大改造は必要とせず、小変更の積み重ねで魅力を保っている。

ボルボの主力モデル、XC60の仕様が変更された。いわゆる2026年モデルの登場である。XC60は2017年に国内に導入。同年の『2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤー』を受賞した。授賞理由(一部抜粋)は以下のとおりだ。
「現代のSUVに求められる快適性、機能性、運転の楽しさなどの要素を高い次元でバランスさせた。そして、いかにも北欧デザインと感じさせる美しい内外装と、そのクオリティの高さは見事。さらにボルボらしい安全装備の充実ぶりも素晴らしい。また、プラグインハイブリッドを含む豊富なパワートレーンを用意したことも高く評価した」
国内導入から8年経った現在でもXC60を言い表す表現として充分に通用する。いささかも古びていないのは驚きだが、それはもちろん、要所でアップデートが行なわれているからだ。ただし、細部の変更に留まっているには、デビューの時点で素性が優れていたからだろう。大改造は必要とせず、小変更の積み重ねで魅力を保っている。



ホイールベース:2865mm
2026年モデルを眺めてみると、まずフロントグリルのデザインが変わっていることに気づく。従来は縦桟基調に斜めのラインが入っていたが、最新版はアイアンマークとシンクロした2方向から伸びる斜線が重なり合うデザインになっている。ホイールは骨太で動きのあるデザインに変更されており、LEDテールライトはダークカラーに変更された。全体的に、よりシックに、より重厚感のあるスタイルになったように感じられる。





インテリアはセンターディスプレイの大型化が目を引く。縦型であることに変わりはない。9インチサイズだった従来はセンターコンソールに完全に埋め込まれていたが、2026年モデルは11.2インチサイズになり、まるでタブレットを貼り付けたかのような体裁になった。合わせて、解像度が21%向上。CPUにあたるチップセット(SoC)を新しくすることで、Googleを搭載したインフォテインメントシステムの情報処理速度は2倍以上、グラフィック生成速度は10倍以上に向上している。
ホーム画面はEX30やXC90などと同様の最新インターフェイスに変更された。乗車中はよく手に触れる部分だし、操作するときに注視する部分だけに変更の効果は大きい。初見でも操作しやすいし、すぐに慣れる。画面はきれいで、操作に対する反応は早くストレスを感じない。インフォテインメントシステムはOTA(無線通信を利用したアップデート)により、継続的に進化させていくことが可能だ。

細かな変化点を挙げると、Bowers & Wilkinsハイフィディリティ・オーディオシステムのステンレス製スピーカーメッシュが、EX90と同じ3次元ダブルエッチングデザインに変わっている。高級感が増した印象だ。
ミラーサイクル&VNTターボのエンジン

形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
型式:B420T11
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:11.5
最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm
最大トルク:360Nm/2000-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:プレミアム
燃料タンク:71L
ハードウェアにも手が入っている。B5が搭載するエンジンはガソリンの2.0L直列4気筒直噴ターボであることに変わりはない。変わりはないが、ミラーサイクル化され、燃費が向上している。
諸元表を見ると、2025年モデルの圧縮比は10.5なのに対し、最新の2026年モデルは11.5になっている。可変バルブタイミング機構によって吸気バルブの閉じタイミングを制御し(おそらく早閉じ)、実質的な圧縮比は従来どおりとすることで、膨張比を長くとることができて圧縮比<膨張比とした。この結果、燃焼のエネルギーをより効率良く圧力に変換することができて熱効率が向上。すなわち、燃費が良くなる。
ミラーサイクルの適用に合わせて、ターボチャージャーはタービンの流路を可変制御するバリアブルノズルタービン(VNT、バリアブルタービンジオメトリー=VGTとも表現)に変わっている。レスポンスと出力を両立させるデバイスだ。ミラーサイクルを適用すると燃焼エネルギーの圧力への変換効率が高くなるので排気温度が低くなる。そのため、ノズルに高価な耐熱合金を使わなくてもVNTが適用できるようになるというわけ。
VNTは従来、排気温度が低いディーゼルエンジンへの適用例が多く、ガソリンエンジンではポルシェ911ターボなど高価格帯の機種に限定されていたが、ミラーサイクルとの組み合わせにより安価な材料が使えるようになり一般化してきている。先鞭をつけたのはVW/アウディ(VWゴルフやアウディA5など)で、最近ではアルファロメオ・ジュニアの1.2L直列3気筒ターボがVNTを適用。ボルボもトレンドに乗った格好だ。



250ps(184kW)/5400-5700rpmの最高出力は変化なし。最大トルクは350Nm/1800-4800rpmから360Nm/2000-4500rpmに向上している。ミラーサイクル(高膨張比サイクル)やVNTを適用しただけでなく、8速ATとのマッチングを含めたパワートレーン全体で最適化を図った結果だろうが、WLTCモード燃費は12.2km/Lから12.8km/Lへと約5%向上している。
燃費も向上

高速道路を中心に47.4km走行した時点でトリップコンピューターのデータを確認したところ、平均燃費は15.8km/Lと表示された。WLTCの高速道路モードは15.3km/Lだが、肌感覚的には16km/Lに届きそうとの印象を持った。2025年モデルのWLTC高速モードは14.5km/Lだったので、こちらもやはり約5%向上している。ボディサイズ(全長×全幅×全高4710×1900×1660mm)や車重(1900kg)を考えると、良好な燃費性能といえるし、ありがたい進化だ。
仕様変更前も静かでスムースな走りが印象的だったが、2026年モデルも上質な移動空間であることに変わりはない。仕様変更前との差を明確に指摘することはできないが、もっと静かになっているはずである。なぜなら、2026年モデルではAピラーとBピラーに吸音フォームを充填。フロントバルクヘッドに吸音材を追加しているからだ。
最新技術がふんだんに投入されたことにより、XC60は持ち前の魅力に一段と磨きがかかっている。

ボルボXC60 Ultra B5 AWD
全長×全幅×全高:4710mm×1900mm×1660mm
ホイールベース:2865mm
車重:1870kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:直列4気筒DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
型式:B420T11
排気量:1968cc
ボア×ストローク:82.0mm×93.2mm
圧縮比:11.5
最高出力:250ps(184kW)/5400-5700rpm
最大トルク:360Nm/2000-4500rpm
燃料供給:DI
燃料:プレミアム
燃料タンク:71L
モーター:3303型交流同期モーター
最高出力:13.6ps(10kW)/3300rpm
最大トルク:40Nm/2250rpm
トランスミッション:8速AT
燃費:WLTCモード 12.8km/L
市街地モード8.9km/Lkm/L
郊外モード:13.3km/Lkm/L
高速道路:15.3km/L
車両本体価格:879万円


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