レース資材運搬用のクルマだったはずが…?
14秒880という軽トラとは思えないタイムをマーク
本来なら荷物を運ぶのが本業の軽トラック。しかし、その常識を覆すマシンを生み出したのが、兵庫県の但東自動車だ。

ベースとなったのは、ドラッグレースイベント「ドラッグフェスティバル EAST」で運営スタッフ用に導入されたダイハツ・ハイゼットジャンボ。本来は会場で使う“ドラッグバイト(路面グリップ材)”を運ぶための、パワーゲート付き4WD仕様の働くクルマだった。
ところが、空き時間に試し走行をしてみると「予想以上に遅い」という現実に直面。そこから方向転換が始まった。「じゃあ速くしよう」と手を入れ続け、気づけば常用200馬力を発揮するモンスター軽トラへと進化していたのだ。


エンジンは排気量こそ660ccのままだが、中身は完全に別物。CADカーズ×キャリロ製のピストン&コンロッドを採用し、ハイカムと強化バルブスプリングで高回転域の安定性を確保。インジェクターは380ccへ大容量化し、ギャレットGBC14タービンを装着。ブースト圧は最大2.1kgf/cm²に設定され、F-CON Vプロ制御によって200馬力を絞り出す。

さらにウエットショット式NOSも搭載し、必要に応じて+30馬力のブーストも可能。実際に2025年5月の「ドラッグフェスティバル EAST」では、終速155.17km/hで14.880秒を記録し、軽トラのイメージを完全に覆してみせた。

強大な発熱に備え、インタークーラーはフロントメンバー前方に配置。さらにバッテリーキャリア横にオイルクーラーを増設するなど、冷却対策も抜かりなし。
駆動方式は4WDから2WDに変更され、ATを5速MT+クロスギヤへ換装。パワーバンドを外さない最適なギヤ比で、200馬力を余すことなく路面に伝える。強化も抜かりない。

外装は但東自動車が手がける「SAMURAIピックアップ」スタイルをベースに、リフトアップ+ワイドフェンダー、ファットなタイヤで迫力満点の仕上がり。見た目も走りも“ただの軽トラ”の域を大きく逸脱している。

「軽トラだって速くしたいんです!」と笑うのは開発者の吉岡さん。ストリートでもドラッグでも楽しめる、唯一無二の走行性能。まさに“軽トラの限界突破”を体現したマシンといえるだろう。
⚫︎取材協力:但東自動車 兵庫県豊岡市但東町出合51 TEL:0796-54-0206
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