ますますモト・グッツィV11スポルトに魅せられる
2024年11月に納車されて以来、愛車のモト・グッツィV11スポルトは大きなトラブルもなく、どのバイクにも似ていない空冷縦置きVツイン&シャフトドライブの放つ個性に大いに満足している。
このバイクはとにかく乗っていて楽しい。低速では排気量相応の太いトルクとともに強い鼓動を感じるのだが、回転を上げるにつれて振動が収束し、高回転までキレイに吹き上がる。まるで低速域はハーレー、高速域ではドゥカティにでも乗っているかのような印象だ。

縦置きクランクの反トルクの影響で、右コーナーがややリーンしにくく、左コーナーはペタッと曲がれると言われているが、いざ走り出してしまえばそれほどクセの強さは感じない。たしかに左右のバンクでフィーリングが若干異なるが、それもこのバイクの味わいのひとつとして楽しめる程度のことである。

V11スポルトの数少ない弱点は燃費で、街乗りで11~13km/L、高速でも13~15km/Lほどと、このバイクの前に乗っていたZX-9Rの半分くらいしか走らない。おまけに使用するガソリンはハイオク指定。ガソリン価格高騰のご時世にこの燃費性能は少々辛い。気持ち燃調が濃いようにも感じられるが、インジェクション故に調整のしようがなく、燃費の改善は諦めるしかないようだ。最新型のV7やV85TTの燃費は、22~24km/Lくらいは走るそうなので、古いV11のオーナーからするとまったく羨ましい限りだ。

『東京モーターサイクルショー』会場で突然バッテリー上がり!?
けどそれ、イタリア旧車の仕様です……
そんなわけで燃費以外は概ね満足していたモト・グッツィV11スポルトなのだが、ここに来て筆者はイタリア車の軽い洗礼を受けることになった。
まず、2025年3月末に開催された『第58回東京モーターサイクルショー』でのことだ。取材で撮り忘れた写真を撮影するために会場を再訪。その際に会場へはV11スポルトで向かった。

会場のビッグサイトに到着すると駐輪場は入場待ちのバイクで長蛇の列をなしており、その最後尾に並ぶ。だが、ストップ&ゴーの繰り返しによるノロノロ運転をしているうちに、V11スポルトのアイドリングはどんどん不安定になり、駐車場に入場する頃には発電不良を起こしたようでエンストしてしまった。
慌ててスターターボタンをプッシュしたものの、セルスターターの動きがどうにも重く、エンジンに再び火が入らない。そこではたと思い出したのが、古いイタリア車は低回転ではジェネレーターがうまく発電してくれず、延々アイドリングを続けていると電力不足でエンストしてしまう、ということだった。

これまでに何台ものイタリア製のバイクやクルマを乗り継ぎ、現在も1967年型アルファロメオ1300GTジュニアを所有している。1960~1970年代のキャブ車では、低回転域では充分な発電量を得られないことを「常識」として弁えていたものの、まさか21世紀も間近のインジェクション仕様のバイクまでそのようなことになっていたとは、つゆほどにも考えてはいなかった。
だが、筆者のV11スポルトは年式こそ1999年型とさほど古くはないものの(と言っても26年落ちだが……)、エンジンなどメカニズムの基本設計は、1960年代の初代V7まで遡れてしまう。要するに設計の古いメカを改良に改良を重ねて使い続けてきたということだ。すなわち、旧車と同様に扱わなければならない部分も残されているのだ。「そうか、コイツは1999年型の旧車だ!」と、そのことに気がついたときには後の祭りであった。

取材を終えて駐車場に戻り、ダメ元で愛車のスターターボタンを押すと、バッテリーをしばらく休ませたからか、幸いにもエンジンが掛かった。そこでチョークレバーを引き(V11はインジェクションなのにチョークレバーがある)、エンジン回転数を少し高めにしてそのまま帰宅することに……。
だが、急な仕事で今一度バイクを停め、用事を済ませてから再び愛車のもとに戻ると、危惧した通りV11スポルトは2度目のバッテリー上がりを起こしていた。今度はスターターボタンを何度押してもセルモーターは回る様子がなく、諦めてJAFに救援を求めることにした。
この一件以来、筆者は渋滞が予測される場所やロングツーリングの際には、必ずポータブルバッテリーを持って行くようにしている。
今度はウインカーの点灯不良!? 原因はヒューズだった……
続いて2025年6月1日に2度目のトラブルを経験することになる。この日は柏市にある『Riders Cafe Racer』で毎月第一日曜日に開催されている恒例の「モーニングミーティング」の開催日で、GSX~R1000(K4)に乗るカノジョと参加しようと早朝の県道を走っていたときのことだ。

交差点を左折した際に、後方のカノジョからウインカー不点灯を告げられた。球切れかと思ったが、よく見ると前後左右のいずれのウインカーも点灯していないので、それはなさそうだ。すぐに会場に到着するところだったので、そこで点検することにした。

駐車場にバイクを停めてウインカーランプを確認してみるが、やはり球切れはしていない。自宅を出発したときにはウィンカーは問題なく作動していたので、おそらくはヒューズが切れたのだろうと、シートを外してヒューズボックスにアクセスしてみる。

すると、30アンペアのメインヒューズがドロドロに溶けていたのだ。ヒューズを外して内部の電線を確認するが切れてはいない。とりあえず、予備のヒューズを持っていたので、接点を掃除してから新しいヒューズに取り換えてみた。するとウィンカーが復活したのでそのまま様子を見ることにした。

ミーティング参加者と手賀沼周辺を25kmほどプチツーリングをして『Riders Cafe Racer』に戻ってから、先ほど交換したヒューズを確認。すると、交換したばかりのヒューズがまた溶けかかっていたのだ。

電気系のトラブルは車両火災のリスクがあり、甘く考えていると危険だ。その様子を見た『singlebigk』(シングルビッグケイ)の代表であり、みんなのアニキ分の啓さんも「これは良くないね。バイクが燃えちゃってからでは手遅れになる。すぐに購入店に連絡して点検してもらったほうが良いよ」とアドバイスしてくれた。
そこでこのバイクを買った江戸川区の『CLUB CIRCLE』に電話し、不具合を診てもらうことにした。
ヒューズボックスの清掃で様子見……しかし、再発
『Riders Cafe Racer』からそのまま『CLUB CIRCLE』へ直行、メカニックの山田さんに不具合箇所の点検を依頼する。「ヒューズボックスの接点部分の接触不良で、発熱したことがトラブル原因かな?」と言って彼は、ヒューズボックスを清掃してヒューズがキッチリと刺さるように調整してくれた。「これでダメならあらためて修理方法を考えるから、この状態でしばらく乗ってみて」と言うので、この日はそのままV11スポルトに乗って帰った。
それからしばらくは問題なくV11スポルトに乗ることができていたが、修理から3週間後、再びウィンカー不点灯トラブルが発生。もしや!? と思いヒューズボックスを開けてみると、またもヒューズが溶けていたのだ。

そこで『CLUB CIRCLE』に再び電話すると、山田さんは「すぐに持ってきな」と。店にで溶けたヒューズを見せると「これはヒューズボックスが完全にダメになっているね」とのこと。
モト・グッツィは古い輸入車の中では比較的部品の入手性は比較的良いほうだが、それでも国内に新品のヒューズボックスの在庫があるかどうかはなんとも言えず、在庫がなければ本国からの取り寄せとなる。その場合、パーツが届くのに相応の時間が掛かるだろうし、古いバイクのパーツは定価はあってないようなものなので、修理費用はいくらになるかはわからない。
来週には『CLUB CIRCLE』主催のツーリングがあると言うのに……これは少々困ったことになったぞ、と不安げな表情を見せる筆者に、彼はニカっと笑って「大丈夫。心配はいらないよ。なんとかしちゃうって」と事もなげに言う。結局、そのままV11スポルトは預かりとなった。
別配線を引き直し板ヒューズで修理……費用は?
それから5日後、山田さんから「修理が終わったよ。取りにおいで」との電話が入った。『CLUB CIRCLE』に到着すると、山田さんは「自作パーツで修理してみたよ。これでトラブルはないはず」と言って、V11スポルトのシートを外す。
彼に促されてシート下を覗き込むと、ヒューズボックスから配線が取り出され、フレームに固定されたプレートの上に不具合を起こしたメインヒューズの代わりとなる旧式の平ヒューズに繋がれていた。「今回はスペースの都合から旧式の板ヒューズを使ってみた。これで問題はないはずだよ」と修理内容を説明してくれた。彼は続けて「しばらくこの状態で乗ってみてよ。それで問題がなければ絶縁テープで平ヒューズを巻けば問題は解決だね」という。

今回の修理費用を尋ねると「そうだなぁ~。とりあえず材料費と工賃で6100万円置いてって」と曰う(もちろん、オヤジギャグである。実際に支払ったのは6100円)。想定よりもずっと安く修理をしてもらえて本当に助かった。おまけにヒューズボックスにまつわる電気系のトラブルはこれ以降起きてはおらず、翌週のツーリングも予定通り参加できた。

住所:〒132-0001 東京都江戸川区新堀1丁目27-1
電話:03-6784-2089
営業時間:10:00~20:00
定休日:月曜日・第2日曜日(ほかイベント日)
HP:https://www.club-circle.jp
古い輸入車を維持する上で、『CLUB CIRCLE』のようなトラブルが起こったときに臨機応変に対応してくれるプロショップの存在は本当に力強い。貧乏ライターの筆者が古いモト・グッツィを維持できるのもこの店のおかげである。
