GMSV Le Mans GTR

カスタムモデルを手がけるGMSV

ゴードン・マレー・スペシャルビークルズが発表した「GMSV S1 LM」のエクステリア。
スポーツモデルを量産するゴードン・マレー・オートモーティブに対して、ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズは、限定モデルや特別仕様車、カスタムオーダーのワンオフモデルを製造する。

英国を拠点とするゴードン・マレー・グループ(GMG)は、新たに「ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)」部門を設立。8月15日にカリフォルニア州モントレーで開催さた「ザ・クエイル モータースポーツ・ギャザリング」において、GMSVが開発した2車種を世界初公開した。

新会社のGMSVは、ゴードン・マレーが手がけてきた作品をリスペクトしつつ、自動車メーカーによるビスポークモデルを再定義し、ドライバー中心のデザインを追求。先に立ち上げられたゴードン・マレー・オートモーティブ(GMA)がプレミアムな量産モデルの開発・生産を手がけるのに対して、GMSVは熱狂的なマレー・ファンやコレクター、革新的なビジョンを持つ顧客からの需要に応え、伝統からインスパイアされた限定モデルや特別仕様車、カスタムオーダーのワンオフモデルを製造する。

GMSVは同社のローンチの場として、2025年のモントレー・カーウィークを選び、同社が展開する「SVデザイン」と「ビスポーク」という2つのラインから、「GMSV S1 LM」と「GMSV ル・マン GTR GTR」の2台がワールドプレミアされた。どちらもマレーの耐久レースへの情熱、1995年のル・マンで総合優勝を達成したマクラーレン F1 GTRをオマージュしている。

1995年のル・マン優勝車を再解釈

ゴードン・マレー・スペシャルビークルズが発表した「GMSV S1 LM」のエクステリア。
5台限定のカスタムモデルとして製作された「GMSV S1 LM」は、1995年のル・マン24時間レース優勝車をオマージュしている。

「GMSV S1 LM」は、ゴードン・マレー・スペシャル・ビークルズ(GMSV)が初めて手掛けたカスタムモデル。「S1」は「Special One」を意味し、顧客が持つ1990年代のデザインへの情熱と、1995年のル・マン24時間レース優勝という伝説的な勝利を表現している。

このプロジェクトのターゲットはゴードン・マレーが掲げる7つの原則を追求することであった。特に「独占性(Exclusivity)」「美への回帰(Return to beauty)」「エンジニアリングの芸術性(Engineering art)」「軽量化(lightweightness)」「完璧なドライビング(Driving perfection)」に重点を置いている。

ゴードン・マレー・グループの創立者であり、会長を務めるゴードン・マレーは、S1 LMについて次のように説明を加えた。

「私はタイムレスなデザインを愛しています。バランス、美しさ、プロポーションを犠牲にしてまで、過激な見た目のスーパースポーツを作る競争には参加したくありません。結果を見てください、このクルマはタイムレスで美しいでしょう?」

マクラーレン F1 GTRをベースに、ローダウン化されたルーフラインが特徴。すべてのボディパネルは超軽量カーボンファイバーで構成される。S1 LM専用のエアロパッケージ、フロントスプリッター、リヤディフューザー、デュアルエレメントリヤウイングにより、大幅なダウンフォースと安定性を実現した。前後には、彫刻のようなボディワークとシームレスに融合した、ル・マン24時間からインスパイアされた専用ライトが導入される。

専用の4.3リッターV12エンジンを搭載

ゴードン・マレー・スペシャルビークルズが発表した「GMSV S1 LM」のパワーユニット。
リヤミッドに搭載されるのは、専用開発された4.3リッターV型12気筒エンジン。最高出力は700PSオーバーを実現した。

ゴードン・マレーによる「エンジンは車両の心臓部であり、体験の少なくとも半分を占める」という理念に基づき、S1 LMは強化したパワーユニットを搭載。リヤファンとオイル冷却パックを取り除いたことで、専用チューンが施された4.3リッターV型12気筒エンジンを搭載するスペースが確保された。

このエンジンは最高出力700PSオーバーを実現し、専用開発されたインコネル製エキゾーストシステムと、18金製熱遮断材で包み込まれる。エンジン開発は、内部コンポーネントの軽量化、圧縮比の向上を実施し、パワー、トルク、レスポンスが大幅に向上した。1万2100rpmまで回転可能なV12エンジンは、1995年のル・マン優勝車をオマージュし、センターに配置された4基のテールパイプから美しいハーモニーを奏でるという。

6速MTは、GMA T.50のケース、T.50の内部パーツを採用。リンク機構とセッティングを最適化することで、気持ちの良いショートストロークを実現した。サスペンションも専用設計が導入され、新しいジオメトリ、ローダウン化された車高、専用ダンパー設定を採用。シャープで高い設置感を持ったドライビング体験を提供する。

GMSVのビスポーク部門は、公道走行可能なS1 LMを5台のみ製造。価格は非公開、2026年にデリバリーを開始する予定だ。

ロングテールレーシングカーをオマージュ

ゴードン・マレー・スペシャルビークルズが発表した「GMSV ル・マン GTR GTR」のエクステリア。
「GMSV ル・マン GTR」は、ゴードン・マレー自身が憧れ続けてきた、ル・マン24時間レースで活躍したロングテールレーシングカーをオマージュしている。

「GMSV ル・マン GTR」は、ロングテール仕様のル・マン・レーシングカーをリスペクト。1970年代、1980年代、1990年代の名作ロングテールカーからインスピレーションを得てデザインされた。マトラ・シムカ MS660、ポルシェ 917、アルファロメオ ティーポ 33/3 などのアイコン的なモデルから、時代を超えたデザインを継承している。マレーはル・マン GTRのデザインについて次のように説明を加えた。

「ロングテールレーシングカーは、エアロダイナミクスの利点と、美学的バランスを完璧に融合させた存在です。私は高い技術と流麗なデザインの組み合わせに、魅了されてきました。ル・マン GTRは、私が自動車のデザインを始めた頃から憧れてきたロングテールレーサーを、現代のエアロダイナミクスと、私たちが精巧に設計したシャシー、エンジン、トランスミッションを組み合わせ、時代を超えた形で再解釈しています」

T.50をベースに開発された「GMSVプラットフォーム」は、公道とサーキットにおける走行性能を両立。高回転型のGMA製V型12気筒エンジンに、6速MTを搭載し、車両のほぼすべてが再設計されている。

強化型「パッシブ・バウンダリー・レイヤー・コントロール」を採用した流線型フォルムは、極めて低いドラッグレベルを実現。フロントスプリッター、サイドスカート、ツインチャネル・リヤディフューザーが最大級のグラウンドエフェクトを生みだす。T.50とT.50sに搭載されていたリヤマウントファンは採用されずに、フルワイドリヤウィングを装着し、高速・高グリップパッケージを手にした。

ル・マン24時間にちなみ24台を限定製造

ゴードン・マレー・スペシャルビークルズが発表した「GMSV ル・マン GTR GTR」のコクピット。
GMSV ル・マン GTRは、ル・マン24時間レースをオマージュし、限定24台のみが製造される。

サーキット走行を行うドライバー向けに、高剛性・軽量サスペンション、ワイドトレッド、大型タイヤ(ミシュラン Pilot Sport Cup 2)、強化型冷却システムを導入し、さらに前後重量バランスも最適化。フロントに大型のエアベントを新設し、リヤフェンダーにサイドポッド・インテークを追加したことで、エンジンとトランスミッションの冷却性能も強化されている。

GMSV ル・マン GTRは、ル・マン24時間レースへのオマージュとして、限定24台のみを製造。価格は非公開、発表の段階ですでに24台全てがソールドアウトした。現在、GMSVにおいて開発が進められており、最初のカスタマー向け車両は2026年の完成を予定している。

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