ターボとスーパーチャージャーの違い
当記事で紹介するのは、バイクショップAndyが製作した2台の250cc単気筒+過給機装着車、CBR250R+ターボチャージャー車とZ250SL+スーパーチャージャー車である。ちなみにターボチャージャーとスーパーチャージャーには一長一短と言うべきところがあるので、どちらが優位と一概には言えない。

具体的な話をするなら、ターボチャージャーには排気ガスのエネルギーを再利用してタービンを回せる、部品点数が少ないという美点があるのだが、タービンの回転数が低い状態ではスロットル操作に対する応答遅れ=ターボラグが生じやすい。一方のスーパーチャージャーは、低回転域から十分な過給効果が得られるものの、クランクシャフトから動力を取り出して過給機を動かすのでパワーの一部を損失、高回転域では構造的にターボほどの過給が得られない、という欠点が存在するのだ。

もっとも、少し前に掲載したZ250SL+スーパーチャージャー車のエンジン特性は素晴らしく良好で、僕はマイナス要素を微塵も感じなかった。ではCBR250R+ターボチャージャー車の乗り味はどうだったかと言うと……。
パワーバンドを維持するスポーツライディング
低回転域では過給効果が得づらいターボの素性に加えて、最高出力を40ps弱に設定(ノーマルは29ps)していることもあって、このバイクのエンジン特性はZ250SL+スーパーチャージャー装着車(最高出力は42.5ps)ほど、全回転域でガツン‼と来るわけではない。でも僕は2台の過給機装着車の魅力に、甲乙は付けられないと思った。

と言うのも、CBR250R+ターボチャージャー車は、パワーバンドが明確なのだ。4000rpm付近からノーマルを上回るトルクは感じるものの、7000rppm以上で加速の鋭さがとてつもない勢いで増す。それはまるで往年の2ストロークを思わせるフィーリングで、1986年型TZR250オーナーの僕としては、我が意を得たり‼という気分になってしまった。

そしてZ250SL+スーパーチャージャー車と同じく、このバイクも扱いづらさは皆無で、低中回転域を使ってのマッタリ走行もごく普通にこなせる(そういう意味では排気デバイスを導入した80年代中盤以降の2スト的)。とはいえ、往年の2ストロードスポーツに好感を抱いたライダーなら、峠道では7000~10000rpmののパワーバンドをキープする楽しさに酔いしれることになるだろう。
オヤジキラーとしての資質
ちょっと妙な表現になるけれど、バイクショップAndyが手がけた2台を試乗した僕は、250cc単気筒ロードスポーツ+過給機という組み合わせに対して、オヤジキラー……?という印象を抱いた。
以下にその理由を説明すると、まず最近の僕は50~60代のスポーツバイク好きから、ミドルクラス以上は体力的にツラくなってきた、家計を考えると車検付きは維持が厳しい、などという不満を聞く機会が少なくないのである。もっとも近年の250ccロードスポーツのツルシ状態が、彼らの需要を満たせるのかと言うと、それはなかなか難しいところだろう。でも250cc単気筒+過給機なら、グラッと来るオヤジが大勢いるんじゃないだろうか。

「私の狙いも正にソコです(笑)。今回の2台なら、車格はコンパクトだし、完成後の維持費は少額で済むし(整備に関するノーマルとの違いは、オイル交換とエアフィルターの清掃を1000km前後で行うことくらい)、特別感も手に入る。自分で言うのも何ですが、もう若くないスポーツバイク好きにとって、250cc単気筒ロードスポーツ+過給機は理想的な特性を備えていると思いますよ」

そう語る安藤さんが手がけた2台の過給機装着車は、万が一のトラブルにもしっかり配慮。独自に開発したサブコンや追加インジェクターなどを導入する一方で、ノーマルのECUとインジェクターはそのまま使用しているため、過給機関連部品に不具合が生じても走り続けることが可能なのだ。また、スーパーチャージャーの駆動ベルトは、わずか数分で交換可能な構造を採用している。

「乗り味だけではなく、整備性という面でも、ノーマルに対するマイナス要素を作らないことが、私のチューニングの大前提です。もちろん耐久性と燃費はノーマルのほうが優位ですが、過給機を装着したからと言って、その2点がガクンと落ちるわけではないですよ」

なお装備に違いはあるものの、当記事で紹介した2台は、いずれも強化クラッチスプリング以外はエンジン内部に手を入れないステージ1仕様で、部品代を含めての費用は60万円~。その数字をどう感じるかは人それぞれだが、ベース車を40万円以下で購入すれば、トータル費用は100万円前後で済むのだ(現代の250ccロードスポーツの最速車、CBR250RRの価格は90万2000円~)。

いずれにしても、ピストンやカムシャフト、クランクシャフトなどを交換するメカチューンでは、今回の2台のようなフィーリングは絶対に実現できないはず。そういった事実を認識した僕は、バイクショップAndyの過給機チューニングに対して、リーズナブル……と言うより、安い?という印象を抱いたのだった。
ディティール解説



男のロマン、スーパーチャージャー。250cc単気筒のZ250SLに装着&乗ってみた‼ | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム