国沢光宏氏の「デンキチ」号は実質”無給電”で稼働
今回の試乗会では、国沢氏が自前で購入し、八丈島に持ち込んだN-VAN e:「デンキチ」号を試乗する機会も得た。デンキチ号はベーシックグレードの「L4」をベースに、ルーフに発電用のソーラーパネルを増設したものだ。

ソーラーパネルで発電した電気はラゲッジスペースに載せている大型のポータブルバッテリーに蓄電され、そのポータブルパッテリーでクルマのバッテリーを充電するというサイクルになっている。


ただし、ソーラーパネルもポータブルバッテリーも車載しているために勘違いしそうになるが、あくまで太陽光発電の電力をバッテリーに溜めて、その電力をN-VAN e:に充電しているだけなので、走りながら発電してその電力で走行しているものではないのだ。
八丈島に持ち込んでからまだあまり経ってはいないものの、移動距離がある程度限定される島内移動という環境下においては、走行電力はすべて車載ソーラーパネルの太陽光発電で賄われており、一度も充電していないそうだ。

軽自動車の年平均走行距離はソーラーパネルの太陽光発電で賄える
軽自動車の平均走行距離は400km弱/月で、全体の42%が200km未満という調査がある(日本自動車工業会2023年調査)。
国沢氏のデンキチ号に使用しているソーラーパネルの発電量であれば、この軽自動車の平均走行距離であれば十分に賄えるそうだ。

とはいえ、背が高く幅が狭い軽自動車のルーフにソーラーパネルを増設すれば、重心が上がってしまうのは当然。普通に走っている分にはそれほど意識することはないが、風の強い日などは影響の大きさが気になるところだ。

戸建てマイホーム×太陽光発電×軽EVは賢い選択?
実際、軽自動車の利用実態として最も多い通勤や通学、買い物など(日本自動車工業会2023年調査)の日常ユースであれば一度の走行距離はそれほど多くはない。そうしたルーティン的な使用法であれば、家庭での普通充電でも利用にさほど不自由はないだろう。

まして、公共交通機関に頼りづらく、クルマの複数台所有が前提になる地域なら、近距離用のクルマはEVにしておけば、ソーラーパネルと充電設備の設置の初期投資はあるとしても、燃料代が実質ゼロで利用できる点は、この燃料代高騰の時代にあって非常に助かるのではないだろうか。

確かに、EVはまだまだ車両本体価格もエンジン車に比べれば安くはないが、幸い現状では補助金がもありエンジン車との価格差は縮まる。太陽光発電施設導入まで踏まえれば、国と自治体合わせて最大で100万円レベル(乗用登録)の補助を受けられる。

N-VANのエンジン車(※)が154万1100円(L/FF+CVT)〜195万9100円(FUNターボ/FF+CVT)で、N-VAN e:は269万9400円(L4)〜291万9400円(FUN)なので、100万円の補助金があればほぼ同程度になる計算だ。
※N-VAN e:はFFのみなのでFF+CVTモデルで比較
充電設備の設置となると、賃貸やマンションでは望み得ない。事業所を備える事業者か、個人レベルであれば一戸建てのマイホームに限られるだろう。逆に、一戸建てのマイホームであれば、屋根などにソーラーパネルを設置して、その電力を近距離利用用の軽EVに充てればガソリン車を所有するよりも、初期投資分を差し引いても将来的にはプラスになるかもしれない。

EVは、現時点では使用環境が限られるのは否めないが、その環境が上手く当てはめることができるならコストメリットはもちろん、将来的な温暖化対策に貢献することもできるのではないだろうか。
八丈島で軽EVに乗る
試乗では国沢氏のデンキチ号とノーマルのN-VAN e:(「FUN」グレード)をドライブ。メディア対抗の電費トライアルでは、徹底した電費走行により1位を獲得した。信号もほとんどなく、一定のペースでゆったりと走るのは八丈島の風景を楽しむこともできて一石二鳥。アクセル開度や傾斜とペースで如実にバッテリー残量の減り方が変わるのがわかるだけに、電費走行はなかなかに知的なゲームと言えるだろう。

とはいえ、火山島である八丈島は、平地は少なく坂が多い。特に山付近ともなると傾斜もキツく、アクセルも開け気味にならざるを得ない。となると、バッテリーの消費も大きくなってくる。
現状では、八丈島には一般的な急速充電器が無いので、バッテリー容量的にはやや不安を感じることもあったのは気になる点ではある。

登りがあれば下りもあるわけで、下り坂での回生充電に期待するところもあったのが、思ったよりもバッテリー残量は回復しなかった。もう少し、回生による充電が行われるとバッテリー残量の不安も多少は解消されるのでは無いかと感じた。

八丈島は島という限られた空間を移動することになるので、走行距離はあまり伸びない。とはいえ、島内の移動はクルマに限られるため、完全なクルマ社会だ。にも関わらず、当然、燃料は全て運んでこなければならないため、ガソリン代が高い(離島補助はあるにはあるが)。
となると、ソーラーパネル+軽EVは離島でのコミューターとしては可能性のある組み合わせなのでは無いかと感じられた。

壮大で豊かな自然をのんびり満喫できる八丈島

八丈島の魅力は東京から飛行機で1時間ほどで、南国の孤島に渡れることにある。火山島だけに白砂浜こそないが、海水浴やダイビング、釣り、季節によってはホイールウォッチングなどのマリンアクティビティが楽しめる。

北側の八丈富士に南側の東山(三原山)などはトレッキングコースとして自然を満喫できる。そこまで本格的でなくても気軽に散策できるコースもある。何より、光害とは一切無縁の満点の星空は圧巻だ。
火山がもたらす恩恵として、温泉も島の南側に点在しており、広大な太平洋を眺めながらの絶景風呂や野手溢れる混浴温泉が味わえるのも魅力だ。

また、八丈島といえば源為朝や宇喜田秀家が流された土地であり、派手さこそないが縁の史跡も散在しており、歴史浪漫に思いを馳せるのも一興。

そして、くさやや島寿司、椎茸に明日葉にご当地焼酎や八丈島産牛乳のソフトクリームなど、ここでしか味わえない地物グルメも見逃せない。
ホンダの電動スクーター「EM1 e:」にも乗ってみた

今回の試乗会では国沢氏のデンキチ号、N-VAN e:「FUN」に加え、電動原付一種スクーター「EM1 e:」にも乗ることになった。八丈島の南側半周+αのツーリングコースをライドしたインプレッションはこちら。
フォトギャラリー:N-VAN e:×八丈島









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