荷室の広さや使い勝手を優先 乗り味や操縦安定性は規格外

スーパーハイト系軽自動車のスズキ・スペーシア一族には、税金面でメリットがある4ナンバーの、2名乗車が基本となる(定員は4名)軽商用車のスペーシアベースがある。しかしただの軽商用車ではない。

エクステリア

水平なビードが刻まれたリヤクオーターパネルを備え、いかにも商用車らしい雰囲気。ホイールはいずれも14インチだが、「XF」がアルミ、「GF」がスチールと棲み分ける。最小回転半径は4.4m。

先代スペーシア(乗用車)をベースに、先代カスタムの顔を与え、先代スペーシアギアの撥水シート表皮やルーフレール(「XF」)、ワゴンRスマイル用の乗用車用タイヤ、専用エクステリアのブラックパール仕上げによるエクステリアパーツを採用。リヤクオーターウインドウはリブ付きのパネルで埋められ、独自性と軽商用車と言うよりマルチクロスオーバー軽と呼べる雰囲気を醸し出している。搭載されるパワーユニットは52PS/60Nmの自然吸気のみ。駆動方式はFFとフルタイム4WDだ。

乗降性

シートヒーターも完備する前席まわりは先代スペーシアと変わらず。しかし後席は、軽商用車らしく広さ最小限かつコンパクトに畳めてアレンジ自在の簡易シート仕立てとなる。そのぶん、ラゲッジルームの広さや使い勝手が優先されるのだ。なお、最大積載量は軽商用車で一般的な350㎏ではなく200㎏。これは市場調査に基づくものと説明され、乗り心地面のメリットをもたらす。

インストルメントパネル

先代スペーシアがベースのため、インパネも一世代前のデザイン。カラーをグレーイッシュブルーで統一し、道具っぽさが感じられる一方、オートエアコンなど装備類は充実。

そんなスペーシアベース最大の特徴はラゲッジルームにある。まずはマルチボードを標準装備していること。上/中/下段にセットでき、上段固定用アタッチメント、固定用ネットまで標準装備する。そのマルチボードを下段にセットし(ボード下の収納スペースの高さ160㎜)、前席の背もたれをほぼ水平に倒せば、マルチボードとつながるフルフラットフロアが出現。その全長は実測で1740㎜に達する。つまり身長174㎝以下の人なら、真っすぐに横になれるベッドスペースになり、純正アクセサリーのリラックスクッションやウインドウ全周を覆うジャストサイズのプライバシーシェードを使えばスペーシアベースの車内を車中泊も可能な完全なるプライベートスペースに仕立てられるのだ。

居住性

室内高の余裕から、寝ていても天井が高く開放感があり、それは車内をお座敷化しても同様だ。前席のシート表皮はスペーシアギアの撥水タイプで樹脂製の荷室フロアとともに汚れや水気に強く、スペーシアベースのアウトドア適性を高めている。また、マルチボードを上段にセットし(ボード下の収納スペースの高さ約435㎜)、後席を格納すれば、マルチボードがテーブルに。格納した後席部分が後ろ向きのふたり掛けの椅子となり、窓際のテーブル席が出現する。バックドアを開ければひさし付きのオープンテラス席としても使え、ノートパソコンで仕事をするためのワークスペースとしてもぴったり。純正アクセサリーとして1500W対応の外部電源ユニットも用意され、自宅の駐車場にひと部屋増設したような使い方もできるから楽しい!!

うれしい装備

マルチボードを上/中/下3段階のうちの下段にセットし、前席の背もたれを後ろ向きに倒すと、車中泊に適したフラットモードに変身する。
月間販売台数       480台(24年7月~12月平均値)
現行型発表    22年8月(一部仕様変更 23年11月)
WLTCモード燃費  21.2㎞/ℓ※FF車

ラゲッジルーム

スペーシアベースの走りは乗り心地、操縦安定性でも乗用軽の先代スペーシアと変わるところはなく、軽商用車としては圧倒的に快適かつ静かに走る。ACCも備わることから、一般ユーザーのホビーユース、アウトドアフィールドを目指すようなロングドライブにも、自然吸気エンジンのみの設定ながら、最適/最高だ。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.166「2025年 最新軽自動車のすべて」の再構成です。
http://motorfan-newmodel.com/integration/166/