連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

VANQUISH ZAGATO(2016)

600PSにチューンナップされた5.9リッターV12エンジンを搭載

創業100周年を迎えたのを契機に「V12ヴァンテージ ザガート」「ヴァルカン」とスペシャライズドモデルを次々と送り出してきたアストンマーティンが、2016年のコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステの会場で発表したのが「ヴァンキッシュ ザガート コンセプト」だ。

これは「V12ヴァンテージ ザガート」に続き、マレク・ライヒマン率いるゲイドンのデザインセンターとイタリアのカロッツェリア、ザガートとのコラボレーションで生まれたもので、基本的なコンセプトと設計をゲイドンが担当し、ザガートがそれに応じてスタイリングを行っている。

ベースとなったのはヴァンキッシュだが、573PSの5.9リッターV12エンジンを600PSへとチューンナップ。マッシブなフェンダー、ダブルバブルのルーフ、Zの文字を連想させるリヤクォーターウインドウなど、ザガートらしいデザイン処理が施されたボディパネルは、オールカーボンファイバー製とされた。またヴァルカンで採用されたLEDブレードテクノロジーや、One-77に似たウイング型のサイドミラーなど、これまでのスペシャライズドモデルから受け継がれたディテールが散りばめられているのも特徴といえる。

さらなるバリエーションの拡充も

一方、2+2レイアウトのインテリアデザインは基本的にヴァンキッシュと変わらないものの、“Z”の文字がエンボス加工されたシートレザー、ヘリンボーン・カーボンファイバーとアルマイト処理された暗色ブロンズを奢ったセンターコンソールなど、Q byアストンマーティンの手によるハイクオリティな専用仕上げになっている。

ヴィラ・デステの1ヵ月後には、コンセプトカーのままの姿で99台の限定生産を行うことを正式に発表。さらに8月にアメリカで行われたペブルビーチ・コンクール・デレガンスでは、「ヴァンキッシュS ヴォランテ」をベースとしたオープントップの「ヴァンキッシュ ザガート ヴォランテ」が発表され、こちらも99台の限定生産が発表されている。

いずれもすぐ完売になる人気ぶりを博したが、面白いのはこれまでのザガートシリーズとは異なり、さらなるバリエーションの拡充が図られたことで、1年後となる2017年8月のアメリカのモントレー・カーウィークでは、2シーターオープンの「ヴァンキッシュ ザガート スピードスター」と、2シーターワゴンの「ヴァンキッシュ ザガート シューティングブレーク」が発表された。

このうちスピードスターは、幌やハードトップを持たない完全オープントップ仕様とされ、運転席の背後に2つのヘッドフェアリングを備えた大型のカウルを装着。一方のシューティングブレークは、既出のクーペのスタイルを踏襲しながらも、リヤエンドに続く長いルーフラインをもったスタイルへとリデザイン。電動式のテールゲートをもつラゲッジスペースに専用のラゲッジバッグを装備するほか、ルーフにはコクピットを照らすガラスインレイが設けられている。

ビスポークモデルの持つ高い可能性

それぞれスピードスターは28台、シューティングブレークは99台の限定生産とされ、2018年からデリバリーを開始。販売価格は1億円近いと噂されたが、発表前に完売となり、ビスポークモデルの持つ可能性の高さを証明する結果となった。

余談だが「ヴァンキッシュ ザガート クーペ」は2020年にトミカからミニカーとして発売。50年に及ぶトミカの歴史において初めて製品化されたアストンマーティンとなったことでも話題を呼んだ。

DBSにくらべて56kgほどの軽量化を実現した2代目「ヴァンキッシュ」。

量産アストン初のフルカーボンボディを採用した2代目「ヴァンキッシュ」【アストンマーティンアーカイブ】

DBSが生産終了した2012年に登場した新たなるフラッグシップが2代目「ヴァンキッシュ」だ。最大のトピックは、アストンマーティン量産車としては初採用となるフルカーボンファイバー製のボディを採用したこと。進化型の「ヴァンキッシュS」も含めた7年あまりのモデルライフを解説する。

2012年に発売された「V12ザガート」。

超希少車「V12ザガート」の正体はアグレッシブなデザインのV12ヴァンテージ【アストンマーティンアーカイブ】

「DB4GTザガート」「V8ヴァンテージ ザガート」「V8ザガート ヴォランテ」「DB7ザガート」「DB AR1」と散発的に続けられてきたイタリアのカロッツェリア「ザガート」とのコラボレーション。その流れに沿って、2011年のヴィラ・デステ・コンコルソ・デレガンツァで久々に披露したのが「V12ザガート」だ。

連載 GENROQ アストンマーティンアーカイブ

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