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今日は何の日?■5代目ワゴンRにエネチャージに続いてS-エネチャージを採用
2014年(平成26)年8月25日、スズキは5代目「ワゴンR」後期型にマイナーチェンジを実施。スタイリングや機能面の変更も行なわれたが、目玉は低燃費技術“S-エネチャージ”が採用されたこと。S-エネチャージは、ISG(モーター機能付発電機)を採用して、モーターアシストが可能なマイルドハイブリッドシステムである。


スズキとダイハツの熾烈な燃費競争
2000年以降世界的に地球環境問題がクローズアップされ、自動車メーカーにとっては燃費低減が主要テーマになった。日本でもハイブリッドのプリウスが大きな話題を集め、軽自動車でも燃費競争が始まった。

最初に軽自動車の燃費競争を仕掛けたのは、2011年にダイハツから発売された「ミライース」だ。車体の軽量化やアイドルストップ、減速回生などの燃費低減技術“イース・テクノロジー”を採用して燃費30km/L(JC08モード)を達成し、ハイブリッドや電気自動車に次ぐ“第3のエコカー”をアピールした。

ところが「ミライース」発売の3ヶ月後には、スズキが「アルトエコ」で燃費30.2km/Lを達成してダイハツを抜き去った。ここから、スズキとダイハツによる熾烈な低燃費競争が幕開けた。
ハイトワゴンについても同様、2012年にスズキが発売した5代目「ワゴンR」は、減速回生を強化した“エネチャージ”を採用して燃費28.8km/Lを達成。ところが、この3ヶ月後にダイハツは燃費29.0km/hの「ムーヴ」を発売して巻き返し、「ミライース」と「アルトエコ」のまったく逆のことが起こったのだ。
スズキ・グリーン・テクノロジー第1弾はエネチャージ
スズキは、燃費低減技術を集約した“スズキ・グリーン・テクノロジー”を推進した。その第1弾が2012年8月にデビューした5代目ワゴンRに採用された“エネチャージである。

エネチャージは、減速エネルギーを効率よく回生することを狙ったシステムである。通常の約2倍の発電能力がある高出力オルタネーターと大容量の鉛電池にリチウムイオン電池を付加して、回収した減速エネルギー(電力)を必要とされる車体の電気系の電力として使うのだ。
さらに走行中のオルタネーター駆動による発電を最小限に抑えることもできるので、エンジンにかかるオルタネーターの駆動損失も減らして燃費を低減することもできる。
その他にも、停車前の減速時に13km/h以下になるとエンジンを停止する新アイドルストップシステムによる燃費低減と、エアコンユニット内のエバポレーターに内蔵した蓄冷材を使って、アイドルストップ時の室温の上昇を抑えることによって、エンジン再始動を遅らせて燃費を軽減する“エコクールシステム”を組み合わせ、JC08モード燃費28.8km/L(FF)/27.8km/L(4WD)を達成した。
ちなみに標準グレードの価格は、それぞれ110.985万円/122.745万円に設定された。
スズキ・グリーン・テクノロジー第2弾はS-エネチャージ

エネチャージを進化させたのが、簡易的なハイブリッドのS-エネチャージである。S-エネチャージは、2014年8月のこの日にマイナーチェンジされた5代目「ワゴンR」後期型で採用された。

オルタネーターの代わりにISG(モーター機能付発電機)を使い、リチウムイオン電池の容量も増大。回生できる減速エネルギー量を増やし、ISGのモーター機能によって加速時にモーターアシストし、またエンジンの再起動も行う。

モーターアシストが作動するためには、リチウムイオンバッテリーの充電量が所定値以上あることが前提で、車速が15~85km/h、エンジン回転数が3500rpm以下で加速状態(アクセルの踏み増)であること。これらが満たされた場合、最長で6秒間のモーターアシストが作動する。また、作動後は3秒間アシストを行なわない。


S-エネチャージは、発電効率の高いISGを採用したことにより、減速時のエネルギー回生能力が約30%向上。アイドリングストップについては、より高い頻度でのエンジン停止が可能となったことなどの効果によって、ワゴンRのS-エネチャージ搭載車は、FF車で32.4km/L、4WD車で30.2km/Lの燃費を達成した。エネチャージに対して、12.5%(FF)/8.6%(4WD)ほど燃費が向上した。


標準グレードの価格は、それぞれ107.892万円(FF)/119.988万円(4WD)に設定された。
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スズキは当初、S-エネチャージをマイルドハイブリッドとは呼んでいなかった。マイルドハイブリッドの明確な定義はないが、一般的にはモーターでエンジン出力をアシストするシステムであれば、マイルドハイブリッドに分類されると考えてよいと思われる。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。

