エンジンの再始動の仕方が違う

マツダCX-60 XD-HYBRID Trekker(4WD) 車両本体価格:552万7500円 最小回転半径:5.4m

マツダは2024年12月に行なったCX-60の商品改良(販売開始は2025年2月21日)で、特別仕様車「XD-HYBRID Trekkerを追加した。XD-HYBRID Exclusive Sports(エクスクルーシブ・スポーツ)をベースに、自然に溶け込むカラーとしてジルコンサンドメタリックを限定カラーとして設定(他のボディカラーも選択可能)。パノラマサンルーフを標準装備化し、急ブレーキ・事故等の際に2列目や前席への荷物の侵入を防止するパーティションネットを設定した。

全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm ホイールベース:2870mm トレッド:F1640mm/R1645mm 最低地上高:180mm

パワートレーンは3.3L直列6気筒エンジンと8速ATの組み合わせ。縦置きレイアウトで、8速ATの変速機構と発進デバイスである湿式多板クラッチの間に最高出力12kW、最大トルク153Nmを発生する48V駆動のモーターを挟んでいる。リチウムイオンバッテリーの容量は0.33kWhだ。

この48Vマイルドハイブリッドは巡航時にアクセルペダルを戻した際、すなわちコースティング時はクラッチを切ってエンジンを停止させ、モーターで回生を行なう。小さな出力のハイブリッド用モーターではエンジンを再始動させるのに苦しいので、連続位相可変バルブタイミング機構(S-VT)やスロットルの調整で再始動時に最も抵抗が小さくなる位置にピストンを止める制御を採用。さらに、再始動時はS-VTで吸気バルブを遅閉じ側に制御し、圧縮行程の抵抗を低減させている。

マツダが開発した直6ディーゼルターボ
エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTS型(SKYACTIV-D3.3)
排気量:3283cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm
圧縮比:15.2
最高出力:254ps(187kW)/3750pm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:58L
モーター
MR型永久磁石同期モーター
最高出力:12kW(16.3ps)/900rpm
最大トルク:153Nm/200rpm
トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT

これらの制御により、小さな出力のモーターでも大きな出力のモーターを搭載するストロングハイブリッドと同様に、コースティングから加速に転じた際の再始動時に、ハイブリッド用モーターで再始動できるようにした。スターターモーターでエンジンを再始動すると高周波のキュルキュル音が耳に届きがちだが、ハイブリッド用モーターで再始動する場合は感覚的には無音である。信号待ちなどでアイドリングストップした際の再始動時も同様。スターターではなくハイブリッド用モーターで再始動するのが基本で、静かでスムースである。

トレッカーは、従来ハイブリッド用モーターで再始動していた領域をスターターモーターで始動するようにし、燃費向上を図っている。厳しくなる2030年燃費基準を先取りするためである。なぜスターターモーターを使うと燃費が良くなるのか。ハイブリッド用モーターにエンジン再始動の役目を負わせると、いつそのタイミングが来てもいいようにエネルギーをとっておかなくてはならない。すると、本来ならEV走行やアシストに使いたい(そのぶんエンジンの負担が減って燃費が向上する)シーンでモーターが使えなくなる。

スターターモーターに走行中のエンジン再始動を受け持たせると、ハイブリッド用モーターを燃費のための使い方に集中させることができる。基本的には2速〜5速の約40km/h以下の領域で走行しているときのコースティングから加速に転じた際にスターターで始動するという。ただしこの条件を満たしていても、空調設定を維持するためにエアコンがエンジン始動要求を出した場合はハイブリッド用モーターで始動。アクセル操作に関係なくステアリングをある程度切った状況でもハイブリッド用モーターで始動する。また、約40km/h以上の速度域や、停車時のエンジン再始動は従来どおりハイブリッド用モーターが受け持つ。

WLTCモード燃費を見てみると、ベースのエクスクルーシブ・スポーツが20.9km/L(サンルーフ装着車)なのに対し、トレッカーは21.4km/Lで約2%向上している。燃費効果の大きな市街地モードは、エクスクルーシブ・スポーツの17.5km/Lに対してトレッカーは18.7km/Lで、上昇率は約7%だ。これはデカイ。

タイヤサイズ:235/50R20サイズ ブリヂストン ALENZAを履く

522km走って燃費は? 始動音は?

ボディ色はジルコンサンドメタリック

スターターモーターでのエンジン再始動は約40km/h以下の領域なので走行音は低く、スターター始動時に特有のキュルキュル音が耳に届きやすい。燃費が多少悪くなっても静かなハイブリッド用モーターでの再始動がいいという場合には、切り替えができる。12.3インチセンターディスプレイに設定画面を表示させると、一番上に「Mハイブリッドシステム」のメニューが表示される。これを選択すると、「走行中のエンジン静音始動」と表示されるのでコマンダースイッチを押下して□にチェックマークを入れればいい。その際、「モーターのアシストによりエンジンを静かに始動できますが、燃費を低下させる場合があります。設定を有効にしますか?」の確認画面が出る。チェックマークを入れて「有効」にすると、ハイブリッド用モーターで再始動するようになる。

デフォルトではスターターモーターでのエンジン再始動となる。音がするだろうと意識しながらの試乗だったし、車速の比較的低い領域でスターターモーター音が鳴るので、「いま音がした」とわかることが多い。ただし、キュルキュル音ではなくキュル音だ。音が鳴っている時間は極めて短い。それに説明したように、スターターモーターでのエンジン再始動は約40km/h以下に限定されるので、実際の使用シーンでは、キュル音が耳に届く機会はそう多くない。

燃費のためにスターターで再始動しているんだとあらかじめ承知しているので、音がしても、「だよね」と受け流す気分である。理由を承知しているかそうでないかで、受け止め方は変わるだろう。そもそもスターター音がしていることにも気づかず(あるいは気に留めず)、「そうだったの?」という反応を示すユーザーもいるかもしれない。

今回の試乗では522.6km走り、その間の燃費は20.3km/Lだった。6気筒ディーゼルエンジン搭載車の燃費の良さについては2022年のデビュー当時から知っていたつもりだが、具体的な数字を見せつけられると改めて感心する。強みである燃費性能に磨きを掛けたのが、エンジン再始動時の制御に手を入れたトレッカーだ。

マツダCX-60 XD-HYBRID Trekker(4WD)
全長×全幅×全高:4740mm×1890mm×1685mm
ホイールベース:2870mm
車重:1970kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列6気筒DOHCディーゼルターボ
型式:T3-VPTS型(SKYACTIV-D3.3)
排気量:3283cc
ボア×ストローク:86.0mm×94.2 mm
圧縮比:15.2
最高出力:254ps(187kW)/3750pm
最大トルク:550Nm/1500-2400rpm
燃料供給:DI
燃料:軽油
燃料タンク:58L
モーター
MR型永久磁石同期モーター
最高出力:12kW(16.3ps)/900rpm
最大トルク:153Nm/200rpm
トランスミッション:トルクコンバーターレス8AT

燃費:WLTCモード 21.4km/L
 市街地モード18.7km/L
 郊外モード:21.5km/L
 高速道路:22.7km/L
車両本体価格:552万7500円