台湾から世界へ──Mioドライブレコーダーがグローバルで伸びる理由は?
台湾における自動車アクセサリー市場で、いま最も存在感を放つドライブレコーダーが「Mio(ミオ)」である。台湾の街中を走る車両の多くに搭載され、量販店の売り場でも目立つ場所を占めるなど、確かな実績と人気を築いているドライブレコーダーブランドだ。
「Mio(ミオ)」は台湾に本拠を構えるカーエレクトロニクス系のグローバル企業「マイタック(MiTAC)デジタル・テクノロジー」が展開するブランドである。2000年代にはポータブルナビでアジア各地に展開し、2010年代に入ってからはドラレコ市場に本格参入し、現在では台湾国内においてトップクラスのシェアを誇るブランドへと成長した。アメリカやアジアを中心に売上を伸ばしていて、日本でも2024年秋から販売を開始している。
グローバル市場で展開を広げるMioのドライブレコーダーは、どのようにして開発されているのか。その品質や技術にどんなこだわりが込められているのか。今回、その舞台裏を探るべく、台湾・MiTAC本社を訪れ、直接取材する機会を得た。

自社開発の技術力と、こだわりの品質

Mioの製品が支持を集めている背景には、「単なる価格勝負に陥らない高品質なモノづくり」がある。そのキモになるのが、桃園市のMiTAC本社に設けられた自社の研究開発施設だ。ここでは、新製品のハード・ソフト両面の設計が行われており、量産前にはあらゆる耐久試験が実施される。特に台湾の厳しい夏季環境(車内温度が60℃を超えることもある)を想定した高温稼働テスト、湿度環境試験、電磁妨害への耐性評価など、地道なテストを繰り返して製品の品質を担保しているという。


このような開発体制は、同価格帯の他ブランドに真似できない特徴だ。実際、Mio製品の多くは3年保証が付帯し、長期使用を前提に設計されている。現地ユーザーの中には、高温多湿という厳しい環境下で「5年以上使ってもトラブルがない」「日中の高温下でも安定動作」と評価する声も多く聞くという、ドラレコの命とも言える「継続記録の信頼性」において優位性を確保している。
今回の取材では、桃園市にあるMiTAC本社を訪問し、同社の製品哲学やMioの開発方針について、経営陣から直接話を聞くことができた。製品開発の中枢にいるトップとして、スティーブ・チャン社長は次のように語っている。
「私たちは、単に安価な製品を大量に作ることではなく、高品質かつ信頼性の高いドライブレコーダーを世界中のユーザーに届けることを最も大切にしています。台湾をはじめアジアや北米市場で評価されてきたこの実績をもとに、日本のお客様にも“安心して長く使える”というMioの価値を実感していただければと思います。
MiTACには自社開発の技術、厳格な品質管理、そしてユーザー視点の製品づくりという三つの強みがあります。私たちは製品の設計段階から、現実の過酷な使用環境を想定したテストを重ね、トラブルの少ない構造を追求してきました。
日本のユーザーは品質に対する要求が非常に高い市場だと認識しています。しかし、だからこそ、我々が大切にしてきた“堅実なモノづくり”の姿勢が受け入れられると信じています。今後も日本のニーズにしっかりと応えながら、Mioブランドをより多くの方々に知っていただけるよう努力していきます」

台湾市場での売れ筋は? カー用品店にはMio専用コーナーも
それでは、実際に現地でのMioの人気はどれぐらいのものなのだろうか? 街に繰り出し自動車用品店を取材してみると、大手カー用品店には専用コーナーが大きく設けられ、Mioの存在がいかに市場に根づいているかがよくわかる。
かなり目立つ売り場には、高性能な上位モデルからエントリーモデルまで多数のラインナップがされていて、価格帯も3000元台(約1万5000円)から1万2000元(約6万円)ほどまで幅広く、用途やニーズに応じて選べる体制が整っている。
店舗スタッフによれば「Mioは価格帯も広く、性能も高いので“迷ったらMio”という客が多い」とのこと。

新しモノ好きの傾向がある台湾ドライバーには、新型・高額モデルの売れ行きが好調で、とくにミラー型の前後デュアルカメラタイプは、ルームミラーとしても使える利便性に加え、車内インテリアを損なわないデザイン性も評価されており、見た目や質感にこだわるユーザーからの人気も高いという。

話は変わるが、取材中に台湾の道路でよく見かける「慢」という漢字一文字の標識が気になった。「スピードを落として注意せよ」という意味を持つ警告表示だそうだ。日本の「徐行」や「注意」に相当し、交差点や横断歩道、学校付近などに多く設置されている。漢字一文字で端的にドライバーに注意喚起を促すこの標識は、台湾独自の交通文化を象徴する存在でもあり、現地を訪れた日本人ドライバーにとって印象に残りやすい。なんともいえない可愛さを感じてしまうのは私だけ?

技術力で日本製にも対抗する先進モデル群
Mioのドライブレコーダー「MiVue」シリーズは、ドラレコとしての録画性能に加え、安全運転支援機能やスマート連携機能など、先進的な装備が充実している。
たとえば、Mioの最新フラッグシップモデルとして日本でも発表されている「MiVue ER58」は、3カメラ搭載のデジタルミラー一体型ドライブレコーダーである。従来の2カメラモデル(ER40・ER50)と異なり、リヤカメラに外向き+車内向きの2カメラ構成を採用。これにより、前方・後方に加え、車両左右方向の映像も記録可能となり、死角を減らして証拠性を高めている。高輝度・広視野角の液晶モニターを搭載し映像も美しい。

「MiVue ER58」は、Sony STARVIS2センサーを搭載し夜間でも鮮明な映像を記録可能。夜間の暗所でも鮮明な映像が記録できるうえ、HDR(ハイダイナミックレンジ)やWDR(ワイドダイナミックレンジ)処理により、逆光やトンネル出口などの明暗差が大きなシーンでも映像が白飛び・黒潰れすることが少ない。録画品質という点で日本の上位メーカーと肩を並べるどころか、一部では先行しているとすら言える。



また、「MiVue」シリーズは、Wi-Fiによるスマートフォン連携機能を標準で備えており、専用アプリ「MiVue Pro」を通じて多彩な操作が可能となっている。たとえば、録画された映像データをスマートフォンにワイヤレスで転送し、そのままSNSに投稿したり、クラウドにバックアップしたりといった使い方ができる。さらに、ファームウェアのOTA(Over The Air)アップデートや、GPS測速ポイントデータの更新、各種設定変更もアプリ経由で行うことができ、従来のPC接続を前提としたドラレコとは一線を画する利便性を提供している。

その他にも便利な使い方として、設置時にはスマートフォン画面を通じてカメラ映像をリアルタイムで確認できる「ライブビュー」機能を活用することで、フロントガラスへの正確な角度調整も容易に行える。DIYで取り付けを行うユーザーにとっては、特別な工具や経験がなくても最適な位置決めができる点で非常にありがたい機能となっている。
Mioドライブレコーダーのラインナップや詳しい商品情報は、下記の公式HPを御覧いただきたい。
日本市場でも十分に通用するポテンシャル

その品質と性能を考えれば、Mioのドライブレコーダーは日本市場においても十分に競争力を備えた製品群だと言える。耐久性、画質、機能性、価格のバランスにおいて、現行の日本国内ブランド製品と比較しても見劣りしないどころか、むしろ価格帯によっては優位に立つ部分すらある。
特に注目すべきは、近年日本でもニーズが急拡大している「デジタルミラー型ドラレコ」や「高精細録画対応モデル」の分野だ。国内メーカーでもようやく本格投入が始まった領域だが、Mioはすでに複数世代にわたるミラー型モデルを展開しており、ハードウェアの完成度、録画品質、液晶の見やすさ、装着のスマートさといった実用面で一日の長がある。
実際にMioのデジタルミラー型モデルは、画面の反応速度や夜間映像の視認性において非常に優れており、日本市場で求められる「実用性重視」の目線でも十分に通用する完成度だった。Mioはその点においても、長期使用を前提とした設計と品質管理が徹底されており、“壊れにくいドラレコ”を求める層には好適な選択肢となるはずだ。
