時代の名車探訪・シルビア回、内装編の続き。
今回は運転席まわりの、頭の上から目を向けていく。

※★マークは、当時資料などでの呼称です。

【運転席まわり(つづき)】

★サンバイザー

下げて日差しをカット、支点を軸にサイドにまわし、横方向からの日差しカットできる・・・至って普通の造りで、特に述べるべき点はない。
写真を撮り忘れたが、未使用時に見える面にはチケットなどを収めるポケットが備わっており、これが深めでなかなかいい。
いまならここにお化粧直し用の鏡がつきそうなものだが、Q’sとK’sの助手席側バイザーに備わるのみで、全機種、運転席用にはなし。
バニティミラー(vanity mirror)を辞書で引くと、「洗面ユニット上などについている小さな鏡」「車のサンバイザーについている鏡」とあるが、「vanity」そのものは「(容姿・能力などについての)うぬぼれ、慢心、虚栄心」「無価値、空虚、虚飾」など、なかなかきつい意味がある。
「お化粧」と「虚栄心」、その概念が根底でつながっているような気がする。

サンバイザー。

★ルーム ミラー

天井前側センターからぶら下がっている(あたり前だ)。
これくらいのキャラクターの、これくらいの値段になると防眩機能つきなどあたり前で、最廉価のJ’sも含めて全機種標準で与えられている。

夜間、後続車のライト光がまぶしいとき、ミラー下のつまみを手前に引いて鏡面を上に向けると光が緩和され、眩惑を抑制する。

見ただけではわからないが、実はミラー面のガラスには、上に傾けたのと同じ角度分のテーパーがついており、眩惑光はガラス面に映っているのだ。

防眩ミラー。

★スポット ランプ

Q’sとK’sにつく。
夜間、地図などを見るときに便利なランプだ。
丸レンズなのが旅客機風でかっこいいぞ。
スイッチはシーソー式が手前にあり、運転席用、助手席用ともスイッチ右側押しでONとなる。

スポットランプ。

★ルーム ランプ

天井中央に設置。
写真は助手席側から撮ったもので、すなわちスイッチは前方にある。

スイッチ写真手前側(=助手席側)でON、向こう側(=運転席側)でOFF、中央はドア開閉に応じて点消灯という具合だ。
試してみたが、ドア閉じで減光消灯という機能は特にないようだった。

ルームランプ。

【シート】

★モダンフォルムシート

分類上はハイバックシートで、私には過去大衆車低廉寄りの乗用車やライトバンに用いられていたイメージがあり、実際、いまのアルトやプロボックスなどに残っている。

「初代セリカ」のときに書いたような気がする・・・背もたれが天井までそびえたつようになり、乗員は頭の動きに自由度がなくなり、後席乗員には圧迫感を抱かせるので、ハイバック型に何のいいことがあるのかよくわからないのだが、さすがはスペシャルティのシルビア、徹底した造形力と製造技術で、きっちりしたデザインで仕立て上げた。

ヘッドレスト一体のシートバック、そして座面に至るまで、曲面で包まれた一体成型だから、どこかしら身体に合わないところがあると思っていたら、どっこい、実にフィットする形状であることに驚いた。
いまのクルマは頭部保護とやらで過ぎたサイズのヘッドレストになっており、後頭部を前に押し出し、うつむき気味にさせるものが多いが、このシートにはそのあたりのネガティブはなかったのはえらい!

法規を満たさなければならないのはわかるが、いまのシートは規制もデザインも考えすぎだと思う。

この一体成型はS13の前期に限られ、後期型はヘッドレストが別体のローバック型になった・・・見た目に反して身にフィットする椅子だったが、ちょっとお遊びが過ぎたのかもしれない。

「モダンフォルムシート」と名付けられた前席シート。

●後席シート

背もたれにヘッドレストはないし、シートベルトが2点式なのがいかにも80年代だ。

座面は着座位置をかなりくぼませているので、日常的にひとが座るには適さないが、クルマの性格上、これでいいのだ。
だいたい、旧S12までは後席に3人座らせる5名定員のクルマだったが、このS13から最後のS15までは2名着座の4名定員だ。
定員が何名でもいいのだが、どのみちフル乗車の機会はまれだし、もし私がS13のオーナーだったら、むしろ造りのいい荷物置き場として使うだろう。

この座面のえぐり、大事なものを安定よく置くのにうってつけだと思う。
いまの時期、すいかなんてよさそうだ。
もちろん切る前の丸いやつ。

後席シート。こちらは特に名称はない。背もたれも座面もタイトな空間にきっちり敷き詰められた印象がする。

●アシストグリップ

S13の助手席には、こんなヘンなところにアシストグリップがある。
ソアラにもあったっけ。
取扱説明書には特に使用法の記載はないが、悪路走行時の上半身保持用なら天井サイドに設けるはずだ。
なのにここに置いたなら、むしろ乗降時のアシスト用ということだったのだろう。

助手席側のアシストグリップ。

【ドア内張り】

ごらんあれ!
前から後ろまで、上から下まで、ドアを覆いつくす、安っぽさ皆無の内張りトリムの仕上がりを!
これまたいまのクルマのように、ごちゃごちゃしておらず、シンプルでありながら必要なものだけをちょこんと理路整然に並べている。
それでいて造形に物足りなさがないのだ。
あえていえば間延びして見えるが、これはドアが高さに対して倍近い長さがあるため。
2ドアゆえにこれは致し方ない。

造り込み感の高いドアトリミング。

1.ドアハンドルとロックノブ

ドアハンドルとロックノブを併設。
昔のクルマはドア肩口に上下押しのノブがあったが、こじ開けられる可能性があるため、いつしか埋め込みの回転式がそばに置かれるようになった。

むかしといまの上級寄りのクルマならめっきになるところだが、私見では、この頃はクルマの内外からめっき装飾が減少していたと思う。
このS13もメッキ処理はなく、プラスチックまる出しだが安っぽさは感じないし、そもそもこのインテリアに(外観も)めっきは似合わない。

ドアプルハンドル&ロックノブ。

2.★パワー ウインドー

3つ縦に並ぶいちばん前が、誤操作防止用のロックボタン、次の長いやつが運転席用、短いのが助手席用のパワースイッチ。
いま私が使っている旧ジムニー シエラも同じ配列だが、スイッチを左右に並べてくれりゃあいいものを前後に並べているものだから、右窓を開けたいときでもしょっちゅう助手席窓を開けてしまう。
同じS13オーナーがいただろう。

「開」「閉」とも、この頃の日産車はまあシーソー式に押すタイプ。
運転席用は開側、閉じ側とも強く押し込むとワンタッチのAUTO開閉となる。
エンジンを切った後でも開閉できるタイマーはない。
S12にはあったのに。
ところでいま主流の、スイッチ後端を軸に、「押し」と「引き上げ」で開閉させる方式はマツダの発案で、この頃からしばらくして他社も採り入れるようになる。
閉を開と同じ押し操作なのは、誤操作を考えると確かにあぶない。

パワーウインドウスイッチ。
おんなじ!(旧ジムニーシエラ)

3.ドアプルハンドル

パワーウインドウスイッチのすぐ後ろにはドア閉じの際に使うプルハンドルがある。
棒状のものをひっつかむグリップ型ではなく、長楕円の穴ぼこに親指以外を突っ込んで引くタイプだ。
勝手にもの入れにしてたばこやライターを入れているひとがいますな。
夏場のライターの車内放置は熱気で爆発する危険があるからやめましょう。

それにしても、パワーウインドウスイッチ部も含めたこの黒パネル部分もきれいな仕上がりだ。
コスト削減至上主義の現代では望むべくもない品質感だ。

ドアプルハンドル。

4.ドアポケット

内部に仕切りがあり、2ドアで前後にドアが長いことが活きに活き、そのままポケット長さに表れている。
天地が小さいが、すぐ上のエンバース形状のアームレストがあること、そもそも2ドアの低全高ゆえ、ドア上下寸が短いから致し方なしだ。

ドアポケット。

5.ドアスピーカー

ドアポッケ前方にはスピーカーがある。
このスピーカーについては、次回あたりに述べるつもり。

ドアスピーカー。

今回はちょっと採り上げる項目数が少ないが、ここでおしまい。
いろいろと事情があるのです。
その分、次は多めにあれこれお見せします。
ではまた次回。
ごきげんよう。

【撮影車スペック】

日産シルビア Qs
(E-S13HA型・1988(昭和63)年型・4速AT・ライムグリーンツートン(特別塗装色))

●全長×全幅×全高:4470×1690×1290mm ●ホイールベース:2475mm ●トレッド前/後:1465/1460mm ●最低地上高: 135mm ●車両重量: 1110kg ●乗車定員:4名 ●最高速度: – km/h ●最小回転半径:4.7m ●タイヤサイズ:185/70R14 ●エンジン:CA18DE型・水冷直列4気筒DOHC・縦置き ●総排気量:1809cc ●ボア×ストローク:83.0×83.6mm ●圧縮比:9.5 ●最高出力:135ps/6400rpm ●最大トルク:16.2kgm/5200rpm ●燃料供給装置:ニッサンEGI(ECCS・電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:60L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:186万9000円(当時)