アウトドアテイスト溢れるタフギア系スーパーハイトワゴン

2017年12月に発売した2代目スペーシアに、2018年12月に追加モデルの形で発売されたのがスペーシアギアだった。自動車市場のSUVやクロスオーバーの流行を受けて、軽自動車のメインストリームである軽スーパーハイトワゴンにアウトドアテイストをクロスオーバーさせ一躍大人気となった。

その流れを受け、2023年に三菱はeKクロススペース(2020年発売)をモデルチェンジしてデリカミニを発売。旧来のデリカD:5のイメージとダイナミックシールドを組み合わせて、よりタフギアイメージを強めたデザインとした。さらに、三菱らしい4WDの走破性をアピールすることで先行モデルとの差別化に成功。加えて、イメージキャラクターの「デリ丸」が人気に拍車を掛け、他にはない存在感を示していた。

新型デリカミニ

そして2025年、早くもフルモデルチェンジされ2代目へと進化。特徴である半円形のライトが大きくなったものの、基本的には人気の先代モデルからキープコンセプトな印象だ。

新型デリカミニ

一方、スペーシアギアはスペーシアとしては3代目、スペーシアギアとしては2代目が現行モデル。初代(スペーシアとしては2代目)同様、スペーシアが2023年11月に発売されてから1年後の2024年9月に発売されている。

スペーシアギア

スペーシアギアのみの数字は不明だが、スペーシア全体では2024年度の販売台数が16万8491台で軽四輪車通称名別新車販売台数(※)ではN-BOX(21万768台)に次ぐ2位となる人気ぶりだ。
※全国軽自動車協会連合会データ

スペーシアギア

タフギア系スーパーハイトワゴン市場は、嚆矢のスペーシア・ギア、三菱の4WDを推すデリカミニ、ミラクルオープンドアのダイハツ・タントファンクロスの三つ巴となっている。ここでは、新型デリカミニと丸目系デザインでも共通点があるスペーシアギアを比較してみようと思う。

エクステリア

デリカミニはその特徴であった半円形のヘッドライトが先代モデルより大きくなり、グリルも太くフラットになった。とはいえ、グリルのデザインはデリカミニが旧来のデリカD:5、スペーシアギアがジムニーの4スロットグリルを模している点は共通している。

ヘッドライトにせよフォグランプにせよ、スペーシアギアが丸型であるのに対し、デリカミニはフォグランプが四角になり、よりスクエアな印象だ。さらに、バンパーもカラードエリアが広く、よりスクエアでタフな印象を受ける。フロントアンダースポイラーのアンダーガード風デザインは両車共通で、SUVの定番と言える。

新型デリカミニ(左)/スペーシアギア(右)

デリカミニは「デリカ」ファミリーであることがセールスポイントでもあるため、リヤゲートの車名は先代以上に大きくなり凹型となっているのが目立つ。リヤゲートハンドルをこのボディ同色ガーニッシュと一体化している点はスペーシアギアとは大きく異なる点だ。

また、リヤコンビネーションランプが縦長なのは共通だが、一体化しているスペーシアに対し、デリカミニは独立したスクエアなランプになっており、先代ともスペーシアとも異なるオリジナリティのあるデザインだ。
また、ウインドウ上端に小さなスポイラーがあり、スポーティさも兼ね備え一方で、リヤバンパーのシルバーガーニッシュはよりタフな印象になっている。

新型デリカミニ(左)/スペーシアギア(右)

軽自動車規格に縛られるため、サイズやフォルムはほとんど変わらない。しかし、プレスラインやサイドガーニッシュは両車ともかなり異なっている。特に先代から引き継がれたクラッディング風ホイールアーチ塗装は、デリカミニに本格オフローダー風のイメージを与えているほか、リヤスライドドアのレールを上手いこと隠すことに成功している。

新型デリカミニ(上)/スペーシアギア(下)

デリカミニの異形5本スポークホイールはデザインも非常に凝っている。反面、スペーシアギアのホイールはスズキらしいシンプルでクリーンなデザインだ。いずれもブラック系のカラーだが、このデザインの違いは好みが大きく分かれそうだ。

新型デリカミニ
スペーシアギア

なお、取材車両ではデリカミニが165/60R15サイズ、スペーシアギアが165/65R14サイズの、いずれもダンロップ・エナセーブを装着していた。

インテリア

デリカミニのインテリアはグレーとベージュのツートーンになっており、ダークグレー基調のスペーシアギアよりも明るい印象だ。何より、7インチ液晶メーターと12.3インチのセンターディスプレイが一体化したモノリスディスプレイは、後発ならではの先進感に溢れている。水平2本スポークのステアリングも空間的は広さを感じさせるようだ。

新型デリカミニ

スペーシアギアは独立したメータークラスターに4.2インチTFT液晶を採用したスピードメーターやセンターコンソールの9インチディスプレイがスズキ的なコンサバティブレイアウトでとてもわかりやすい。センターディスプレイのレイアウトは横長の12.3インチか、通常の9インチか、好みが別れそうだ。

スペーシアギア
新型デリカミニ
スペーシアギア

12.3インチディスプレイを採用したデリカミニのインフォテインメントシステムはGoogleを搭載。スペーシアギアはスマートフォン連携メモリーナビゲーションを用意している。

新型デリカミニ
スペーシアギア

インターフェースの大きな違いはデリカミニはエアコンまわりがタッチパネルになっている点。グロスブラックのコンソールパネルと合わせて、軽自動車とは思えない上質感が魅力となっている。
一方で、スペーシアのインターフェースはマットグレーの物理スイッチとなっており、ブラインドタッチなど操作感に優れる。
また、デリカミニは不整地走行などに対応する三菱4WD車的なダイヤル式のドライブセレクターが目立っている。

新型デリカミニ
スペーシアギア

助手席側にオープントレイが用意されるのは両車共通。デリカミニには開放式のドリンクホルダーが一体化されているが、スペーシアギアではオープントレイの左下に引き出し式で格納されている。デリカミニはトレイに車名が刻印されており、「デリカ」ブランドをアピールする。

新型デリカミニ
スペーシアギア

シートとラゲッジルーム

デリカミニのシートはグレーとベージュのツートーンカラーで、座面と背もたれが格子デザインになっているのが特徴だ。さらに助手席シートには後席から助手席シートを操作できるレバーを設け、シートアレンジのやりやすさを高めているようだ。

新型デリカミニ(フロントシート)
新型デリカミニ(リヤシート)

シートアレンジパターンとして、運転席からリヤシートまでフラットにすることができるので、車中泊などにも便利そうだ。

新型デリカミニ(シートアレンジ)

スペーシアギアはアウトドアユースに便利な撥水加工シートや、助手席背もたれを前倒しにしてラゲッジルームから助手席までのひと続きとなる長尺物収納が可能となるほか、助手席下のアンダートレイボックスやリヤシートのマルチユースフラップなど、きめ細かい機能がありがたい。

スペーシアギア(フロントシート)
スペーシアギア(リヤシート)
スペーシアギア(マルチユースフラップ)
スペーシアギア(マルチユースフラップ)

ラゲッジルームはいずれも軽スーパーハイトワゴンの定番、スートスライドでのスペース拡大やリヤシートを格納してのフルフラット化が可能。タフギア系だけあって、シートバックやフロアは汚れにくく掃除しやすい防汚タイプになっているのも共通だ。

新型デリカミニ(通常時)
新型デリカミニ(後席格納時)

具体的な数値はまだ公表されていないが、取材や写真の印象ではデリカミニの方がラゲッジルームの開口の絞り込みも少なく広いように感じる。

スペーシアギア(通常時)
スペーシアギア(後席格納時)

なお、フロントシート背もたれに装備されているトレイは、デリカミニが丸型ドリンクホルダー2個、スペーシアギアがパック飲料も入る角形ドリンクホルダー1個とスマートフォン/タブレットスタンドと異なっている。スマートフォンにちょうど良い小分けされた上部シートバックポケットはどちらも備えている。

価格とグレード

新型デリカミニのエンジンルーム。
スペーシアのエンジンルーム(写真は「HYBRID XZ TURBO」)。

デリカミニは予約が始まってはいるが、オフィシャルサイトなどで具体的な価格は公表されていない。グレード的にはNAエンジンの「G」とターボエンジンの「T」をベースに、それぞれ装備を充実させた「G premium」「T premium」を設定。さらに、G premium」「T premium」には「DELIMARU Package」が用意される。また、全グレードでFFと4WDが選択可能。価格は195万円〜295万円と、先代モデルから上級以降していることを踏まえても、昨今の物価高、自動車価格の高騰を感じさせる設定だ。。

新型デリカミニ価格帯(画像:MITSUBISHI)

スペーシアギアのグレード構成は極めてシンプルでNAエンジンの「HYBRID XZ」とターボエンジンの「HYBRID XZ TURBO」の2グレードで、それぞれFFと4WDが用意される。価格は195万2500円〜215万7100円と、下限はほぼ同じだが最上位では大きな差がある。

デリカミニ価格(推定)スペーシアギア税込価格
G(FF)195万円HYBRID XZ(FF)195万2500円
T(FF)204万円HYBRID XZ TURBO(FF)203万7200円
G(4WD)219万円HYBRID XZ(4WD)207万2400円
T(4WD)229万円HYBRID XZ TURBO(4WD)215万7100円
G Premium(FF)211万円
T Premium(FF)221万円
G Premium(4WD)229万円
T Premium(4WD)239万円
G Premium DELIMARU Package(FF)264万円
T Premium DELIMARU Package(FF)274万円
G Premium DELIMARU Package(4WD)281万円
T Premium DELIMARU Package(4WD)295万円
価格比較(デリカミニは推定)

ボディカラーはデリカミニがツートーン6色、モノトーン9色と豊富に設定。スペーシアギアもツートーンは6色だが、モノトーンは3色とツートーン推しの設定だ。ただし、デリカミニのツートーンカラーが寒色系寄りなのに対し、スペーシアギアはイエローやレッドのツートーンが選べるのが違いだ。

デリカミニのボディカラー一覧(画像:MITSUBISHI)
スペーシアのボディカラー一覧(画像:SUZUKI)

総じて新型デリカミニのプレミアム感とスペーシアギアのリーズナブルさが際立つ展開になっているように思われる。今後、オフィシャルサイトで伝えられる「秋デビュー」をもって正式な価格やスペックが発表されるだろう。軽自動車規格なので、サイズやスペック面では大きな差は無いだろうが、今回よりも詳細に比較できるようになるに違いない。