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■ワゴンRに採用された次世代低燃費技術

2012(平成24)年8月10日、スズキは同年9月6日に発売予定の5代目「ワゴンR」に搭載する3つの低燃費化技術を明らかにした。新型ワゴンRの開発コンセプトは、“軽ワゴンNo.1の低燃費を実現した新世代エコカー”であり、その核となるのが今回公表した3つの先進技術なのだ。

スズキ・グリーンテクノロジーが採用された「ワゴンR」
スズキ・グリーンテクノロジーが採用された「ワゴンR」

軽のハイトワゴンブームと熾烈な燃費競争

1993年9月にデビューしたワゴンRは、車高を「アルト」より頭ひとつ分(255mm)高くした1680mmとし、さらにホイールベースをクラス最大の2335mmに設定。これにより、従来の軽自動車になかった圧倒的な居住性を実現、軽ハイトワゴンという新たなジャンルを開拓した。

初代「ワゴンR」
1993年にデビュー、ハイトワゴンのパイオニア初代「ワゴンR」

さらに、右側1ドア、左側2ドアの個性的な左右非対称の3ドアで、サイドシルの高さを低くしてフロアとの段差をなくし、シートの背もたれの角度を立てて自然な姿勢での乗降を可能にしたことも大きなメリットだった。

1995年にはインタークーラー(IC)ターボモデルも追加して、ワゴンRは空前の大ヒットモデルとなった。その後他車からも続々とハイトワゴンが登場し、軽市場は2025年現在も続いているハイトワゴンブームが巻き起こったのだ。

ダイハツ「ミライース」
2011年9月にデビューしたダイハツ「ミライース」。低燃費・低価格をアピール

順調に販売台数を伸ばしたワゴンRだが、強力なライバルであるダイハツ「ムーヴ」に加えて、2011年にはホンダ「N-BOX」が登場し販売シェアトップに躍り出た。またダイハツは、2011年に車体の軽量化やアイドルストップ、減速回生などの燃費低減技術「イース・テクノロジー」を採用した「ミライース」を発売して低燃費をアピールした。

ホンダ「N-BOX」
2011年9月にデビューして大ヒットしたホンダ「N-BOX」

このような状況下で、スズキは次世代環境技術“スズキグリーンテクノロジー”をベースに、積極的に低燃費化を加速した。

スズキグリーンテクノロジーの3つのコア技術

5代目「ワゴンR」
2012年のデビューした5代目「ワゴンR」
5代目「ワゴンR」のコクピット
5代目「ワゴンR」のコクピット
「ワゴンR」の乗降性
スズキ・グリーンテクノロジーが採用された「ワゴンR」の乗降性

スズキグリーンテクノロジーを採用した第1弾が5代目ワゴンRであり、開発コンセプトは“軽ワゴンNo.1の低燃費を実現する新世代エコカー”。そのコア技術が、2012年8月のこの日に発表された以下の技術である。

スズキの低燃費技術
エネチャージの構成と作動原理
スズキの低燃費技術
エネチャージの構成

・エネチャージ
通常の約2倍の発電能力がある高出力オルタネーターと、大容量の鉛電池にリチウムイオン電池を付加して効率よく減速エネルギーを回収。これを、必要とされる車体の大部分の電力として使う。さらに走行中のオルタネーター駆動による発電を最小限に抑えることもできるので、エンジンの負荷も減らして燃費を低減する。

スズキの低燃費技術
S-エネチャージの構成と動作原理

・新アイドルストストップシステム
通常のアイドルストップは、停車してからエンジンを停止させるが、新システムでは停車前の減速時に13km/h以下になるとエンジンを自動で停止する。これにより、アイドリングストップの頻度を高め、さらなる低燃費化を進める。

スズキの低燃費技術
 エンジンが止まっても快適さをキープするエコクール

・ECO-COOL(エコクール)
ECO-COOLでは、エアコンユニット内のエバポレーターに内蔵した蓄冷材を、走行中に冷やして凍らせることが可能。そしてアイドリングストップ中は、凍った蓄冷材を通った冷風を送ることで室温の上昇を抑制、快適性を保つとともにエンジンの再始動時期を遅らせて燃費を低減する。

以上の低燃費技術をメインにした5代目ワゴンRは、同年9月6日から発売され、18.8km/L(2WD)/27.8km/L(4WD)と、軽ワゴントップの燃費を達成した。ちなみに標準グレードの価格は、それぞれ110.985万円/122.745万円に設定された。

その後のスズキグリーンテクノロジーの進化

その後、軽の低燃費競争はさらに加速。スズキもさらにグリーンテクノロジーを進化させ、低燃費化と電動化を進めた。

スズキの低燃費技術
K-12CエンジンとマイルドHEV
スズキの低燃費技術
小型で安価なバッテリー

まず、2014年にエネチャージを進化させたマイルドハイブリッドのS-エネチャージを、2014年に同じく5代目ワゴンRの後期型で採用。S-エネチャージは、オルタネーターの代わりにISG(モーター機能付発電機)を使い、リチウムイオン電池の容量も増大。回生できる減速エネルギー量を増やし、ISGのモーター機能によって加速時にエンジン出力をアシストし、またエンジンの再起動も行なう。

スズキの低燃費技術
エネチャージ/左はリチウムイオン電池の電圧特性、右上は3つのシステム間の回生エネルギー量比較。右下は110Aタイプのオルタネーターと1本掛け方式のベルト
スズキの低燃費技術
スズキ・イグニスのS-エネチャージ搭載のエンジンルーム

さらに2016年には、小型ハイトワゴン「ソリオ」に新開発のハイブリッドを搭載。このシステムでは、S-エネチャージのISGに加えて、大出力のモーター/発電機(MGU)と5速AGS(オート・ギヤ・シフト)、100V駆動用リチウムイオン電池を搭載。MGUは、減速時のエネルギー回生をより積極的に行ない、その電力で出力アシストだけでなくEV走行時のモーターとして機能させる。またAGSは、一般的にはAMT(自動MT)と呼ばれ、構造はMTで変速は油圧制御で行う自動トランスミッションである。

このハイブリッドシステムでは、条件が揃えばモーターによるEV走行が車速で60km/h程度まで可能だ。

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2010年以降に起こった熾烈な軽の燃費競争は、メーカーによる燃費不正という問題を引き起こす一端となったが、一方で遅れていた軽自動車の電動化を加速させるというメリットをもたらした。エネチャージは、軽の電動化の最初のステップとなった技術である。

毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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