進化し続ける最強MZ12ソアラ
6M-G改3.1L+TD06L2-20Gツイン仕様はアツすぎる!
1981年登場の10系ソアラ。トップグレードの2.8GT/同エクストラ(MZ11)には2.8L・直6DOHCの5M-Gが搭載された。当時その動力性能は圧倒的で、国産車として初めて速度リミッターの解除だけで実測200km/hを突破。キャッチコピーに謳われた『未体験ゾーンへ』と足を踏み入れたエポックメイキングな一台だった。
そのマイナーチェンジ版が1985年に発売された3.0GT/同リミテッド(MZ12)。エンジンは3.0L・直6の6M-Gとなり、5M-Gを15ps&2.0kg上回る190ps&26.5kgmを誇った。

ここで紹介するのはMZ12ベースのチューンドカー。愛三カーフィールド代表を務めるオーナーの山田さんは運転免許証取得後、18歳から歴代モデルを乗り継いできた熱狂的なソアラフリークだ。
谷田部最高速を賑わせ、国内最速記録も樹立した大川ソアラに高校生の頃から憧れていた山田さんは、大学を卒業するとトラストに入社。同社の創業20周年を記念して製作、東京オートサロンに出展された大川ソアラレプリカを手に入れるチャンスが巡ってきた。
「ただ、社内でもう一人、“自分も欲しい”と手を上げたスタッフがいて。大川さんのひと言で、“どちらが買うかジャンケンで決めろ!!”ということになったんですけど、そこでボクが負けちゃって。そりゃ悔しい思いをしましたよ」と振り返る山田さん。その時に味わった悔しさが10系ソアラに対する思いを増幅させ、大川ソアラレプリカを生み出す原動力となったのだ。
このMZ12は、フロントがぶつかったモノコックボディをベースにドラッグレースで走っていた個体のエンジンを載せ、別の部品取り車からフロント周りを移植。つまり、三台を合体して一台に仕上げている。

リセス加工を施したHKS製7M-GT用鍛造2mmオーバーサイズピストン(85.0φ)を組み、排気量を3.1Lに拡大した6M-GE。クランクシャフトはバランス取りが行なわれ、カムシャフトにはIN/EX272度のHKS製コンカム、ヘッドガスケットにはトラスト製メタル2mm厚が組まれる。圧縮比は8.5に設定。ワンオフサージタンクにセットされるスロットルはインフィニティQ45用90φだ。制御はHKS F-CON Vプロ。また、バッテリー移設や配線類の取り回し変更、電動パワステ化、艶消しブラック塗装などによってエンジンルームをスッキリ見せている。

タービンはワンオフエキマニを介してトラストTD06L2-20Gをツインで装着。バフ掛けされたコンプレッサーハウジングとパイピングが存在感を一段と高める。ウエストゲートはHKS製Rタイプを組み合わせ、トラストプロフェックB-specⅡで制御。最大ブースト圧1.5キロ時に500psを発揮する。

ステアリングホイールはナルディクラシックのバックスキンタイプに交換。追加メーターはトラスト製で統一され、メータークラスター右側に80φブースト計の試作品、グローブボックス内には60φ水温/油温/油圧/燃圧計が並ぶ。

純正マルチビジョンのブラウン管を6インチ液晶モニターに変更。HKS CAMP2で各種車両情報を表示する他、フルセグチューナーの搭載で地上波テレビの視聴も可能にしている。ノーマルの雰囲気を壊さない技ありアップデート術だ。

前席は純正本革シートに代えてレカロ製を装着。運転席は電動調整タイプのCクラシック、助手席は手動調整タイプのCTとなる。

ボンネットは純正をベースにアートレーシング(旧アートガレージ)がワンオフ製作。前方左右にアウトレットダクトを新設し、後方のダクトも純正から大きく形状を変えつつ新たなキャラクターラインが追加される。

全長調整式車高調はフロント30段、リヤ20段の減衰力調整機能を持つ愛三カーフィールドオリジナル。フロント8kg/mm、リヤ6kg/mmのスプリングが組まれる。ブレーキはフロントがブレンボ製4ポットキャリパー+320φローター、リヤが同2ポットキャリパー+300φローターで強化済み。何より注目なのは、10系ソアラではまず見かけないハブの5穴化だ。

ホイールは18インチのパナスポーツG7 C5CⅡ。フロント9J+14、リヤ10J+5に、それぞれ215/40、245/35サイズのフェデラルSS595(リヤは同RS-R)が組み合わされる。フロントフェンダー後方に顔をのぞかせるのはウエストゲートパイプ。焼け防止のアルミパネルはアートレーシングのワンオフだ。

これまでに二度のブローを経験し、岐阜のグローバルでエンジンが組まれたけど、実はOPTION本誌では20年近く前に、以前の仕様だったこのMZ12を取材していた。当時は16インチのBBSメッシュを履き、前席は純正の本革シート。また、FコンVプロを使ったシーケンシャル燃料噴射とエアフロレス制御はすでに行なわれていたけど、タービンがTD06-20Gツイン、それをTVVCでコントロール…という内容だった。

今とは各部の仕様が大きく違っていたわけで、この20年でタービン交換や電気式ブーストコントローラー導入、電動パワステ化に伴うパイピングレイアウト変更、オリジナル車高調装着にブレーキ強化と着実に完成度を高めてきた。まさに現代版の大川ソアラ。まだまだ進化は止まらない。
TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)
⚫︎取材協力:愛三カーフィールド 愛知県知立市新林町東新切66-1 TEL:0566-85-1313
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