GACモーターが展示したもう1台のミニバン「M6 PRO」
首都ハノイで開催された「ベトナムオートエキスポ2025」で、三菱自動車以外の唯一の乗用車メーカーとして参加していたのが、中国のGACモーターである。以前には、フラッグシップミニバンである「M8」をご紹介したが、もう1タイプのミニバンを展示していた。

それが「M6 PRO」だ。
M8のすぐ隣に展示されていたが、ダークブルーの落ち着いた色味もあり、正直、あまり関心を持っていなかった。しかし、ショー自体の見どころの少なさもあり、詳細を見ていくと意外と装備が充実したモデルであった。

ボディサイズは、M8と比べるとすっきりしたスタイリングなので、日本ミニバンの主力であるトヨタ・ノア&ヴォクシークラスかなと思ったが、ひと回り大きく見える。

ボディサイズを調べてみると、全長4793mm×全幅1837mm×全高1765mm、ホイールベース2810mmとなっており、最新型ノア&ヴォクシー(全長4695mm×全幅1730mm×全高1895mm、ホイールベース2850mm)と比べ、全長と全幅はひと回り大きいが、意外なことに全高はちょっと低め。

つまり、スポーツカーやセダンのような、ワイド&ローを意識したスタリングなのだ。日本のミドルサイズミニバンと雰囲気が異なるのは、そのため。これは往年のオデッセイのように、ミニバンの広い居住空間と走りの良さの両立を目指しているのだろうか。
エクステリアを見ていくと、フロントマスクもやや顔の位置を低くしており、ノーズの長さも強調することで、視覚的に重心の低さを感じさせているようだ。GAC的走りのミニバンなのかなと思いつつ、ボディサイドを眺めていて気がつたいことがあった。やけにスタイルがすっきりしているのだ。

なんと後席ドア後ろにスライドレールがない。M6 PROは、日本では絶滅していしまった後部ヒンジドア付きミニバンだったのである。M8はスライドドアなので、敢えてのヒンジドアなのだろう。

中国もひと昔前は、セダンニーズが中心だったから、ヒンジドア派も多いのだろうか。はっきりと言えるのは、ヒンジドアの分、3列目シートの空間はゆとりがあることだ。

最上位グレードならではの豪華なインテリア
インテリアを見てみると、最上位グレード「GL」ということもあり、なかなか豪華。シートレイアウトは、2列目をキャプテンシートとした2+2+3の7人乗りだ。シートとトリムは、合皮だがレザーが使われており、触感の良く、シートも肉厚で、座り心地もなかなかのもの。


ダッシュボードとトリムには、ブラックが貴重だが、ダークチェリーのような濃い目のワインドレッドがアクセントカラーに使われており洒落ている。

運転席まわりは、フル液晶メーターパネルを中心に、インフォテイメントシステムと一体感あるデザインに仕上げられており、高級感に溢れるもの。車載機能はタッチスクリーンで設定ができるようだが、エアコンはしっかりと物理スイッチが残されている。

シフトはストロークのある電制式で、「P(パーキング)」ポジションのみボタン操作となる。またパーキングブレーキも電動式だ。

ラゲッジスペースを確認すると、3列シート状態でも324Lと十分な広さを備えるが、3列目シートは回転格納式となっており、収納するとフロアがフラットなり、1100Lまで拡大するという。

パワートレインは1.5L直列4気筒インタークーラーターボ+7速DCTのFF
エンジンルームもチェックしてみると、1.5L直列4気筒ターボエンジンを横置きに搭載。トランスミッションは、7速DCT。カタログでは湿式という点が強調されていたが、おそらく耐久性が高さをアピールするものなのだろう。エンジン性能は、最高出力174ps/5500rpm・最大トルク270Nmを発揮。駆動方式はFFのみとなる。

エンジンルームを覗いていて気が付いた点があった。なんとインタークーラーが水冷式なのだ。日本では、空冷式がメインのため、ちょっと見入ってしまった。M8の2.0Lターボエンジンは、排気量だけでなくトランスミッションに8速ATが組み合わされるなど仕様が異なる。その狙いを知りたくなったが、簡易パンフレットを見ても分からない。スタッフさんはにこやかで対応は良かったが、ベトナム語しか話せないようだったので、断念……。

シンプルな2グレード構成だが、価格以上に大きい装備の差
カタログによると、グレードは展示車の上位グレード「GL」とエントリーグレード「GS」の2種類のみ。GSが6億9900万ドン(約393万円)、GLが7億9900万ドン(約449万円)となる。いずれもパワートレインや動的性能は同様だが、1億ドン(約56万円)という大きな価格差がある。(※1000ドン=5.62円換算)

ただ装備を見比べると、GSだと多くの装備が省かれるので、GLの方がお買い得感があるようだ。ちなみにGLになると、LEDヘッドライト、18インチアルミホイール、レインセンサー、パノラミックサンルーフ、後部プライバシーガラス、8スピーカーシステム、キーレスエントリーシステム、プラズマクラスター、フロントシートヒーター、レザレットシート、本革巻ステアリングなどに加え、ADAS機能も満載となるのだから。



個人的には、プレミアム志向のブランドだけに、ここまで装備差のあるエントリーグレードは不要に思えるのだが……。なにしろADAS機能さえ一切省く徹底ぶりなのだから。おそらく、個人オーナーよりも送迎車などの法人ニーズを狙ったものなのかもしれない。
ボディカラーは、G8同様にクリスタルホワイトとエレガントブラックの2色のみ。あれ?展示車のダークブルーがカタログに無い……なんと、ベトナムプレミアムとなる新色だったようだ。

1000万円越えとなるM8に比べると、かなり現実的なプライスを掲げるM6 PRO。日本だと「価格は良くても、スライドドアじゃ……」と言われそうだが、今、ミニバンニーズが高まる新興国市場では、ヒンジドア付きミニバンがどのように評価されていくのか、とても気になった現地での取材であった。
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