ターボとスーパーチャージャーの違い

当記事で紹介するのは、バイクショップAndyが製作した2台の250cc単気筒+過給機装着車、CBR250R+ターボチャージャー車とZ250SL+スーパーチャージャー車である。ちなみにターボチャージャーとスーパーチャージャーには一長一短と言うべきところがあるので、どちらが優位と一概には言えない。

ターボチャージャーの概念図。なお過給機本体の回転数は、ターボ:10~20万前後、スーパーチャージャー:10万前後(カワサキH2Rは13万回転)というのが一般的で、発熱量はターボのほうが多い。スーパーチャージャーの潤滑と冷却は基本的にユニット内のオイルで行うが、ターボは専用のラインを増設し、エンジンオイルを用いて潤滑・冷却を行うことが定番になっている。

具体的な話をするなら、ターボチャージャーには排気ガスのエネルギーを再利用してタービンを回せる、部品点数が少ないという美点があるのだが、タービンの回転数が低い状態ではスロットル操作に対する応答遅れ=ターボラグが生じやすい。一方のスーパーチャージャーは、低回転域から十分な過給効果が得られるものの、クランクシャフトから動力を取り出して過給機を動かすのでパワーの一部を損失、高回転域では構造的にターボほどの過給が得られない、という欠点が存在するのだ。

スーパーチャージャーには、ターボと良く似た構造の遠心コンプレッサー式に加えて、二組の2葉〜4葉のねじりローターを回転させるルーツ式、ルーツ式に通じる構成でありながら内部で圧縮を行うリショルム式、渦巻き型ハウジングの内部で圧縮を行うスクロール式など、さまさまな形態が存在。吸気の安定化に貢献するインタークーラーやサージタンクは、マストの装備ではない(ターボも同様)。

もっとも、少し前に掲載したZ250SL+スーパーチャージャー車のエンジン特性は素晴らしく良好で、僕はマイナス要素を微塵も感じなかった。ではCBR250R+ターボチャージャー車の乗り味はどうだったかと言うと……。

パワーバンドを維持するスポーツライディング

低回転域では過給効果が得づらいターボの素性に加えて、最高出力を40ps弱に設定(ノーマルは29ps)していることもあって、このバイクのエンジン特性はZ250SL+スーパーチャージャー装着車(最高出力は42.5ps)ほど、全回転域でガツン‼と来るわけではない。でも僕は2台の過給機装着車の魅力に、甲乙は付けられないと思った。

と言うのも、CBR250R+ターボチャージャー車は、パワーバンドが明確なのだ。4000rpm付近からノーマルを上回るトルクは感じるものの、7000rppm以上で加速の鋭さがとてつもない勢いで増す。それはまるで往年の2ストロークを思わせるフィーリングで、1986年型TZR250オーナーの僕としては、我が意を得たり‼という気分になってしまった。

そしてZ250SL+スーパーチャージャー車と同じく、このバイクも扱いづらさは皆無で、低中回転域を使ってのマッタリ走行もごく普通にこなせる(そういう意味では排気デバイスを導入した80年代中盤以降の2スト的)。とはいえ、往年の2ストロードスポーツに好感を抱いたライダーなら、峠道では7000~10000rpmののパワーバンドをキープする楽しさに酔いしれることになるだろう。

オヤジキラーとしての資質

ちょっと妙な表現になるけれど、バイクショップAndyが手がけた2台を試乗した僕は、250cc単気筒ロードスポーツ+過給機という組み合わせに対して、オヤジキラー……?という印象を抱いた。

以下にその理由を説明すると、まず最近の僕は50~60代のスポーツバイク好きから、ミドルクラス以上は体力的にツラくなってきた、家計を考えると車検付きは維持が厳しい、などという不満を聞く機会が少なくないのである。もっとも近年の250ccロードスポーツのツルシ状態が、彼らの需要を満たせるのかと言うと、それはなかなか難しいところだろう。でも250cc単気筒+過給機なら、グラッと来るオヤジが大勢いるんじゃないだろうか。

バイクショップAndyの安藤さん(左)と、試乗に付き合ってくれたCBR250R+ターボオーナーの久保さん(右)は、いずれもレース経験が豊富なベテランライダー。中央は筆者。

「私の狙いも正にソコです(笑)。今回の2台なら、車格はコンパクトだし、完成後の維持費は少額で済むし(整備に関するノーマルとの違いは、オイル交換とエアフィルターの清掃を1000km前後で行うことくらい)、特別感も手に入る。自分で言うのも何ですが、もう若くないスポーツバイク好きにとって、250cc単気筒ロードスポーツ+過給機は理想的な特性を備えていると思いますよ」

ノーマルに対して13.5psものパワーアップを実現した、Z250SL+スーパーチャージャー車。

そう語る安藤さんが手がけた2台の過給機装着車は、万が一のトラブルにもしっかり配慮。独自に開発したサブコンや追加インジェクターなどを導入する一方で、ノーマルのECUとインジェクターはそのまま使用しているため、過給機関連部品に不具合が生じても走り続けることが可能なのだ。また、スーパーチャージャーの駆動ベルトは、わずか数分で交換可能な構造を採用している。

自然吸気のノーマルと比較するなら、過給機を導入したエンジンはかなりの高負荷にさらされる。そういった事情を考慮したバイクショップAndyは、“Protect to Attack”というコンセプトを掲げ、保護性能に特化した油脂類を手がけるLUBIRDと、2輪過給機専用エンジンオイルを共同開発。価格は4500円/1ℓ。決して安い製品ではないけれど、250cc単気筒のオイル容量は1~1.5ℓ前後なので、大きな負担にはならないだろう。

「乗り味だけではなく、整備性という面でも、ノーマルに対するマイナス要素を作らないことが、私のチューニングの大前提です。もちろん耐久性と燃費はノーマルのほうが優位ですが、過給機を装着したからと言って、その2点がガクンと落ちるわけではないですよ」

2011年に登場したCBR250Rは、2017年に国内販売が終了したが、同系エンジン車として、レブル250やCL250、CRF250Lシリーズが販売されている。ちなみにこのCBR250Rの入手価格は、ヤフオクで10万円だったそうだ。

なお装備に違いはあるものの、当記事で紹介した2台は、いずれも強化クラッチスプリング以外はエンジン内部に手を入れないステージ1仕様で、部品代を含めての費用は60万円~。その数字をどう感じるかは人それぞれだが、ベース車を40万円以下で購入すれば、トータル費用は100万円前後で済むのだ(現代の250ccロードスポーツの最速車、CBR250RRの価格は90万2000円~)。

現在の同店が熟成を進めている、CB250R+ターボ車のステージ3仕様。過給圧は1.3barで、最高出力は52ps‼ 増大したパワーに対応するため、ピストンとコンロッドは強化タイプに変更している。

いずれにしても、ピストンやカムシャフト、クランクシャフトなどを交換するメカチューンでは、今回の2台のようなフィーリングは絶対に実現できないはず。そういった事実を認識した僕は、バイクショップAndyの過給機チューニングに対して、リーズナブル……と言うより、安い?という印象を抱いたのだった。

ディティール解説

コクピットには空燃比計とブーストメーターを追加。ブースト計の針がプラス方向を指すのは4000rpm近辺からで、7000rpm前後で0.7barに到達。
コンプレッサー/タービンは軽自動車用がベースで、ユニットの冷却・潤滑にはエンジンオイルを使用。ラジエターはノーマルで、コスト抑制を念頭に置いて製作したため、インタークーラーは装備していない。エアフィルターはオイルを塗布しないステンメッシュタイプ。
2輪に適した軽くて小さな製品をいろいろと探した結果、ブローオフバルブは中国製の汎用品を選択。ただし内部のバイパスやパッキンに関しては、安藤さんが独自の改良を実施(Z250SL+スーパーチャージャー車も同様)。
男のロマン、スーパーチャージャー。250cc単気筒のZ250SLに装着&乗ってみた‼ | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

自然吸気では実現できない性能 今回と次回の2回に分けて展開する当記事では、バイクショップAndyが製作した、Z250SL+スーパーチャージャー装着車と、CBR250R+ターボチャージャー装着車を紹介する。もっとも2輪の世 […]

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