『カースタイリング』編集長が新型プレリュードの内外装デザインを語る
エクステリア:さまざまな要件の中で、よくぞ実現した全高1355mm
新型プレリュードのエクステリアでは、風を感じてその流れを利用して飛行するグライダーのように、力で押し切るのではなく、空気の流れを身体で感じながら、それらと一体になってドライブする感覚をスタイリングでも表現した。


サイドビューではフロントバンパー下方からセンターピラー基部を通り後輪軸上へとウェッジするキャラクターラインと、ボリュームのあるリヤフェンダーから前方のフロントフェンダー、フードへと回り込むボリュームラインがクロスする立体構成で今回の新型プレリュードの走りの世界観を構築している。

またAピラー根元から前方に伸びるフロントフェンダーのピークも内側へ絞り込ませながらヘッドランプの中央を貫いてグリルを構成するラインへとつながらせることで、フロントフェンダーの踏ん張り感を演出している。

もちろん前後のトレッドは可能な限り最大化し、フェンダーギリギリまでタイヤを外側に位置させることで、スポーティなクルマとしてのタイヤの存在感と安定感(車体全体の踏ん張り感)を表現させている。またフロントフェンダー下部のエアアウトレットはドア下部からリヤホイールへと続くが、その形状も実寸以上にホイールが外側へ迫り出して感じるように作られている。
いずれも専用のプラットフォームが用意されない中で、共有するプラットフォーム(P/F)を使いながら巧みな立体造形構成でスポーティカー表現を最大化する工夫をし、最大の効果を得られている。

そのP/F共用で、大変だったのはサイドビューの佇まいだったかもしれない。おそらくシートのポジションも自由にならない中で、ヘッドクリアランスを確保しつつ後部へ流れるラインを構成するのは簡単ではなかったようだ。Aピラーからルーフへ繋がり後方へ流れる一連のラインのピーク位置はやや前寄りになっており、このためベルトラインより上部のキャビンボリュームの重心もやや前寄りに感じられる。それはベルトラインより下のボディ部のボリュームがもつ重心位置とずれているので、全体バランスの中でキャビンはやや前がかりに感じられる。
また、歩行者保護要件を満たすために苦しかった部分だと思われるのがフロントフェンダーのピークの高さで、フェンダーの厚みはこの手のクルマに感じたいスポーティ感をやや損なっているような印象を受けた。
そういった事情がある中で、プレリュードという名前の持つスペシャリティクーペとして持たせたい、余裕感のある伸びやかさ、しなやかさを醸し出すボリュームの流れ、オーセンティックな佇まいを表現するプロポーションの実現は容易ではなかったことが窺える。
しかし、1335mmという全高はよく達成した。まだ筆者は屋外でこの新型プレリュードを見る機会はないが、車道上で他の車たちの中に入れば、本当のこのクルマの佇まいとスポーティさを感じることができるのではないかと思われる。

フロント、リヤの灯火類については最近のカーデザインの流れの中にある意匠であり、歴代を彷彿とさせるプレリュードの記号性は高くない。絞られた前後のボディは4つのタイヤの存在感をしっかりと見せているが、前後のランプ類は、その絞り込みによって狭く感じられてしまうフロントエンドとリヤエンドを幅広く見せる役割を持っている。また、リヤランプの内部はダブルのライン構成で、奥行き感とレイヤー感は透明感もあり美しい。
リヤエンドにはHのエンブレムはなく、最近の流れの中にあるロゴ表現でホンダのBEVカーで表明した「honda」と表記されている。


インテリア:ドライバーとパッセンジャー、ふたりのための魅力的な空間づくり
基本骨格がある中で、インテリア空間に刷新感、変化感を持たせ、本車両の世界観を表現させることが最大のトライだったという。ドライバーオリエンテッドではなく、フロント2座のための室内空間づくりに注力し、いかに前席乗員のふたりに魅力的な室内を提供できるかに集中している。

水平基調のインパネは室内空間の余裕を感じさせ、そして手の届く部分(手で触れる部分)には表皮材で加飾し、2色のダブルスティッチはセンス良くスペシャルな印象を醸し出す。細やかな気遣いのある空間に仕上がっている。
しかし、運転席はスポーツドライビングマインドを忘れていない。別体に見えるメーターバイザーやステアリングのトップに見えるセンターマーカー、パドルシフトもスポーツドライビングの気持ちを上げるようにしっかりと作り込まれている。フィジカルなスイッチ、センターゾーンにまとめられたデジタルなスイッチ類なども綺麗に先進的にデザインされている。
前席シートはドライバー席と助手席ではクッションの形状が異なる。運転席側はサイドサポートを重視し、助手席側はサポートさせながらも乗降のスムーズさにも気を配っている。
リヤシートのスペースはそれなりだ。全体寸法が小さいだけでなく両側面の巨大な張り出しのために、身体を縮めて後席に乗り込んでも頭がその張り出しにぶつかる。車体強度上の必要不可欠なものだと思うが、やはり邪魔ではある。しかしながら、後席乗車を重要視するタイプのクルマではないので問題にはならないだろう。
室内エンターテイメント性はややおとなしいか。センターモニターのサイズも日本車の一般的なサイズであり、必要にして十分ではあるものの、昨今のインフォテインメント力の上がった電動車に代表される新世代のスペシャリティカーの中では控えめに映ってしまうというのは欲張りすぎだろうか。

荷室へはトランクリッドではなくテールゲートを採用しているが、そのラゲッジスペースの広さは素晴らしい。2名分の持ち物であればどのようなシチュエーションだとしてもほぼ問題なくこの車で出かけることが可能だろうし、テールゲートにしたことで荷物の出し入れはしやすく、また荷室床高さも可能な限り低く抑えられている。








