UCF10セルシオより早く1UZ-FEを搭載!

敢えてのバネサス化で極低車高を実現!

初代の登場は1955年。今年でなんと70周年を迎えるのが16代にわたって歴史と伝統を守り続けてきたクラウンだ。いつの時代もトヨタを代表するパーソナル高級セダンとして君臨し、常に最新の技術やメカニズムが惜しみなく投入されてきた。そうして誕生した一台が、8代目後期型でラインアップされたUZS131クラウンロイヤルサルーンG V8だ。

エンジンは新開発4.0L・V8の1UZ-FE型。初代10系セルシオにも搭載されたけど、クラウンはそれより2ヵ月早い1989年8月に発売された。この事実が何を意味するか。それは当時、トヨタ車ヒエラルキーの中で、「クラウンはセルシオよりも格上」と認識されていたことに他ならない。

考えてみればそうだ。世界に打って出る新世代のフラッグシップセダンとはいえ、その時点ではまだ姿かたちが見えない新型車=セルシオより、高級セダンとしてすでに確固たる地位を築き上げていたクラウンの方が立場は上に決まってる。だからこそ、新型V8エンジンを初めて搭載する車種として相応しい。クラウンの開発陣を始め、そんな機運がトヨタ社内にもあったに違いない。

ボディは4ドアセダンとハードトップの2種類。ミッションはフロアもしくはコラム4速AT。グレードはロイヤルサルーンGのみで、インパネ中央部のCRTディスプレイに各種情報を表示する“エレクトロマルチビジョン装着車”も用意された。

取材車両は1991年式の最終型、ハードトップのベンコラ6人乗りでサンルーフ付きという超絶レアな一台。所有歴22年になるオーナーの野口さんによると、国内での実働車両は数台しか確認されてないほどの希少モデルだったりする。

「初めての130クラウンは親が新車で買った3.0L・ロイヤル。それに乗って2ヵ月でフルエアロ仕様にしました。でも、壊れまくったんで2台目としてV8を購入。その後、ベンコラサンルーフか革サンルーフを探してる時に出てきたのがコレだったんです。ハードトップV8のベンコラサンルーフなんて見たことなかったんで思わず飛びつきましたよ。うわっ、気持ち悪っ!! と思って(笑)」と野口さん。

そんなUZS131は各部に手が加えられているけど、一番の注目は足回り。究極の車高ダウンと乗り心地を両立するため、純正エアサスを外してバネサスに変更している。

「エアサスでガッツリ車高を落とすと乗り心地がめちゃくちゃ悪くなりますし、今後長く乗ることを考えるとパーツ供給にも不安があって。バネサスにしたのはそんな理由からです」。

しかし、作業は難航した。なぜなら、130系はモノコックボディでなくペリメーターフレームが使われ、そこで足回りが完結するから。つまり、天地方向の余裕がなく、それは特にアッパーアームとロワアームが接近するダブルウィッシュボーン式のフロントで顕著だった。セミトレ式のリヤも含めて全長を詰めた超ショートストロークダンパーが必要になるのだ。

そこで車高調を作り直すこと4回。スプリングはフロント80kg/mm(自由長100mm)、リヤ16kg/mm(同140mm)に落ち着いた。納得できる仕上がりになるまで10年近くを要したから、これはもう野口さんの執念勝ちと言うしかない。

また、タイヤとの干渉を避けるため、前後フェンダーをカット&溶接して嵩上げ。それでもシャシー剛性に全く影響は出ないのがフレーム車ならでは。同時に、スポット溶接箇所以外を削り落としてからツメ折りすることで強度も確保される。

ホイールは17インチのフォーカスディッシュ。元のサイズはフロント8Jプラスマイナス0、リヤ9Jプラス12だけど、リペアと同時にアメリカ製鍛造リムを使い9.5J、10.5Jにワイド化された。ピアスボルトもゴールドの鍛造品に交換。タイヤはフロント215/45、リヤ235/45サイズのニットーNT555が組み合わされる。フロントリップスポイラーはプロント製、サイドステップはジャンクションプロデュース製を加工装着。

ハードトップなのにベンコラゆえ、セダン・ロイヤルサルーン系に準じたフォーマルインパネ(Cタイプ)となるのが室内における最大の見どころ。同時にメーターもハードトップ・ロイヤルサルーン系では標準のデジタル式デュアルビジョンでなく、一般的なアナログ式が採用される。ステアリングホイールはウッド&レザーコンビのイタルボランテ製に交換。

先端にオーバードライブスイッチが設けられたATコラムレバー。ベンコラ仕様はセダンにしかないと思ってたけど、実はハードトップにも存在していたというのが衝撃的で、恥ずかしながら取材車両を見て初めて知った。にしても、ハードトップのベンコラは写真を見ているだけでも興奮する!!

左右別々に前後スライドやリクライニングができ、それぞれにセンターアームレストも備わるフロントベンチシート。表皮はアフター品で張り替えられる。また、シートバックには後席から操作可能なオーディオ&リヤエアコンスイッチ、シガーライター、助手席パワーシートのスイッチが用意される。

過去のデータを見てみると、年間新車販売台数で最高を記録したのが130系で1990年の24万台弱。世の中、バブル景気だったとはいえ、ひと月平均2万台は驚異的すぎる。歴代で最も売れた、そんなクラウンのトップグレードがUZS131。だからこそ、『キング・オブ・クラウン』だと思うのだ。

●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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1986年登場の2代目デボネアV。その中でも希少なLGに巡り合えた。FFフラッグシップの素顔を、あえて最廉価グレードで味わう贅沢なひととき。