1971年 4代目クラウン
クラウンは没個性が逆に個性という見方もあるが、すでに見てきたように当初はどの代も個性的だった。歴代で一番個性的なのが4代目で、現行チーフデザイナーの評価も高い。この独特な形、正式にはスピンドルシェイプと呼ばれるモノで、今見ても斬新。愛称は「クジラクラウン」だ。技術的にも見どころは多く、後輪ESCや電子制御AT、EFIもいち早く採用した。ただし販売は振るわなかった。



1974年 5代目クラウン
4代目が不振だったこともあって、通常よりも早めのフルモデルチェンジを受けて登場した5代目。デザインも直線基調とした保守的なものへと変更され、人気は復活した。時代は排ガス規制真っ盛りだったが、独自の燃焼技術であるTTC-Cなどの技術でクリアしている。そのほか、車速感応式パワーステアリングや世界初のOD付き4速ATなど、技術的な見どころは多かった。伝統の4ドアハードトップやロイヤルサルーンが登場したのも5代目だ。

1979年 6代目クラウン
先代が前倒しでフルモデルチェンジした反動もあり、6代目は逆に5年ぶりのフルモデルチェンジで登場した。デザインは引き続き直線基調だったが、その顔つきから「鬼クラ」という愛称もあった。セダンやハードトップ、2ドアやワゴン、バンとバリエーションは豊富だった。とくに2ドアはスポーティなイメージで4ドアとは一線を画していた。エンジンはロイヤルサルーン/スーパーサルーンに新たに2.8Lの5M-EU型が搭載された。


1983年 7代目クラウン
このあたりからサルーンとしての保守本流感がさらに強まった。今でも語り継がれる名フレーズである「いつかはクラウン」はこの7代目のもので、高級サルーンへの憧れをうまく表わしていた。技術的には最先端であったコンピュータ制御が大量投入され、さまざまな部分が電子制御化。より快適な乗り味と高い安全性を実現した。またユニークなところではスーパーチャージャー搭載車も用意されていた。ちなみに2ドアハードトップはソアラの登場で廃止されている。

1987年 8代目クラウン
世の中はバブル真っ盛り、日産からはシーマが登場するなど、ハイソカー全盛の時代がやってきた。当然、クラウンにもその波は押し寄せ、CD−ROMによるカーナビ機能付きエレクトロマルチビジョンを採用するなどしたほか、電子制御のエアサスペンションも設定。高級感あふれる走りを実現している。スーパーホワイトのボディカラーももちろん大人気だった。このほか安全面では日本初のトラクションコントロールを搭載したのも注目だ。

1991年 9代目クラウン
それまでのイメージは継承しつつも、ボリューム感を強調したシルエットとなって登場した。ただ、当初は丸みを帯びたリヤまわりが不評で、マイナーチェンジで変更し、テコ入れを行っている。技術的にはトヨタ初となる5速ATを採用するなど、大きく進化した。また4L V8エンジン搭載でセルシオとの間に位置する上級モデル、マジェスタを追加。マジェスタではクラウン初のモノコックボディを採用している。


1995年 10代目クラウン
9代目への反動もあり、絞り込まれたスタイルで登場した。ロイヤルサルーンも含めて、フルモノコックボディへと移行したのはトピックで、エンジンは4種類が用意されていた。21世紀を目前にして安全への意識向上を受けて、高級感に加えて安全装備を充実。VSC(車両安定制御システム)やサイドエアバッグをいち早く採用している。また3Lエンジンには可変バルブタイミングのVVT-iを搭載した。1999年には販売累計400万台を達成。



1999年 11代目クラウン
20世紀最後となったクラウン。時代の多様化は高級車にも波及。長き伝統を誇るがゆえに保守的な部分もあり、そのアイデンティティがゆらいだ感もあったが、マイナーチェンジでのマイルドハイブリッドモデルの登場などのトピックスで、存在感をアピール。またラインアップ的にもスポーティなイメージを強調したアスリートが登場するなど、時代に合わせた進化を遂げている。直噴BEAMS D-4搭載車も設定され、パワーと経済性を両立している。

2003年 12代目クラウン
21世紀を迎えるにあたって大きく手が加えられている。またキャッチフレーズはずばり「ゼロクラウン」で、クラウンとはなにかを見つめ直して登場した。プラットフォームを新開発のものへとチェンジし、エンジンもそれまでの伝統であった直6からV6へと変更。エンジンラインアップも整理され、2.5L/3L/3.5Lの3本立てとし、ATも6速が設定された。またナビはマイチェンで当時先端だったHDD式となるなど、新時代にふさわしい内容へと進化している。

2008年 13代目クラウン
ハイブリッドは11代目でも存在していたが、13代目では本腰を入れ、マイルドハイブリッドから、3.5L直噴エンジン+モーターの本格的ハイブリッドシステムへと変更。FR専用2段変速式リダクション機構付きのシステムにより、類いまれな静粛性を誇った。またハイブリッドにはメーター全面をTFT液晶画面としたファイングラフィックメーターを世界初採用している。



2012年 14代目クラウン
キャッチフレーズは「CROWN ReBORN」。伝統的車種の苦戦、そしてそこからの復活をよく表わしている。基本的には13代目のキャリーオーバーとなる部分が多いものの、ハイブリッド用に最新の直噴エンジンであるD-4Sが登場。直4は久々の復活となった。また、プリクラッシュセーフティシステムなど、安全装備は大きく進化した。ピンクを皮切りに、若草色や空色といった大胆なカラーリングの特別仕様車も話題になった。


2018年 15代目クラウン
さらに未来を見据えて登場した。開発において効率化を図るTNGAに基づいた新型プラットフォームを採用し、エンジン性能を磨き上げるなど走行性能を大きく進化。走行テストをドイツのニュルブルクリンクで実施して、磨きをかけた。車載通信機を搭載し、コネクティッドカーの先駆けでもある。またロイヤル、アスリートといった伝統のグレード名が廃止され、BやS、RSなどアルファベットを使用したものへと変更されている。



2023年 16代目クラウン
クロスオーバーから始まり、先ごろ4車型が勢揃いした現行型クラウン。一時はクラウン自体の廃止も検討されたが、デザインも含めてすべてを一新することで、新しい時代のクラウンとして登場した。グローバルモデルとなり、アメリカでの販売も復活となった。ただボディ形状を変えただけでなく、車種に合わせてパワーユニットなどの内容は異なる。また走行性能では初代から続いてきたFRをやめ(セダンを除く)、FFベースの4WDを採用したことがトピックだ。

自動車誌MOOK『クラウン購入ガイド』より




