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今日は何の日?■最後のカリーナ7代目は原点回帰
1996(平成8)年8月7日、トヨタ「カリーナ」の7代目が発売された。1970年以降順調に人気を獲得していたカリーナだったが、3代目に追加された「カリーナED」の人気によって、本家のセダンの影が薄くなったため、7代目は原点回帰して再びスポーティなセダンをアピールした。

セリカのセダン版として登場した初代カリーナ
カリーナは、1970年12月に主要なシャシー部品やエンジンラインナップをスペシャリティカー「セリカ」と共用化し、絶対的な性能ではセリカに一歩譲るものの、“足のいいやつ”のキャッチコピーが表すように軽快な走りが特徴の、いわばセリカのセダン版という位置付けだった。

スタイリングは、丸型4灯式ヘッドライトの内側2個を分割したフロントグリルを装備した、当時流行のロングノーズ&ショートデッキのセミファストバックを採用。まず2ドア/4ドアセダンが発売され、1972年にはハードトップが追加された。

パワートレインは、最高出力86psを発揮する1.4L直4 OHV、100psの1.6直4 SOHC、同ツインキャブ仕様105psの3種エンジンと4速/5速MTおよび2速/3速ATの組み合わせ、駆動方式はFR。翌1971年には、2ドアセダンに115psの1.6L直4 DOHCツインキャブ仕様エンジンを搭載したトップグレード「1600GT」が追加された。


カリーナは、特に派手さは好まないが、性能的にはレベル以上を求めるユーザーから人気を獲得してヒットモデルとなった。その後、1977年に2代目、1981年に3代目、1984年にはFFに変更された4代目へと進化した。

クーペのようなハードトップのカリーナED登場
1985年に登場したカリーナEDは、実質的には3代目カリーナクーペの後継であり、プラットフォームはFFに代わった4代目セリカと共用化し、セリカの兄弟車という位置づけだった。

“4ドアでありながら、クーペのフォルム”のキャッチコピーでデビューしたカリーナED。ファストバックの3ドアハッチバックのセリカに対して、カリーナEDはトヨタ初のセンターピラーレスの4ドアハードトップを採用。4ドアながら車高は、カリーナ・セダンより55mmも低く、セリカより15mm高いだけという、4ドア車としては世界で最も低い1310mmの車高だった。
パワートレインは、最高出力105ps&115psの1.8L直4 SOHC、160psの2.0L直4 DOHCの2種エンジンと、4速ATおよび5速MTの組み合わせが用意された。
車高が低いため室内空間は4ドアセダンより劣ったが、2ドアクーペよりも使い勝手がよく、何よりもお洒落でスタイリッシュさが魅力で、約4年間で26万台を超える大ヒットモデルとなった。
走りにこだわった最後のカリーナ7代目
カリーナEDがラインナップに加わると、スポーティなカリーナのイメージはカリーナEDに集約され、カリーナ・セダンは大人し目のセダンのイメージに変わってしまい、1992年登場の6代目では象徴的な存在の1600GTが消えてしまった。

7代目が登場した1998年は、セダン人気が低迷し、ミニバンやRVが人気を獲得していた。7代目が目指したのは、原点回帰して“足のいいやつ”、すなわちスポーティな走りだった。エンジンは、燃費に優れたリーンバーンを採用した115psの1.8L直4 DOHC、100psの1.5L直4 DOHCの2種エンジンが搭載された。

さらに走りのカリーナをアピールするため、7代目はファン熱望の声に応えて1600GTを復活させた。1600GTのエンジンは、1気筒あたり吸気3/排気2の5バルブの最高出力165ps/最大トルク16.5kgmを発揮する1.5L直4 DOHCと、5速MTおよび電子制御4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFだが、その走りを秀逸だった。

車両価格は、167.2万円(1.8Lリーンバーン)/179.4万円(1600GT)。当時の大卒初任給は19.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約197万円/211.6万円に相当する。

1600GTだけでなく、標準的なグレードでも軽快で気持ちの良い走りを実現した7代目カリーナだったが、市場のセダン低迷には逆らえず、販売での復活は果たせず、結局カリーナは31年の歴史に幕を下ろした。
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1990年代後半には、一世を風靡したスポーティな高級セダンの“ハイソカー”人気も萎み、大衆セダンに高性能エンジンを搭載したスポーティなセダンの「カローラGT」や日産「サニーVZ-R」、「ブルーバードSSS」も消え去った。カリーナが終焉を迎えたのも市場の変化から見て必然だったようだ。
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