注目の新型ルークス、気になるポイント&開発裏話をお届け!

4代目となる日産ルークスが発表された。日産自動車と三菱自動車工業の合弁会社であるNMKVのマネジメントのもと、日産が企画・開発を行なった軽自動車である。ホンダN-BOXやスズキ・スペーシア、ダイハツ・タントなどが属する、スーパーハイト系にカテゴライズされるモデルだ。

商品概要については別レポートを参照いただくとして、ここでは気になるポイントについて「どうしてそうなったのか」、裏話的なエピソードを中心にお伝えしていきたい。

日産・新型ルークス

サクラの成功体験を反映したインテリア設計

インテリアは「モノリス」と呼ぶ、バイザーレスの統合型インターフェースディスプレイを採用している。電気自動車(BEV)のサクラで採用したところ好評で、新型ルークスを企画するにあたって後押しとなったそう。先代ルークスはセンターディスプレイが9インチ、メーターディスプレイは4.2インチだったが、新型はセンターが12.3インチ、メーターが7インチとなり、軽ナンバーワンの画面サイズである。

インパネにファブリックを設定したのも、サクラでの好評を受けてのことだという。実は(ってこともないが)オーラもインパネにファブリックを配しており、質感の高さも含めて好評だという。好評の大型ディスプレイ、好評のファブリックを配したインパネと仕立ての良いインテリアはサクラを意識したものだ。

7インチディスプレイのフルデジタルメーターと12.3インチのインフォテイメント画面が一体化。

軽初の遮音ガラス採用、その背景にある社内決断

ユーザー調査によると、次期型サクラに対する改善要望点は冬場の航続距離のほかに、「スライドドアが欲しい」なのだそう。エンジン車でサクラ並みかそれ以上の質感と仕立てを備え、欲しいと望むスライドドアを備えているのが、新型ルークスというわけだ。エンジンを積んでいるのでモーターで走るBEVに比べて静粛性の面では不利になるが、そこはきちんと手を打っている。フロントに遮音ガラス(遮音膜入り合わせガラス)を採用したのだ。軽自動車初である。登録車でもノートには入っておらず、ノートよりプレミアムな位置づけのオーラに適用している技術で、社内的には大英断だったという。

フロントの遮音ガラスだけでなく、吸音材や遮音シートの採用範囲を広げたことで、高い静粛性を実現している。

2315mmの室内長は軽ナンバーワンを謳っているが、これにはカラクリがある。計測のポイントはメーターディスプレイからリヤシートバックまで。新型ルークスはディスプレイがモノリスになって前方に移動したので、そのぶん寸法が伸びたのが真相。Aピラーから後席ヒップポイントまでの距離は変わっていない。ヒップポイントの位置も先代と同様で、セグメントトップの高さ。背の低いドライバーは前に寄ってハンドルを抱えながら運転する行動特性が見られたので、その特性を考えると「ヒップポイントはなるべく上げておいたほうがいいだろう」との考えに基づく。

いっぽうで、「ハンドルが遠い」との声に応えるべく、ステアリングホイール位置は手前側に15mm引いた。そのまま引くと抱え込む格好になるので、少し寝かせる方向で調整し、ドライバーと正対するようにしている。アイポイントの高さも新型ルークスの特徴に挙げているが、これも先代と同じ。元々高く、新型になっても競合に対して優位に立っているとのことだ。

ヒップポイントは先代同様の高さ、ステアリングホイール位置は手前側に15mm引いている。

三菱とのせめぎ合いが生んだAピラーの角度

Aピラーは先代比で8度立てた。全体のスペース感や見た目の広々感を演出するためとの説明だが、ハードウェアを共有する三菱自動車側の要望と擦り合わせた末の着地点が8度となった模様。Aピラーを立てると空間効率面でメリットは生まれるが、空力面は不利になるので落とし所は難しい。それに車両のキャラクターにも影響する。三菱側はもっと立てたかったようだが……。

Aピラーを立てたことで、室内は広々とした印象となっている。

エアコン操作はタッチパネル式を継承しているが、デザインは一新。シフトセレクターはコンベンショナルなレバータイプだが、モックアップまで製作し、セレナや新型リーフのようなボタン式も検討したという。ボタン式のほうがどのポジションを選択しているかわかりやすいし、先進的なインテリアのデザインにもマッチするが、ボタンを見た瞬間に拒絶反応を示す人たちが一定数いることが調査からわかり、見送ったという。

シフトセレクターはコンベンショナルなレバータイプを採用、このほうが落ち着く?

利便性を追求した収納装備の数々

新型ルークスはミニバン並みの収納力を誇るが、筆者がとくに気に入ったのは、「インストセンタースライドボックス」と呼ぶ利便装備だ。500ml紙パックも置けるカップホルダーなのだが、手前側にスマホが立てられるようになっている。下部に穴が開いているので、センターコンソールのUSBポートを使って充電しながら立てておくこともできる。トレイに寝かせておくのはよくあるパターンだが、立てた状態で置いておけると、「通知が来た」ことくらいは信号待ちなどのタイミングで目視することができて何かと安心だ。

実はこの利便装備、もともとはカップホルダーだけのつもりで開発は進んでいたのだが、最後の最後の段階で、追加が決まったのだそう。スマホを置くスペースを追加するには、スライドボックスを閉めた状態で奥行きが確保できなければならない。三次元の図面データを確認し、「これならいける」となったんだそうな(実際は大もめだったそうだが)。

筆者おすすめの便利装備は「インストセンタースライドボックス」だ。スマホを立てたまま置けるし、下部の穴に充電ケーブルを通すこともできる。

メーターディスプレイの奥(フロントウインドウ側)にある「インスト運転席アッパーボックス」もこだわり装備のひとつ。ポケットティッシュだのサングラスだの、特定の用途は想定していないが、あると便利、というか、なくなったときに「どうしてなくしたの?」と不満が出るタイプの収納である。

セレナがそうだったという。先代セレナ(C27型)では奥に配したメーターの手前に大容量の収納を設けていた。現行(C28型)ではメーターがモノリスになったこともあってメーター側に収納を設置できなくなり、代わりに助手席側に大容量の収納を設けた。ところが、インパネになじむようにデザインしたために気づいてもらえていないという悩みもありつつ、運転席の目の前にあった収納がなくなったことにユーザーからお叱りを受けたという。

その反省もあり、新型ルークスではインスト運転席アッパーボックスを設けた。デザイン性を損なわず、「そこに収納がある」ことがわかるように。運転席ドア側から見ると、リッドが指かけ形状になっているのが分かる。初見で気づくだろうか(購入予定のある方、覚えておいてください)。

メーターディスプレイの奥側に設置された「インスト運転席アッパーボックス」も便利だ。

インフィニティ譲りの3Dビュー搭載、その課題とは

センターの大型ディスプレイには、上空のドローンが旋回しながら自車を撮影しているような3Dビュー映像を映し出すことができる。駐車位置から動き出す際に周囲の安全を確認するのに便利だ。スズキの軽自動車にも同様の機能がついており、システム起動と連動してディスプレイに表示され、便利である。ルークスの場合はメニューをタッチしないと3D映像は表示されない。先行して北米のインフィニティQX80に適用したシステムをそのままスライドさせてルークスに適用したため、手動操作による表示となっているそう。技術的にはシステム起動時に表示させることは可能で、「宿題にしたい」とのことだ。

しかし、北米で販売するインフィニティの上位モデルに投入した機能が、日産初として軽自動車のルークスに適用するあたり、日産車のヒエラルキーはどうなっちゃっているんだろう。前述したように、大型のディスプレイや遮音ガラスも適用しているし。見方を変えれば新型ルークス、相当に力の入った商品ということになる。

北米のインフィニティQX80にも採用されている3Dビューをルークスに導入している。

ボディカラーはなんと全17色。ハイウェイスターには、ベルトラインで上下を塗り分ける日産初のツートンカラーが3色。ルーフを塗り分ける従来のツートンカラーが3色。モノトーンが7色だ。スタンダードはモノトーンのみの設定で7色である。コミュニケーションカラーはソルベブルー。シナモンやカシスなど、食べ物の名前をカラー名称に取り入れているのが特徴だ。

「色のバリエーション多くない?」と思ったが軽自動車の場合、「欲しい色がないから買わない」と見送るケースが結構あるのだそう。メーカー側にすればなんとももったいない話なので、バリエーションを豊富にそろえたというわけだ。色はとっても大事なのである。