インテリアのカラーはホワイトとブラックの2色を用意

ホンダ新型プレリュードのインテリアデザインは、クーペとしての走行性能への期待に応えると同時に、スペシャリティスポーツとしての特別感を提供することを目的として開発された。そのため、単にドライバー中心のコクピットにとどまらず、助手席の同乗者も含めた「2人のための特別な時間」を演出することが、基本的な設計方針となっている。

インテリアデザイン担当の東森裕生氏。2008年に入社後、さまざまな車種のインテリアデザイン開発に携わる。途中、アドバンスデザインスタジオを経て、2016年からはインテリアデザインプロジェクトリーダーとしてシティ、アヴァンシア、UR-Vなどを手掛ける。2022年に新型プレリュードのインテリアデザインプロジェクトリーダーに就任した。

この開発思想のもとに掲げられたインテリアデザインコンセプトが「グライディングコクピット」である。クルマの動きを素直に感じられる設計としつつ、ドライバーだけでなく助手席の快適性や共鳴性にも配慮した空間づくりが追求された。構成要素としては、「行く先を誘う視界」「着心地フィット」「直感スポーツHMI」の三つを中心に展開されている。

インテリアのコンセプトは「グライディングコクピット」。それを表現するために、珍しく俯瞰ビューから描かれたスケッチがこちら。

「行く先を誘う視界」では、ドライバーの運転操作に自然に同調するよう、インストルメントパネルは水平基調の骨格を採用。フロントピラー形状も車両感覚をつかみやすく、視界のノイズを最小限に抑える設計となっている。ドアトリムのアッパーラインはフードへと素直に伸びる構成とし、進行方向の視認性を高める工夫がなされている。

一般的なスポーツカーのようにドライバーオリエンテッドではなく、パッセンジャーとの特別な時間が共有できるコクピットにこだわった新型プレリュード。

「着心地フィット」に関しては、ライニングパッドの表皮材選定や、運転席・助手席それぞれのシート構造の違いにより、着座感のパーソナライズ化を図っている。運転席はホールド感を重視し、走行時の集中力を高める仕様とし、助手席は包み込まれるような安心感と快適性に配慮された構造を採用。全体として、広さを強調することなく、身体が自然に収まる空間設計が重視されている。

ハイバックタイプのフロントシート。ヘッドレストにはプレリュードのロゴが型押しされており、上質感を演出する。
シート表皮のメイン部分は特徴的な千鳥格子柄のパーフォレーションがあしらわれている。

「直感スポーツHMI」では、視覚と操作性の両面からスポーティさを表現している。センターコンソールは左右対称の設計とし、中央にギアセレクターを配置。ステアリングホイールはDシェイプデザインで、断面形状にもこだわり、握りやすさを重視した設計とした。パドルシフトには金属素材を使用し、触感の面でもスペシャリティスポーツとしての質感を確保している。メーター表示は視認性を高めたシンプルな構成としつつ、グランドコンセプトをモチーフにした「青空」のグラフィックを背景に用い、機能性とデザイン性を両立させている。

下端部がフラットなDシェイプデザインのステアリングホイール。中央上部には、アルカンターラ表皮のセンターポジションマークを配置。
基本的なメーターの表示状態。左側にパワーメーター、右側にスピードメーターという構成。
「Honda S+」ボタンを押すと左側がタコメーターに切り替わり、視覚的にもスポーティさを演出する。

インテリアのディテール面では、エレクトリックギアセレクターの左右に、パーキングスイッチと走行モード切替スイッチを独立配置。特に「Honda S+」モードについては、専用のスイッチを用意し、ユーザーが能動的に選択する操作性を設計意図として取り込んでいる。また、ステアリングにはアルカンターラ巻きのセンターマーカーを設け、操舵角の把握を容易にする工夫もなされている。

センターコンソールに集約された操作系。中央にエレクトリックギアセレクターを配置し、その左にドライブモードのセレクトスイッチと「Honda S+」のボタンを設けている。右は電動パーキングブレーキの作動スイッチ。

パッケージ面でも実用性が意識されており、乗降性や後席、収納スペースの設計に配慮がなされている。ドライビングポジションの低さに対応して、ドアステップ周辺には手をつきやすく、滑りにくい素材を配置。長いドアによる狭所での乗降性にも配慮し、ドアライニングの下端を削ぎ落とす設計としている。

サイドシルの手をつく部分が少し高くなっていて、滑りにくい梨地シボが施されている。
降車時の足のとおりを考慮して、ドア内張の一部(ドアポケットの下側付近)をえぐっている。

後席は、長いホイールベースとヒップポイントの低さを活かして、クーペとしては十分な足元と頭上空間を確保。後席座面中央にはトレイが設けられており、ルーフ上のアンビエントライトがその上の荷物を照らすなど、実用性と演出性を兼ね備えた装備が与えられている。

新型プレリュードのリヤシート。座面の角度は荷物を保持しやすい約27度に設定。
後席の中央部分はトレーとなっている。夜間はルーフに設けられたアンビエントライトが荷物を照らす。

荷室にはハッチバック式テールゲートを採用し、外観と使い勝手、空力性能のバランスを確保している。シートを倒さずにハードケースがふたつ積載可能で、倒した状態ではソフトケースふたつ、ゴルフバッグまたはサーフボードもふたつずつ積載可能な容量を持つ。純正装着タイヤ4本も収納可能であり、ロードバイク(前輪を外した状態)も搭載できるなど、高い積載性を確保している。

荷室下には開閉式のボードを備え、仕切りや荷物の整理にも対応可能。パーセルカバーは折り畳み収納式で、使用の有無に応じた柔軟な対応が可能である。

ハッチバックスタイルのテールゲートを採用することで、ラゲッジルームの使い勝手は格段に向上した。
フロア下にも薄手の小物が置けるスペースが用意されている。
フロアボードは立てることで、ラゲッジルームの仕切りとしても機能する。

インテリアコーディネーションは2パターンを設定。ひとつ目は、ホワイトとネイビーブルーによるハイコントラスト配色で、ライニングのアイボリー表皮には和紙のようなテクスチャーを持たせているのが特徴だ。

軽快なホワイト×ブルーのコンビネーション。

ふたつ目は、ブラック基調にブルーアクセントを効かせた配色で、ハイブリッドスポーツとしての先進性とスポーティさを強調する構成とされている。

こちらはブルー×ブラックのスポーティなコーディネイト。
シートのカラーがブラックだと、室内もより引き締まった雰囲気となる。

新型プレリュードのインテリア詳細チェック