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今日は何の日?■ミニバン専用設計で誕生したグランビア
1995(平成7)年8月22日、トヨタは高級ミニバン「グランビア」を発売した。それまでの商用車ベースでなく、ミニバン専用設計の堂々たる3ナンバーサイズを持ち、広々した3列シートのミニバンは、「アルファード」にバトンを渡すまでトヨタのフラッグシップ・ミニバンだった。


高級ミニバンの元祖グランビア誕生
トヨタは1990年5月にデビューした“天才タマゴ”「エスティマ」に続いて、1995年8月のこの日にミニバン専用設計したグランビアをデビューさせた。エスティマが“天才タマゴ“のキャッチコピーで、ミッドシップのワンモーションのスタイリングを採用したのに対し、グランビアはオーソドックスなFRで1.5BOXスタイルだった。

ボディサイズは、全長と全幅はエスティマと同等だが、全高が1965mmの堂々たる3ナンバーサイズ、さらにフロア高を下げ、室内高1375mmの圧倒的に広い快適な室内空間が実現された。3列シートは2列目がキャプテンシート仕様と3名掛けのセミセパレート仕様が用意され、多彩なシートアレンジが楽しめた。


パワートレインは最高出力145ps/最大トルク22.6kgmを発揮する2.7L直4 DOHC、130ps/29.5kgmの3.0L直4 SOHCディーゼルターボの2種エンジンと、4速ATの組み合わせ。駆動方式は、FRとセンターデフ式フルタイム4WDが設定された。

また、ツインエアコンや高級オーディオ、室内カーテンなど快適装備も充実し、VIP用のショーファーカーとして使われる高級車としての風格があった。車両価格は、2WD仕様の標準グレードが268.5万円(ガソリン)/284.0万円(ディーゼル)に設定。当時の大卒初任給は19.4万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で318万円/337万円に相当する。

高級ミニバンの元祖的なモデルだったグランビアだが、スタイリングがオーソドックスで地味な印象だったためヒットモデルとはならなかったが、トヨタの最上級ミニバンとして存在感を示した。

グランビアを圧倒して高級ミニバンジャンルを確立した日産エルグランド
新たなミニバンをアピールしたグランビアだったが、1997年5月に日産からファーストクラスのミニバンを目指した「エルグランド」がデビューすると状況は一変、グランビアの存在感は急速に弱まった。

エルグランドのフロントマスクは、グリルおよびヘッドライトを上下2分割し、メッキ枠や厚みのあるバンパーで堂々たる風格を漂わせ、室内は高級感と快適性を追求し、7人/8人乗りに対応できる様々なシートアレンジが魅力だった。
さらに装備についても、ナビとTVが楽しめるツインナビゲーションやスーパーサウンドシステムなどで上級感を演出。パワートレインは、最高出力150ps/最大トルク34.0kgmを発揮する3.2L 直4 SOHCディーゼルIC(インタークーラー)ターボおよび170ps/27.1kgmの3.3L V6 SOHCガソリンエンジンと4速ATの組み合わせ、駆動方式はFRと4WDが選べた。
エルグランドは、発売開始から19ヶ月で累計台数10万台を突破する大ヒットを記録、高級ミニバンという新たなジャンルの確立に成功したのだ。
トヨタが巻き返しを図ったアルファード
グランビアは2002年に1代限りで生産を終え、入れ替わるように2002年5月にトヨタからグランビアの後継にあたる「アルファード」が登場した。

エルグランドを意識して開発されたアルファードは、落ち着いた気品あるデザインと木目やメッキパーツなどを採用したゴージャスなインテリア、さらに豊富なシートアレンジの3列シートによって最上級の快適性と高級感を実現。パワートレインは、159ps/22.4kgmの2.4L直4DOHCと4速AT、および220ps/31.0kgmの3.0L V6 DOHCエンジンと5速ATの組み合わせが用意され、翌年にはハイブリッドモデルも追加された。
アルファードの最大の特徴は、FRベースのエルグランドにはなかったFFプラットフォームを利用した圧倒的な室内空間と豪華な装備だった。発売の翌2003年には6000~7000台/月を販売し、あっという間に高級ミニバンバントップの座をエルグランドから奪取。その後も、2代目で兄弟車ヴェルファイアを加えてエルグランドを圧倒した。
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現在もアルファード/ヴェルファイアは高級ミニバンのトップの座を維持している。グランビアは大ヒットとはいかなかったが、アルファード/ヴェルファイア躍進の礎となるという重要な役割を果たしたのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。