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今日は何の日?

■NSX最終モデルのタイプSが米国で初公開

ホンダ「NSXタイプS」
ホンダ「NSXタイプS」

2021(令和3)年8月12日、ホンダの海外高級車ブランであるアキュラが米国で開催される“モントレー・カーウィーク2021”にNSXタイプS」を初公開し、同時に量産第1号車を8月14日にチャリティ目的でオークションに出品すると発表した。

ホンダ「NSXタイプS」
ホンダ「NSXタイプS」

オールアルミ・モノコックに高性能NAエンジンを搭載したNSX誕生

初代NSXは、ホンダスポーツのフラッグシップとして1990年9月にデビューを飾った。ホンダの技術の粋を集結させた究極のミッドシップ・スーパースポーツである。

初代NSX
1990年にデビューしたミッドシップ・スーパースポーツ「NSX」

NSXの特徴のひとつは、オールアルミボディで軽量化を追求したこと。当時は、部分的にアルミが使われることはあっても、骨格やボディのすべてにアルミを適用したのはNSXが初めてだった。

強度と剛性を維持しながら、加工法や溶接技術の難しいアルミを多用すること自体画期的だった。部位によって5種類のアルミ合金を使い分け、一般的な鋼板ボディに比べて140kg、クルマ全体で200kgの軽量化に成功し、車両重量1350~1390kgいう驚異的な軽量化と高い剛性を両立させたのだ。

初代NSX
1990年にデビューしたミッドシップ・スーパースポーツ「NSX」

エンジンは、ドライバーの背後に3.0L V6 VTECエンジンをミッドシップ搭載。高回転高速出力化のために、エンジンをショートストローク化し、超軽量チタンコンロッドやモリブデン鋼のカムシャフトなどF1エンジン並みの材料を惜しみなく使用し、NA(自然吸気)ながら最高出力280ps/最大トルク30.0kgmを発揮した(※馬力自主規制)。

軽量化ボディに高速高出力エンジンをミッドシップしたNSXは、0→100km/h加速が5速MTで5.0秒(4速ATは6.8秒)、最高速度は270km/hと、他のスーパーカーにも負けない走りと安定した操縦安定性を誇った。

車両価格は、800万~860万円に設定。当時の大卒初任給は17万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計では現在の価値で1082万~1163万円に相当する。これでもポルシェやフェラーリに比べれば随分お得だ。

NSX-タイプR
1992年にデビューした、軽量化で走りを極めたした「NSX-タイプR」

NSXは、デビュー以降も排気量アップや空力改善など改良を重ね、軽量化によって性能向上を達成した「NSXタイプR」や脱着式オープントップの「NSXタイプT」、さらにスポーツ志向を高めた「NSXタイプS」といったモデルが追加されNSXの魅力を高めた。結局初代NSXは、世界中で約1.8万台が販売され、2005年に一旦生産を終えた。

オープンモデル「NSX-タイプT」
1995年にデビューした、オープンモデル「NSX-タイプT」

進化した2代目NSXはハイブリッドモデルに

その後12年の時を経て、2017年2月に2代目NSXが復活。騎士の鎧を彷彿させるようなフロントマスクに、キャビンの背後にパワーユニットを配した直線基調のダイナミックなスタイリングに変貌した。

2代目「NSX」
2017年に日本でデビューした2代目「NSX」。ハイブリッドスポーツへと大変身

最大の特徴は、前輪2基、後輪に1基のモーターと計3つのモーターを使ったハイブリッドモデルになったこと。V6エンジンのミッドシップレイアウトは初代と同じだが、排気量を3.0Lから3.5Lに増大してツインターボを装着した高性能エンジンとし、高効率モーターおよび9速DCTを組み合わせ、フロントには左右独立モーターを組み合わせた“SPORT HYBRID SH-AWD”が採用された。

2代目「NSX」
2017年に日本でデビューした2代目「NSX」。ハイブリッドスポーツへと大変身

その出力は、エンジンが最高出力507ps/最大トルク56.1kgm、ドライブ(後輪)モーターが48ps、前輪のモーターがそれぞれ37psで、システム全体の最高出力はなんと581psに達しモンスター化したのだ。

2代目「NSX」
2017年に日本でデビューした2代目「NSX」。ハイブリッドスポーツへと大変身

車両価格は、2370万円と初代の2倍以上の高額だった。

2代目NSX集大成の最終モデル・タイプS

より精悍なスタイリングとなった「NSXタイプS」

2021年8月のこの日に米国で開催された“モントレー・カーウィーク2021”で、2代目NSXの「NSXタイプS」が初公開された。全世界限定350台限定、日本では9月2日から受付を開始し、2022年7月に30台限定で発売された。

3.5L V6 DOHC ツインターボエンジン構造イメージ
3.5L V6 DOHC ツインターボエンジン構造イメージ

NSXタイプSは、2代目NSXの集大成とし、これまでのNSXを超えるパフォーマンスとデザインを追求。スタイリングは、従来のワイド&ローをより際立たせるアグレッシブなデザインとし、前後バンパーは新デザインを採用し空力性能を向上。インテリアについては、シートのカラーバリエーションを一新するとともに、ヘッドレストにはNSXロゴの刺繍を施して特別感が強調された。

「NSXタイプS」のコクピット
「NSXタイプS」のコクピット
「NSXタイプS」のフロントシート
「NSXタイプS」のフロントシート
2代目「NSX」のハイブリッドシステム
2代目「NSX」のハイブリッドシステム
ホンダ「NSXタイプS」
ホンダ「NSXタイプS」のシャシー構造イメージ

パワートレインは、2代目NSXに搭載のSPORT HYBRID SH-AWDを踏襲しながらも、エンジンの燃焼効率の向上、高耐熱材ターボの採用による過給圧アップ、冷却性能向上など、さらにバッテリー出力と使用可能容量を拡大し、システム全体で最高出力529ps(←507ps)/最大トルク61.2kgm(←56.1kgm)に向上。また、高揚感やドライバーとクルマとの一体感をさらに高めるため、エンジンサウンドのチューニングや、減速時などで瞬時に適切なギアにシフトダウンできるパドルホールド・ダウンシフトがホンダとして初採用された。

ホンダ「NSXタイプS」
ホンダ「NSXタイプS」

NSXの集大成として登場したNSXタイプSはすべてに磨きをかけ、車両価格2794万円で販売された。

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2代目NSXは、NSXタイプSを最終モデルとして、2022年に生産を終了した。ホンダスポーツの象徴的な存在だったNSXの次期車に期待したいところだが、脱エンジン宣言をしているホンダなので、次期車があるとしてもEVになることが予想される。EVで伝統のホンダスポーツをどのように具現化するのか注目だ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

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