格は6.3万円で、現在の価値では約48万円に相当する高額だったが、その後進化しながら世界的なロングセラーとなった。
モンキーに続いた胴長で可愛いフォルムのダックス
原付ミニバイク「ダックス」は、モンキーに続くかたちで1969年に誕生した。当初はフロントまわりを外して車載することも可能なモンキーに近いコンセプトだったが、その後の人気を決定づけたのが、ユニークなT字型のプレスバックボーンフレームの採用だった。

エンジンは、4.5ps/0.37kgmの49cc空冷単筒4ストロークOHCで、ミッションは自動遠心クラッチ付きの3速。クルマのトランクなどに搭載してレジャーに出かけることも想定され、当初ハンドルは折り畳み式で、フロントまわりも取り外し可能だった。
通常の原付バイクとは大きく違う胴長のフォルムと、犬のダックスフンドにちなんだペットネームがファンの心をつかみ、ダックスもまたモンキーに続いて世界的なヒットモデルとなった。価格は、スタンダードST50を6.6万円に設定、現在の価値で約23万円に相当する。
その後、ダックスも多彩なバリエーションを展開しながら人気のロングセラーへと成長した。
モンキー、ダックス、そして第3弾ゴリラ登場
そして1978年8月のこの日、動物車名シリーズ第3弾のミニバイク「ゴリラ」が誕生した。エンジン、車体ともにモンキーをベースにして、アップマフラーにブロックタイヤ、アップフェンダーなどオフロードを意識したバイクに生まれ変わった。

エンジンは、モンキー同様スーパーカブで使用されていた信頼性の高い2.6ps/0.31kgmを発揮する49㏄空冷単気筒OHV 4ストローク単気筒。当時3速の自動遠心クラッチだったモンキーに対して、ゴリラはマニュアルクラッチの4速トランスミッションを採用。可愛いミニバイクだが、機能面は本格的なバイクと同様のメカニズムを持っていた。

また燃料タンク容量は、5.0Lのモンキーに対して、ゴリラは9.0Lに増大され遠乗りも可能に。さらに前後にキャリアを装備しているので、ミニバイクながら毎日の通勤・通学からツーリング、レジャーまでカバーできる幅広い用途に対応できるのが特徴だった。
価格は10.8万円(同時期のモンキーは10.0万円)に設定され、現在の価値では約24万円に相当する。ゴリラはモンキー、ダックス同様人気バイクとなり、1978年から1988年まで10年間販売。その間に進化を続けた。
一度は国内販売を中断するも、その後アウトドアブームの波に乗って1998年に復活。フロントキャリアがなくなったものの、初期型から2007年の最終モデルまでデザインはほぼ継承された。

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原付50ccでは近年の排ガス規制対応が厳しいことから、モンキー、ダックス、ゴリラの3モデルとも一旦国内販売は休止となった。しかし、排気量を125ccに拡大して原付2種となった「モンキー125」は2018年、「ダックス125」は2022年に復活を果たしている。ゴリラも近々「ゴリラ125」が発売されるという噂があるようなので、期待して待っているファンも多いだろう。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

