ちょっとした工夫で気分の安らぐインテリア

前回でおしまいにするつもりだったシルビアの内装編、予定変更で6章めもインテリアを眺めていく。
もの入れやトランクルームを覗いてみよう。
今回のシルビア解説、一体全部で何回になるのやら。

※★マークは、当時資料などでの呼称です。

【室内収納】

もともと小さなキャビンだし、4人乗りといえど2人乗りが主体のクルマだから、室内全体に用意されたもの入れの数は少ない。
だが、ひとつひとつの造り込みは高い。

★布貼グローブボックス

キー付きになっているふたを開くと収容部そのものが下にせり出すボックス型・・・ではあるが、実際には三角柱型の空間になっていて、容量も大きくない。
内部はプラスチックまる出しで植毛処理はないが、内部照明が備わっている。

布貼グローブボックス(開時)。

当時もいまも私が気に入っているのは、ふたに布が貼られていることだ。
計器盤に、部分的に布が貼ってあると安らぎ感が出ると思っている。
日産はこの手法をときおり採り入れ、他にはローレルに例がある。

閉時。計器盤に布の箇所がちょっとあるだけでぐんと雰囲気が変わる。

筆者も前に日産ティーダを使っているとき、計器盤のシルバーパネルに太陽光が反射して困ったので、木目を思わせる茶色い布をそのシルバーパネルと、ついでにパワーウインドウスイッチのベース部に貼ったことがあるが、これだけで室内の雰囲気がガラリと変わったもの。
気分が安らぐのだ。

室内のいい雰囲気を醸すのは、木目パネル(いまは少なくなったが)やカーボン模様、シルバーパネルに限らない。
布張りはもっと積極的に採り入れていいと思う。

S13は、グローブボックスのキーや内部照明は全機種に装備。
布貼りだって、ドアトリムが布でないプラスチック張りのJ’sも含めて全機種に与えられる。

●オーディオ下のもの入れ

前回お見せした、「AM/FM電子チューナー&一体型カセットデッキ(ドルビー&メタル対応)、PROアコースティックサウンドシステム」は、長~い名称の割に1DINサイズだが、その下はもの入れのポケットになっている。
ただしここは1DIN + 1DIN = 2DINのオーディオスペースであり、下段に販社オプションのオーディオを追加するともの入れとして使うことができなくなる。

オーディオ下のポケット。過去にはたばこ、いまならスマートホン置き場の定位置に違いな。ただし販社オプションのオーディオを追加するとふさがる。

★コイン ボッス

むかしの取扱説明書はおおらかでいいものだ。
「コイン ボッス」とある。
たぶん「コインボックス」のことだ。

前回解説した、ドライバーパーソナルベントグリル(右側)の直下にある。
なかなかのサイズで、多くの小銭を置けそうだが、運転席窓からまる見えなのが気がかりだ。
上のベントグリルをシャットするなら、こちらも見えなくなるようにシャットできるようにしてもよかった。

コインボッス。

★大型ドアポケット

第4章「ドア内張り」項でも触れたが、ここでもういちど。

「内部に仕切りがあり、2ドアで前後にドアが長いことが活きに活き、そのままポケット長さに表れている。 天地が小さいが、すぐ上のエンバース形状のアームレストがあること、そもそも2ドアの低全高ゆえ、ドア上下寸が短いからこれも致し方なしだ。」
第4章で書いたことの丸写しだが、自分が書いた文章だからパクっても問題あるまい。

大型ドアポケット。

★シガレット ライター

コンソールボックス(後述)のふた前方、電動ミラースイッチの左にライターがある。

シガレットライター。

いまは12Vのアクセサリー電源に置き換わり、見たことのないひとも多いと思うので使用法を述べておこう。
キースイッチがACCまたはON位置にあるとき、本体を押し込むと先端の電熱線部が熱で赤く染まり、自動で元の位置に飛び出す。
引き出してたばこの先っちょにあてがって火をつけるというすんぽうだ。

これがいまのクルマでは12V電源に変わったわけだが、このライターとて12V電源としても使うことができ、12V電装品を使うことができた。
逆にいまのクルマの12Vソケットにどっかから持ってきたライターを入れても赤熱はしない。
暖めるヒーター機能が奥に備わっていないからだ。

★灰皿

ライターでたばこに火ィつけたら次は灰皿だ。
シフトレバー後ろ、駐車ブレーキレバーの左サイドにある。

横開きのふたで、開けばなかなかの大容量。
私はクルマの灰皿を小銭入れとして使っているが、このシルビア灰皿ならけっこうな貯金ができそうだ。
内部には照明が施され(★アッシュトレイランプ)、これも機種にかかわらず全機種についている。
吸い殻を捨てる際は、ふたごとすっぽり引き抜ける。
実はコンソールボックスの後ろには後席用灰皿があるのだが、写真は撮り忘れました・・・

灰皿(開時)。たばこを吸わないひとにとっては、場所も容量も、小銭入れとしてうってつけだ。
使用時。
閉時。

★センター コンソール ボックス

ふたの先端左にあるボタンを押して開く。
閉じてロック。
多くの人はカセットやCDを入れるのに使っただろう。
閉じたときのふた形状のなめらかさが美しいが、MT操作に配慮したのか位置が低く、ひじ掛けとしては使えない。

センターコンソールボックス。

それにしても、グローブボックスふたを布張りにしたS13のことだ、開発陣にもデザイナーにも、このコンソールのふたも布で包もうという発想はあったに違いない。
たぶんそこまでコストは・・・となったのだろう。

【トランクルーム】

●トランクルーム

「キーシリンダーオーナメント」を左にまわし、現れたキー孔に鍵を入れてトランクオープン。
後述するトランクスルー以外、特に工夫はない。
ただ、時代は豊かになっていてトランク内の造りは向上していて、リッド裏以外、樹脂で覆ったフルトリミングになっており、鉄板まる出しの部分はない。

底が浅く、容量がFF車にはおよばないのは、床下にディファレンシャルギヤを抱えるFRゆえ。
どうせフル積載はまれだし、むしろ走りの良さと引き換えの、歓迎すべきトレードオフと解釈すべきだ。

トランクルーム。

リッドの開口位置はランプ上。
ために荷の出し入れにもそれなりに労を要するが、開けたとたんに荷が落ちることがないわけで、私は必ずしもデメリットにはならないと思っているが、S13の場合、ちょっと矛盾したところがある・・・

★リヤシートトランクスルー機構

シートバック両端のノブを上に引っ張り上げ、前に倒して使う。
これも全機種に標準で、長尺物を積むのに便利だ。
トランクフロアからのつながりがフラットなのも美しい。

ただし、シートバックが左右分割でなく、一体可倒なので、左右どちらかに座っているひとが他方を倒してトランクのものを取り出すのには向かない。
2人乗り主体だからと割り切ったのだろう。

トランクスルー。
トランクスルー未使用の平常時。

リッドがランプ上から開くのは前述した。
本来、長ものを水平に載せたいがためのトランクスルー付きにした割に、トランク開口をランプ上にしたことに矛盾を感じた。
これではトランクスルーで長尺物を載せるとき、どうしたって斜めに入れることになる。
使用頻度は低かったろうが、いざというとき、首を傾げたS13オーナーがいたかも知れない。
たぶん開発陣も先刻承知だったろうが、クルマの性格からボディ剛性確保を優先し、開口部を少しでも小さくようとしたのだろう。

★トランク&フューエルフィラーリッドオープナー

運転席シート右フロアにレバーがある。
そのまま上に引くとトランクが、いったん左に寄せて下向きに押すと給油口リッドが開く。

この2つを1本のレバーにまとめたのはたぶん日産だけで、私もパルサーやブルーバードで使っていたことがあるが、非常に便利だった。

トランク&フューエルリッドオープナー。

いまのクルマはハッチバック車のゲートもセダン車(少ないが)のトランクも、オープナーハンドルをリッド直付けにしているが、たいていはドアロックとの連動で、アンロック時は街中での信号待ちなどで勝手に開けられてしまいそうな不安がある。
この時代のような、室内からのオープン操作の方が安全度が高いような気がする。

S13シルビアの内装編はこれでおしまい。
次回は何の話をしましょうか。
時代の名車探訪シルビア回、まだ続きます。

【撮影車スペック】

日産シルビア Qs
(E-S13HA型・1988(昭和63)年型・4速AT・ライムグリーンツートン(特別塗装色))

●全長×全幅×全高:4470×1690×1290mm ●ホイールベース:2475mm ●トレッド前/後:1465/1460mm ●最低地上高: 135mm ●車両重量: 1110kg ●乗車定員:4名 ●最高速度: – km/h ●最小回転半径:4.7m ●タイヤサイズ:185/70R14 ●エンジン:CA18DE型・水冷直列4気筒DOHC・縦置き ●総排気量:1809cc ●ボア×ストローク:83.0×83.6mm ●圧縮比:9.5 ●最高出力:135ps/6400rpm ●最大トルク:16.2kgm/5200rpm ●燃料供給装置:ニッサンEGI(ECCS・電子制御燃料噴射) ●燃料タンク容量:60L(無鉛レギュラー) ●サスペンション 前/後:ストラット式/マルチリンク式 ●ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク ●車両本体価格:186万9000円(当時)