ワイド化が導いた機能美の結晶

攻めの姿勢を極める2台のS15の到達点

S14が3ナンバー化され、大柄なボディが不評だったこともあり、S15はホイールベースをそのままにボディサイズを再び5ナンバーに収めて登場した。

今回紹介するフルステージ製作の2台は、いずれもブリスターフェンダーを備え、心臓部は共に2.2L化+GTタービン仕様で400馬力オーバーを発揮しているが、ワイドボディ化に至るまでのアプローチはまったく異なるものだった。

まずは、白と黒のモノトーンコントラストが印象的な谷本さんのS15だ。走りとクルマ弄りを楽しむため、初めての愛車にS15を迎え入れた谷本さんは、ブーストアップ仕様でストリートを楽しんでいた。だがイベントで見かけたブラックイリュージョンのブリスターボディに一目惚れし、前後片側40mmのワイド化を決意した。当初はスタイル重視で向き合っていたという。

「やりたいことはたくさんありましたが、当時は学生だったのでワイド化後は進化が停滞しました。社会人になってからはスタイルに見合う速さを引き出そうと少しずつチューニングを進め、サーキット走行を始めてからはエンジンだけでなく、足回りや空力も含めトータルでバランスを整えました」と語る。

オーバーホール時に2.2L化されたSR20DETはGTIII-RSタービンと組み合わせて409psを発揮。エンジン製作のタイミングを利用し、切れ角確保のためのサイクルフェンダーやワイヤータックも自ら施した。

迫力あるボディに負けない重厚な足元には、ボルクレーシングTE37SLの限定モデル2012リミテッドを装着。カナードやフロントフェンダー後方のカーボンパーツと好バランスだ。

エンジンルーム同様にインパネ周りもシンプルに洗練。なお、ミッションは2.2L化後にニスモ製6速MTが壊れたため、Z33純正6速MTにアップデートしている。

ボディ補強やワイドボディに映えるレーシーなイメージを狙い、4点式ロールケージはガゼット止めや追加バーで強化。SNSなどで情報収集し、取り付けや溶接作業も自ら行っている。

一方、BNR34のベイサイドブルーでオールペンされた山中さんのS15は、21年の歳月をかけて速さを研ぎ澄ましたハイチューンドだ。

中回転域のトルクを重視したエンジンは、2.2L×GTII-7460タービンで440psを発揮。純正6速MTの強度不安に対しては、S14ベースのクロス5速MTを組み合わせていたが、オーバーホール時にZ33純正6速MTに換装した。

ワイド化のきっかけとなったフロントバンパーは、センターの開口部をインタークーラーに合わせて拡大。さらにインテークダクトを追加し、左右の開口部にはオイルクーラーを設置。放熱性を高めるエアロボンネットやアンダーパネルと連動して、走行風を的確にコントロールする仕様となっている。

前後265サイズのアドバンA050を装着するが、コンパウンドはGSではなくMを選択。タイムよりも周回性能を重視していることが伺える。ベイサイドブルーのボディに合わせたブレーキ周りもアクセントになっている。

現在はサーキット中心の使用だが、インテリアの軽量化は一切していない。愛用していたブリッドのセミバケットシートはヘタリをDIYでリフレッシュし、助手席に移設している。

異なるアプローチでワイド化に挑んだ両車だが、不思議と雰囲気は似通っている。これは、両車ともS15チューンを得意とするフルステージが手掛けてきたこともあるが、「FRスポーツを楽しむ」という目標を共有していたからこそ、機能美が際立つ姿となったのだろう。

●問い合わせ:フルステージ 大阪府羽曳野市広瀬110-3 TEL:072-950-0777

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