動力性能も快適性も最上級EV(SUV)にふさわしい
メルセデス・ベンツEVのSUVタイプで「EQS SUV」をベースとした「メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV」は、マイバッハ・ブランドにふさわしい内外装はもちろん、専用装備の数々や0-100km/h加速4.4秒の瞬足を兼ね備える最上級EVの1台だ。メルセデス・マイバッハ初となるEVの完成度は、想像を遙かに超えていた。

全長5135×全幅2035×全高1725mmという3サイズに、3210mmものロングホイールベースを備えるメルセデス・マイバッハEQS 680 SUVは、巨大なクーペクロスオーバーSUVだ。全高こそ抑えられているものの、マイバッハ専用のフロントグリルやボンネットマスコットによる顔つきは、圧倒的な存在感を抱かせる。

メルセデス・マイバッハは、Sクラス、GLSに設定されていて、EQS 680 SUVが3モデル目になる。なお、日本でもすでにプレス向けにお披露目されているが、メルセデス・マイバッハSLも2025年に登場する予定だ。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUV は、118kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを搭載し、前後モーターにより最高出力658PS(484kW)、最大トルク955Nmを発揮する圧倒的なアウトプット、WLTCモード一充電走行距離640kmを誇る。

ベースのEQS SUVと同様に、後輪操舵のリヤ・アクスルステアリングを備え、巨体にもかかわらず5.1mという驚異的な小回り性能を実現。狭い場所でのすれ違いなどはもちろん気を使うものの、スペースさえあれば幅寄せやUターンなども難なくクリアしてしまう。


マイバッハ専用の内外装デザインはもちろん、特筆すべき装備としては、片側100万個以上のデジタルライト、巨大な22インチアルミホイール、「MBUXリヤエンターテインメントシステム」のほか、「ファーストクラスパッケージ」を選択すれば、後席左右の独立シート(4人乗り)、格納式テーブル、クーラーボックス、専用シャンパングラス格納、温冷機能付カップホルダーなどが装着でき、ショーファードリブンにふさわしい仕立てになる。

メルセデス・マイバッハEQS 680 SUVは、リヤももちろんヒンジ式(スイング式)ドアになるが、電動開閉式の電動コンフォートドアを前後に用意している。

ベースのEQS SUVも十分に静かだが、マイバッハ専用のNVH対策により圧倒的といえるほど静かで快適な車内空間を享受できる。前後のエレクトリックドライブトレインのカプセル化、フロントアクスルのキャリアフレーム、ゴムブッシュを介して分離されたドライブユニットにより騒音と振動を遮断しているが、新東名高速道路の120km/h区間でも耳障りなノイズは皆無、と言えるほど静かだった。とくに後席のNVH対策に念を入れたそうで、走行時は運転席以外に座る機会はなかったが、ショーファードリブン、車両本体価格2790万円という超高級SUVにふさわしい仕立てなのは運転席からも十分に伝わってきた。

さらに、現在のメルセデス・ベンツ(メルセデス・マイバッハ)の中でもトップクラスといえる極上の乗り心地も大きな美点だ。路面のあらゆる凹凸やうねりなどをいなす所作は感動的で、22インチタイヤを履いているとは思えないほど。サスペンションは、連続調整ダンパー「ADS+」を備える「AIRMATIC エアサスペンション」で路面や速度域などの状況を問わずフラットライドを保つ。なお、ドライブモードは「ECO」、「SPORT」、「OFFROAD」、「INDIVIDUAL」のほか、専用の走行モード「MAYBACH」を用意し、「MAYBACH」にすれば後席の乗り心地をさらに引き上げるという。「SPORT」モードにすれば確かに引き締まった乗り味になるものの、基本的には快適な走りに終始する。

好みは人により異なるだろうが、現在のエアサスペンションの中でも極上レベルの乗り味を提供してくれるのは間違いない。なお、最大35mm車高を上げることも可能で、SUVにふさわしいロードクリアランスも確保できる。

また、車両重量3050kgという超ヘビー級にもかかわらず、ダッシュ力も高速域からの加速も強烈だ。最高出力658PS(484kW)、最大トルク955Nmというスペックを公道ですべて解き放つのは無理にしてもその一旦でも凄みが伝わってくる。これだけ重いと止まるのか不安になるが、回生ブレーキに加えて、高い剛性感が得られるメカブレーキのストッピングパワーも十分だ。

試乗車は「ファーストクラスパッケージ」装着車で、VIP向けのゴージャスなリヤシートにふさわしい座り心地と装備を用意している。5人乗り仕様を選べば、ファミリーカーとして使える高級SUV(EV)になる。価格や車両重量が嵩んでも大容量バッテリーと高出力モーターを備えることで、十分に選ぶ価値(もちろんオーナー、ユーザーは選ぶが)があるEVがすでに登場していることを再確認できた。