「ホンダ学園」とは?

ホンダ学園はホンダの創業者である本田宗一郎氏が初代校長となり「技術だけでなく、世界に歓迎される人間を作りたい」という理念のもと1976年に設立された学校である。1981年には関西校を開校し、2006年にはホンダテクニカルカレッジ(関東校/関西校)へと改められた。

ホンダテクニカルカレッジ関東校(埼玉県ふじみ野市)。

関東校はサービスエンジニア学科(2年制)、一級自動車整備学科(4年制)、研究開発学科(4年制)を設置。関西校は一般自動車研究開発学科(4年制)、自動車整備科(2年制)、自動車整備留学生科(3年制)を設置している。
整備系はもちろんとして、研究開発系の学科や留学生も受け入れており、日本の自動車業界の未来を担う人材を幅広く育成している。

ホンダ学園について説明する中嶋 歩常務理事。

最先端の機材を取り入れた授業でホンダ&ホンダ系企業へ就職最短距離

今回取材したホンダ学園・ホンダテクニカルカレッジ関東校では、大まかに研究系と整備系に分かれている。研究系では、最先端の機材やソフトウェアを使用して部品の設計や試作・製造などを実践。学生は、企業に就職して即戦力として活躍できる技術を身につけることができるという。

3Dのソフトウェアを使用した設計の授業。ソフトウェアは実際の現場でも使われる最先端のもの。
設計したものを実際に製造するための加工機械も揃う。
マシニングセンタも使用する。
マシニングセンタで加工中。
3Dスキャナーも高精度なものが用意されている。
3Dプリンタも設置されており、樹脂系の部品であればすぐに製造できる。
3Dプリンタのサンプル。黒いクルマはEK型シビックか。
電動化時代に必須のモーターの試験装置。
学生が作った様々な作品。

ここで即戦力として活躍できる知識やスキルを身につけた学生は、ホンダやホンダ系サプライヤーに就職して開発現場を担うことなる。ホンダの開発部門への就職を目指すなら、ある意味最短距離の進路かもしれない。なお、学校案内のパンフレットによると関西校では一般自動車研究開発学科・自動車研究開発コースは就職率100%(2024年度実績)と記載されていた。

最新のEVからネオクラシックまで、幅広い世代のクルマを扱う

一方、自動車整備の部門ではホンダが提供する最新モデルを中心に、自動車整備を学ぶ。基本的には新車状態のクルマで行なうのだが、整備の現場では様々なコンディションのクルマを扱うことになるた、古めのクルマや中古車を教材として用意することもある。

最新モデルのホンダ車で整備の実習中。12ヶ月点検などの基本的なチェック・整備項目から、より深い内容まで学習する。設備は実際のホンダディーラーなどに準じた充実したものになっている。
こちらはバンパーを外すなどより大掛かりな整備中。
屋外の駐車場に並べられた様々な実習車。現場で触れることの多い車種がメインにはなる。
最新モデルや台数の多いモデルだけでなく、軽トラックなども用意される。
自動車整備の基本項目としてディーゼル車を扱う関係で、実習車としてホンダ・ホライゾンが残されている。
ホライゾンはイスズ・ビッグホーンのOEM車で実習車は5ドアのロングボディだ。
Cピラーの車名エンブレム。ビッグホーンは1994年から1999年まで販売。
グレードは廉価モデルの「XS」。上級グレードは「ハンドリング・バイ・ロータス」。

また、昨今はEVのラインナップも増えつつあるため、新たな教材としてN-VAN e:を6台導入。重量物であるバッテリーの取り外し時に使用する専用治具なども用意している。徐々にではあるがEV化が進む時代に合わせて、カリキュラムも変化している。

EVのカリキュラムのために6台導入されたN-VAN e:。
作業用のリフトもEV対応。
バッテリー脱着のための専用治具も同時に導入。

ちなみに、ホンダは以前クラリティ・フューエルセルをラインナップしていたので、FCEVのカリキュラムはあったのか尋ねてみたところ、同車はリース販売が前提で一般ユースは想定されないので、座学こそあれど実習車は用意されなかったそうだ。

一方で、生産終了となったものの、NSX(NC1型)の姿も見受けられた。数は少ないとはいえ、ディーラーで触れる機会があるかもしれないだけに、きちんと用意されている。

ホンダ学園のエントランス前にもNSX(とHonda e)の姿があった。
また敷地内には初代NSXが、実習車のナンバーを付けて置いてあったのだが、ちょっとよく見て欲しい。
フロントマスクにはホンダの「H」ではなく「A」のエンブレム。
リヤガーニッシュには「ACURA」の文字が。
つまり、北米使用のアキュラNSXで、当然、左ハンドル仕様だ。

パンフレットに記載されている2024年度実績として、一級自動車研究開発学科・一級自動車整備士コースでは、難関とされる一級自動車整備士合格率が92.3%。自動車整備科の就職率が100%と紹介されている。

充実した自動車&バイクの部活動

ホンダ学園は自動車、そしてバイク系の学校だけにモータースポーツ系の部活動が特に盛んだ。クルマでは軽耐久やN-ONEワンメイクレース、旧車のレストアなどが行われている。

ダート仕様のライフ(左)と軽耐久で好成績を残したトゥデイ(右)。
N-ONEワイメイクレース仕様車。地元の有力販売店である埼玉Honda Carsがサポート。
ガレージで作業中のN-ONE。部活動は放課後の活動だが、夢中になって遅くまで残る学生が多く、現在は終了時間が定められている。
ホンダ学園自動車整備部の車両。
ガレージにはエンジンとトランスミッションも置かれていた。
ヤードに置かれた旧車はレストアベース。
レストアされた旧車。N360(奥)とホンダS(手前)。上のレストアベースがここまで綺麗に仕上がるとしたら驚きだ。

また、バイクではミニバイクによる耐久レースやワンメイクレースへの参戦の他、オフロード車によるエンデューロ、エコランなどに参加しているという。

バイク系ではエコラン(奥)、ミニバイクレース(中/バイクはNSF100)、オフロード(手前/CRF250)での走行会やレース活動に加え、写真にはないがホンダ・グロムのワンメイクレースにも参戦しているとか。
駐車場にはトランスポーターもあった。パネルバンは今時なデザインのラッピング仕様。

もちろん、自動車やバイクだけでなく、野球やバスケットボールなど、普通のスポーツや武道系の部活もあり、それぞれ活躍している。校舎内の廊下には各部が残したトロフィーなどが展示されていた。

2026年の創立50周年に向けて記念事業をスタート

ホンダ学園は2026年に創立50周年を迎えるにあたり、学生による記念事業をスタートさせた。その第一弾が初代シビックによる伝統のクラシックカーラリー「第28回ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」への出場だ。
クルマをレストアし、エントリーカーに仕上げ、チームをマネジメントし、競技車両を走らせ、整備する……そのほとんどを学生自身の手により行なうのだ。

ホンダがシビックでラリーに参戦!2026年「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」で佐藤琢磨選手がドライブ!! | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

「ホンダ学園」創立50周年事業第1弾! 学校法人ホンダ学園は、2026年に創立50周年を迎えることから、その記念事業として学生による「第28回ラリー・モテカルロ・ヒストリック」への参戦を発表した。ホンダ学園の学生、約30 […]

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記念事業第1弾発表会

ナビゲーターこそ学生が務めるものの、ドライバーは元F1ドライバーで日本人唯一のインディ500ウィナーである佐藤琢磨選手を起用。ホンダの元テストドライバーでホンダ学園の勝田啓輔校長と2台体制でのエントリーとなる。

競技車両のシート位置について学生と話し合う佐藤琢磨選手。

50周年事業はこの第一弾にとどまらず、第二弾、第三弾と予定されているという。
第二弾はスーパーカブによる日本一周「Cubチャレンジ」。不動車のスーパーカブC100(1958年)とC105(1961年)をレストアし、日本を一周してホンダ学園50周年式典の会場を目指すというもの。Cubチャレンジは関東校2台、関西校2台の4台で行われ、関東校がC100を2台、関西校がC100とC105を担当している。

Cubチャレンジのスーパーカブ(C100)を整備する学生。

バイク乗り、なかでもスーパーカブ系のオーナーは何かと日本一周をしたがる傾向にあり、これまでも実際に達成しているオーナーは多い。しかし、初代スーパーカブをレストアして……というのは、ホンダ直系の学校ならではかもしれない。

レストアは完全修復して工場出荷時の状態にする「リボーン」と、”当時感”を残した形でレストアする「ビンテージ」の2パターンで行なわていれる。

スーパーカブはそのタフさが広く認めら、世界中で愛されているものの、使い潰される実用バイクである一面も否定できない。そんなスーパーカブの、60年以上前の初代モデルが手に入り、レストア可能なのもホンダ学園ならではだろう。

受け継がれる本田宗一郎の建学の精神

ホンダ学園・ホンダテクニカルカレッジでは創立から50年にわたり実践を重視た教育と「挑戦する姿勢」を軸に人づくりに取り組んでいる。50周年記念事業も「技術の伝承」と「挑戦文化の醸成」を目的とするものであり、本田宗一郎が目指した「人に愛され、信頼される技術者」を育成する、ホンダ学園の理念を体現する取り組みなのである。

■建学の志
ホンダ学園は世界に歓迎される人間の育成を使命とする。

■学園の目的
チャレンジ精神に溢れ、人に愛され信頼される技術者を育成する。

■育成方針
世界に歓迎されるための
・マナーとマインドを磨く
・実践第一の技術力を学び取る
・社会貢献の心と行動力を育む