現代の技術で“あの頃”を具現化!

オーナーの理想とプロの技術が融合した熟成のレストモッド

アフターパーツもセットアップのノウハウも、今ほど豊富でなかった90年代。当時と違い、今ではチューニングもスタイリングも幅広いアプローチで楽しめる時代になったが、経年劣化によるベース車両のコンディション不安が悩みの種となっているのも事実だ。

そんなジレンマを吹き飛ばすように注目を集めているのが、「レストア&モディファイ」で現代的な進化を与える“レストモッド”という手法。まさにその好例と言えるのが、今回紹介するフェニックスパワー製作のFD3Sである。

この車両は「若い頃にできなかったチューニングやカスタムを今こそ実現し、もう一度FD3Sを楽しみたい」というオーナーの想いに応えるべく製作されたもの。ただのレストアでもチューニングカーでもなく、理想を形にするための“現代流レストモッド”として仕上げられている。

「オーナーが最も重視していたのは“当時の雰囲気を壊さずに、オリジナリティを持たせた進化”でした。作業自体はスムーズでしたが、さりげないアップデートには神経を使いましたね。特に苦労したのは、希望するフロントタワーバーがボンネットダクトに干渉してしまったこと。後端を持ち上げて逃がす案はNGだったため、裏側をミリ単位で削って対応しました」と語るのは、メイン作業を担当した京都店の仲辻さん。

完成したマシンは、オーナーのイメージとフェニックスパワーのノウハウが融合した洗練の一台。中でも注目すべきは、ブランドミックスによって構成されたスタイリングだ。

引っ張りタイヤを使わず、19インチのBBS・RI-D(F:9.0Jプラス42/R:10.5Jプラス15)とサイドウォールの立ったアドバンネオバAD09(F:255/30R19/R:295/30R19)でチューニングカーらしい力強さを演出。必要最小限のフェンダー加工と自然なキャンバーでバランス良く仕上げている。

最大の見せ場であるエンジンルームには、TD06-20RXタービンをセットしたVマウント仕様の430psユニットが収まる。幸運にもコンディションの良いベースを入手できたため、エンジン本体はノーマルをキープ。あえて一気に仕上げず、今後のポート加工など“育てる余白”を残しているのもポイントだ。

優れた放熱効果とともにフロントセクションの躍動感を高めるRE雨宮のADフード9だが、大型ダクトゆえにオートエクゼのタワーバーと干渉してしまい、そのままではボンネットが閉められない。違和感のない仕上がりとなっているが、ボンネット裏を現物合わせで削り込んでフィッティングさせた苦心作だ。

廃盤アイテムとなっているが、理想の実現に外せなかったというガナドールのエアロミラー。入手困難なレアアイテムをオーナーが探し出し、FD3Sのスタイリッシュさに磨きを掛けた。

インテリアも黒基調としつつ、純正パネルを水圧転写でカーボン化してレーシーにアクセント付け。コンディション管理に欠かせない追加メーターは、シンプルに情報を集約できるアドバンスFDをロールケージにマウントしている。

運転席はホールド性重視でRS-GS、助手席は快適性重視でSR-6をチョイスしつつ、質感の高いカムイブラックで統一感を引き出す。ロールケージは6点式でリヤシートも備えた。

フロア下やエンジンルームには赤がアクセントを効かせるオートエクゼの補強パーツを展開。サイレンサーとテールに美しいグラデーションがあしらわれたチタンマフラーもレーシーだ。

アーム類をピロボール化してリニアさを引き出した足回りには、アラゴスタの車高調タイプSを装備。ブレーキシステムはボディカラーに合わせてブラック仕上げとしたエンドレス製で強化する。

当時の雰囲気と最新のパーツが融合した正常進化型のレストモッド。オリジナルの世界観を崩さず、スタイリングも走りも高次元で成立させたこのFD3Sは、REチューンの新たな方向性として、大いに参考にしたくなる1台だ。

●取材協力:フェニックスパワー 福井店:福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店:京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157

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